■世界最大級の渦潮が有名な四国の玄関口「徳島県鳴門市」では、家庭菜園・アルバイト・兼業等、形態や規模を問わず農業を生活に取り入れながら、農業以外の仕事・ライフワーク・得意なことといった、自身のライフスタイルに合わせたX(=天職)で世の中に貢献する新しい生活様式「半農半X(はんのうはんえっくす)」を応援しています。
■令和7年度半農半X推進シェアハウス事業 第3弾の青首だいこん編では、(株)JA里浦ファームと(株)おてつたびと鳴門市とで連携し、参加者のみなさんにシェアハウスで交流していただきながら、午前は特産品の「青首だいこん」の農作業、午後からはフリータイムの鳴門暮らしを約2週間体験していただきました!
■今回は、「半農半X推進シェアハウス事業」を通じて出会った奥野さんとIさん(※)の、農作業を通じて結んだ「縁」に関する物語をお伝えします!※ご本人の希望により、名前は伏せてイニシャル表記を使用しています。
夏の出会い、冬の再会
冬の柔らかな日差しが、部屋の空気を暖めている。
鳴門市が誇る青首だいこん「里むすめ」の収穫を終えた、穏やかな午後。

青首だいこん「里むすめ」の収穫風景
石川県から来た奥野さんと、地元の農家・Iさんが、日だまりのような温かさの中、ゆったりと言葉を交わしていた。
二人の出会いは、令和7年の夏。
鳴門市が実施する「半農半X推進シェアハウス事業~なると金時編~」への参加がきっかけだった。
農業を通じて、人と人が繋がる。
その小さな出会いの新しい物語。
「今年の夏も、Iさんのところで働きたいんです」。
そう言ったのは奥野 直幸(おくの なおゆき)さん。
令和8年1月20日~2月3日まで開催された「半農半X推進シェアハウス事業~青首だいこん編~」の参加者だ。

奥野 直幸(おくの なおゆき)さん
奥野さんの言葉は、実直で迷いがなかった。
彼はこれまで5回、この鳴門の地で農作業を体験してきた。
特に、Iさんと出会った「なると金時」の収穫は、彼にとって特別な経験となったようだ。
「僕も、奥野さんが来てくれて本当に感謝してるんです」。
一方、受け入れ農家のIさんも、その出会いを心から喜んでいた。
「農作業の繁忙期は人手が足りず、求人を出しても、なかなか良い出会いがなくて…」。
Iさんの言葉には、過去の苦労が滲む。
「奥野さんは年齢も近く、一緒にいてとても楽しく作業ができたんです。
本当にいい人を紹介してくれたなって、ありがたく思っています」。
「君が来てくれて、本当に助かった」
農業を営む上で、農機具の存在は欠かせない。
だが、農機具の扱いは、一歩間違えれば大怪我に繋がる。
「奥野さんは、機械を扱っていた経験があるから、何が危ないかを分かってくれていた。
その安心感は、本当に大きかったんです」。
Iさんの真っ直ぐな評価に、奥野さんは少し照れたように微笑む。
「そう言ってもらえて、とても嬉しいです」と、静かに応えた。
雇用主と労働者という関係を超え、互いへの信頼と尊敬がそこにはあった。

落ち着いた空間の中、穏やかな雰囲気に会話が弾む
夏のなると金時畑で、汗を流しながら育まれた絆。
それは、冬の再会を経て、さらに確かなものへと変わっていた。
Iさんは、今年の繁忙期もぜひ奥野さんに来てほしいと願っている。
そして奥野さんもまた、夏の鳴門でIさんと共に働くことを強く望んでいた。
乗り越えるべき壁と、二人が描く未来
しかし、二人の思いの前には、現実的な課題が横たわっていた。
「長期の滞在となると、どうしても『住む場所』の問題が出てきてしまって…」と奥野さんが切り出す。
2週間のシェアハウス事業とは違い、数ヶ月単位となると滞在先の確保は容易ではない。
Iさんも「うちの家に泊まってもらうことも考えたけど、お互いのプライベートを考えると、ね…」と、もどかしそうに言葉を続ける。
どうすれば、この課題を乗り越えられるだろうか。
沈黙が流れたその時、Iさんがふと顔を上げた。
「そういえば、僕も以前マンスリーアパートを使ったことがあるけど、あれは快適だよ。家具も家電も付いてるし」。

※画像はイメージです
さらに、彼は力強い提案を重ねた。
「もし奥野さんが本気で今年の夏も来てくれるなら、少し時給を上げてもいい。
それで少しでも家賃の足しにしてもらえたら…」。
その言葉に、奥野さんの表情がほんのりと柔らかくなる。
「ありがとうございます。
なんだったら、Iさんのお庭にテントを張らせてもらってもいいですよ(笑)」。
冗談交じりの言葉に、二人の間に和やかな笑いが広がった。
それは、単なる移住の相談ではない。
人と人が繋がり、互いを思いやりながら、未来を共に作ろうとする温かい時間だった。

※画像はイメージです
未来を紡ぐ、確かな一歩
移住や二拠点生活は、人生の大きな決断だ。
しかし、それは一人で成し遂げるものではないのかもしれない。
地域の人の温かさに触れ、信頼できる誰かと出会うこと。
そんな確かな一歩の積み重ねが、やがて「暮らし」という名の道を作っていく。
奥野さんとIさんの挑戦は、この鳴門の地で、また新しい可能性の芽吹きを感じさせてくれた。
過去の奥野さんの記事はこちら
