【移住者インタビュー】富良野で叶える、陶芸とカフェの理想の暮らし

北海道の中心、美しい景色が広がる富良野市。
ここで22年以上にわたり、ご夫婦で陶芸工房と古民家カフェを営む大槻さんにお話を伺いました。

サラリーマン生活を経て陶芸の道へ進み、自分たちの手で空き家を改修して店舗を作り上げた大槻 恭敬(おおつき やすたか)さん。
移住のきっかけや夫婦経営のコツ、カフェを通して生まれるドラマのような日常、そして移住や起業を考えている方へのリアルなメッセージを届けていただきました!

プロフィール

  出身地:北海道(古平町生まれ、十勝・池田町育ち)
  経 歴:札幌での会社員生活を経て、美瑛町で4年半の陶芸修行ののち富良野市へ移住
現在の活動:富良野市にて陶芸工房とカフェを夫婦で経営。農業の手伝いなども行いながら地域と深く関わる。

導かれるように見つけた富良野の「空き家」

ーー富良野に移住したきっかけや感じた魅力、現在の物件との出会いを教えてください。

美瑛町で陶芸家(コーミエー・クレイトンポール氏)のアシスタントとして4年半過ごす中で、休日に周辺を巡るうちに富良野エリアの魅力に気づき、「独立するならこの近くで」と考え始めました

富良野は全国的な知名度があり、毎年のように訪れてくれるファンも多いまちです。ここで工房やお店を営む上でも、その知名度やまちの求心力にはとても助けられています。
また、豊かな自然に囲まれながらも日常生活に必要な買い物や設備が揃っていて、とても暮らしやすいバランスの良さも魅力的でした。

そこで「このまちで独立しよう」と休みの日に物件を探して回っていたある日、車で通りかかった時に印象的な屋根の建物が目に入ったんです。当時は誰も住んでおらず、窓も割れているような状態でしたが、「手を入れたら面白くなりそうだな」と直感しました

当時は地図を持ち歩き、近所の方に話を聞きながら建物の持ち主を探すような手探りの捜索でしたね。無事にご縁がつながった後は、大工さん1人と妻、私の3人で1年ほどかけてDIYで改修しました。自分たちで手を掛けたからこそ、多少の粗があっても許せる、愛着のある空間になりました

冬の寒さとどう付き合う?富良野暮らしのリアリティ

ーー実際に住んでみて、富良野の暮らしで苦労された点はありますか?

とにかく冬の寒さですね。富良野は道内でも特に寒い地域ですし、我が家は元々の土壁や広い窓もあって、どれだけ部屋を温めても寒さが逃げていってしまうんです。最初は「冬だけ南の方に行きたいな」と思ったこともありました(笑)

ただ、他のまちへ移住したいと思ったことはなくて、工夫しながら付き合っています。我が家では冬場は店舗をお休みし、自分たちの生活スペースだけを完全に区切って断熱する、という割り切った方法で乗り切っています

また、地域特有の気配りとして、農家さんとの兼ね合いもあります。空き家があっても、周りの畑の農作業の邪魔にならないか、車両の出入りや音は大丈夫かなど、地域住民同士の相互配慮が必要な面もありますね

「陶芸」と「カフェ」、お互いを尊重する夫婦のスタイル

ーー陶芸とカフェを組み合わせて始めた経緯は?

私がやりたかった「陶芸」と、妻がやりたかった「料理を出すお店」。2人の希望を組み合わせたのが始まりでした
当時は「一番食えなさそうな組み合わせ」ということには気づいていなかったのですが(笑)

でも、出来上がった器をカフェで使い、お客さんに「これ良いね」と感じてもらえるなど、とても良い関係性が生まれました
また、ギャラリーだけだと敷居が高く感じられがちですが、カフェがあることでふらっと作品を見ていただけるというメリットもあります

「大正のルーカレー」。足つきの器は店内での購入も可能です。

ーー夫婦でお店を長く続けていく秘訣はありますか?

お互いに「自分の空間」を持つことですね。私は工房、妻はカフェと、別々のエリアで作業しています。ずっと顔を突き合わせているわけではない距離感が心地いいのかもしれません。カフェの運営に関しても、求められれば意見を言いますが、私から口出しすることは基本ありません。それぞれが自分の領域に責任を持つことが大切だと感じています

陶芸教室、陶芸体験のお客様の作品

毎日がドラマの1ページ。肩書を脱ぎ捨てて集う場所

ーーカフェを営んでいて、特に魅力を感じる瞬間はどんな時ですか?

妻とよく「カフェをやっていると、1日1日がまるでひとつのドラマ(映画)みたいだね」と話すんです。「今日の主人公は誰だろう」とワクワクするような出来事や、ちょっと個性的な新しい登場人物との出会いがあって、本当に飽きないんですよね。

お店では、お客さんの仕事や立場、年齢は関係ありません。あえて詳しい職業などを聞かずに接することも多いのですが、肩書を気にせずフラットに過ごせる空間になれたらと思っています。

最初から理想のお店を狙って作ったというよりは、来てくださる常連さんや旅人といったお客さん自身が、お店のあたたかいカラーや空気感を作ってくれたのだと実感しています。

「作れない」とは言いたくないーー自由な発想で楽しむ陶芸

ーー陶芸体験ではどのようなことを大切にされていますか?

あえて「決まった見本」を置かないようにしています。陶芸体験というと「カップやお皿を作る」と思われがちですが、スマホスタンドを作ってもいいし、ペットのフィギュアや赤ちゃんの足形を残してもいい。

私の師匠がとても自由で面白い作品を作る方で、私自身も「こんなの作りたいけれど作れない」と思われるのが嫌なんです。「できますよ、一緒にやってみましょう!」と言いたい。子どもから年配の方まで、自分の自由な発想で「世界にひとつだけのもの」を作る楽しさを味わってほしいですね。

陶芸教室、陶芸体験のお客様の作品

人が自然と引き寄せられるコミュニティづくり

ーーお店にはバイク(カブ)好きの方や、ヘルパーさんも多く集まると伺いました。

妻が乗り始めたのをきっかけに私もハマった「スーパーカブ」ですが、SNSや口コミを通して全国からカブ乗りが集まるようになりました。カブ仲間はマウントを取り合うこともなく、100均のパーツで工夫したカスタムを見せ合うような、穏やかな繋がりができるのが魅力です。

また、以前募集していた「1週間ヘルパー」も、お互いにとって無理のない絶妙な期間で、約100人近くの方が来てくれました。中にはそのまま富良野に移住してくれた方もいます。意図して仕掛けたというより、好きなことを楽しむ中で自然と人が集まり、縁が広がっていった感覚です。

移住・起業を考えている方へのメッセージ

ーーこれから地域での暮らしや起業を目指す方へ、アドバイスをお願いします。

「なぜやりたいのか」の目的を深堀りする

「カフェを開くこと」自体を目的にしてしまうと、オープンした後にモチベーションが下がってしまいます。「なぜその場所で店をやりたいのか」「地域にどんな場所が必要か」という長い視点を持つことが大切です

複数の軸を持ち、柔軟に生きる

ひとつの事業だけで食べていくことに固執せず、アルバイトや地域の農家さんのお手伝いなど、複数の収入源や関わりを持つこともおすすめです。新しい人間関係が生まれ、それが本業のお客さんとして戻ってくるなど、良い循環が生まれます

やりたいことを諦めない

「好きなことは仕事にしない方がいい」と言う人もいますが、私は挑戦して良かったと思っています。好きなことなら時間も労力も惜しみなく注げます。無理のない続け方を考え抜いていけば、きっと形にできるはずです

■店舗情報

店名:野良窯 カフェノラ
所在地:北海道富良野市下五区
(JR富良野駅より1500メートル、五条大橋を渡ってすぐ道路沿い右側)
内容: 陶芸体験・ギャラリー / カフェ・パン・雑貨販売
定休日: 水・木曜日(※時期や祝日により変動あり)

※営業日時や陶芸体験の予約(クラス・定員等)については時期により異なる場合があります。お出かけの際は、事前に公式HPやSNS等で最新情報をご確認いただくのがおすすめです!

編集後記

富良野の自然の中で、自分たちの「好き」と「暮らし」を心地よいバランスで形にしている大槻さんご夫婦
型にはまらず、訪れる人との一期一会のドラマを心から楽しむ姿勢こそが、長年愛され続けるお店の最大の魅力なのだと感じました。
富良野を訪れた際は、ぜひその温かい空気を体感しに足を運んでみてください!

 

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