全国各地でまちづくりの施策のひとつとして移住促進に力が入れられています。それぞれの地域が試行錯誤する中で、様々な切り口による発信を行っている中、移住に関する情報をワンストップで提供するとくしま移住交流促進センター。そこが運営する移住交流のポータルサイト「住んでみんで徳島で!」です。

徳島県ではこのサイト名と同じ「住んでみんで徳島で!」をキャッチフレーズに、仕事、住まい、ライフスタイルなど徳島暮らしに関する情報を発信しながら、移住ツアーや、移住相談会を都市圏で開催。徳島県への注目度を高めています。

地域において「空き家」は、全国的に大きな課題になっており、総務省が行なった「平成25年住宅・土地統計調査」によると、空き家の数は全国で820万戸、5年前に比べ63万戸増加しています。これは日本の住宅のうち、8軒に1軒が空き家といえる状況で、その解決が望まれています。

「住んでみんで徳島で!」の活動において、移住サポートと空き家活用がどのように実践されているのかを、徳島県移住コンシェルジュの飛田久美子さんにお伺いしました。

空き家活用と移住をセットで考える

▲空き家のビフォー・アフターの様子(矢印を左右に動かしてみてください。)

—「住んでみんで徳島で!」 の活動で、空き家活用はどのように行われているのでしょうか。

飛田:地方にはアパートやマンションといった賃貸物件が少なく、賃貸自体のない地域もあるため、移住者の住まい=「空き家」となるのが一般的です。そのためDIY賃貸といって、借りる人がお金を出して改装し、家を出ることになっても元に戻さなくてもいいという条件で、リフォームするのが主流です。こうした活用はIターンやUターンといった移住者から始まり、現在は地元の人も空き家活用に目が向き始めています。

徳島への移住の特徴は「自分でつくる」

—移住者の方が利用されることが多いとのことですが、どのような人たちが利用しているのですか?

飛田:「地方に移住すると仕事がない」というのはよく言われることですが、徳島でも例外ではなく、多くが「自分で仕事をつくる」という意識をもって移住する人が多いように思います。

四国にはお遍路文化が根付いていて、最近では外国人お遍路さんやインバウンド観光の増加もあって、民泊や飲食店を中心に、人の寄り場となるような活用も増えています。

もともと首都圏の飲食店で働いていた人が移住して開業することも多いです。徳島県独自の起業創業の補助金やふるさと納税を活用した支援制度もあり、割合でいえばIターンの起業が目立つように思います。

—徳島といえば、神山町が有名です。あそこもIターンが多いと聞きます。

飛田:そうですね。徳島はIT系のインフラ環境が整備されているので、ITとは相性が良いんです。神山町は町の情報発信もうまくいっていますね。ちなみに、神山は人気すぎて一時、空き家がないということもあり、空き家を探す方も驚かれます。空き家の状況はその時々で変わるので、できれば2~3年かけて探すのがおすすめです。

「阿波おどり」の他に徳島を知ってもらうには?

地域でのイベントの様子

—「住んでみんで徳島で!」 の活動を続ける中で、手応えはいかがでしょうか。

飛田:私が都市部で開催されるような移住フェアに行きだしたのは5年くらい前。当時は一人でも多くの移住者を獲得しようとPR合戦が激しく、特産品を配る自治体もあって、どこも必死だったように思います。そうした中、徳島県は出展する自治体も少なく、四国四県の中でも知名度が低いので、まったく目立ちませんでした。そうした競争は終息してきましたが、今でも徳島に移住したいと声をかけてこられる人は、親戚が住んでいるとか、祖父母が住んでいたなど、なにか縁があって移住するというケースが多いです。

ただ、個人的にはこのマイナーさも強みと思っていて、「徳島といえば阿波おどり」くらいのイメージしかない人が、生活の拠点という視点で見たときに、「徳島って意外といいかも!」と思ってもらえる出会いがあれば、強く印象づけられると思っています。

自然豊かで食べ物が美味しい、人が優しく子育てしやすいと、日本全国どこでも同じようにPRしていますが、徳島にも同じことが言えるので、まずは他県と同じ土俵に立ち、そうした中でも温暖で暮らしやすいといった特徴を、じわじわ浸透させていくことで、移住者だけでなく受け入れる側にも準備をしてもらって、無理のないマッチングにつなげていきたいと思っています。

—具体的に、どのようなPRをしていこうなどの方針はあるのですか。

飛田:移住関連のイベント情報も発信し、具体的な話が聞ける機会のPRや、全国的に見ても珍しい活動、オモシロい暮らしをしている人をとりあげて、地域チャンネルを通じて発信していきたいと思っています。

空き家という資源を活用するまちづくり

飛田:そのひとつの切り口として空き家活用に焦点をあて、古民家カフェやゲストハウスをやっている人を中心に紹介していこうと考えています。空き家が多いということではリノベできるチャンスも多いということ。関西圏の人なら週末だけ徳島に来てDIYで家を整え、将来的に移住するといったことも夢じゃありません!そういう生活を希望する人に「徳島」が候補地になるといいな、と思います。

▲丁寧にリノベーションされている様子がわかる (矢印を左右に動かしてみてください)

そして少しずつですが、地域の人たちが空き家を活用するという事例も出てきました。実家の片付けや処分は当事者にとってはなんだか気が重い問題ですが、孫世代が価値を見いだし、今風に改装して一軒家でのびのび子育てしたり、ライフスタイルの変化によって自分に合った家に住みたいという人に、空き家が資源として認識されるようになってきたと思います。

人口減少が急速に進む中で、それを補うほどのスピードで移住者を紹介することはできませんが、個別に相談にのっていきながら、徳島の魅力を発信して、移住や二拠点などの選択肢に徳島を入れていただけるようになればと考えています。