誰もが“不安”を抱いて始まった10年

新しい10年の区切りを迎えるにあたって、これほど多くの人が、ぼんやりとですが一律に“不安”を抱いているのは、かつてないことかもしれません。しかも“不安”と言っても、「良くないことが起こりそうだ」という明確な恐怖というよりは、「いったい、この先どうなるんだろう?」という「先が見えない不安」なので、余計に厄介です。
思えば10年前の2010年は、リーマンショック後で大変だったとはいえ、ある意味“想定の範囲の不安感”ではありました。しかしその直後に起こった東日本大震災から先、想像だにしない変化に巻き込まれて、今にいたります。そのさらに10年前の2000年は、世紀末の終焉というSF的な不安感を乗り越え、むしろ新世紀の幕開けを希望を持って迎えた記憶が強く残っています。

そういう意味でも、今回の新しい10年は特殊かもしれません。

AIや遺伝子操作といったかつてない技術革新も、その一つの要因でしょうし、同時に社会的な価値観や仕組みも大きく変化し、人生100年時代に最後まで生活が維持できるのかという切実な課題にも直面しています。さらには大規模な気候変動なども起こり、いわば“グランドクロス”的な変化の重複が、社会全体に重くのしかかっています。正直、誰にもどうなるかわからないし、計画やスケジュールを立てるなんて毛頭無理。もう考えても仕方がないと開き直るしかないくらいです。
とはいえ、今を生きている我々は、そんな中でもなんとかうまくやっていくしかありません。
その入り口となる2020年の年初にいる私達が、少しでもより良い人生への糸口を掴めるアクションはないものでしょうか?自分に言い聞かせながらも、思いつくままに上げてみました。

①地図を手に入れる

前述の通り、大きな変化が重なるのは確かですが、冷静に見渡すと、その実態がすでにかなり多く語られてきているのも事実です。
まずは大局観を持って、その変化の姿をもう一度しっかりと把握することが不可欠でしょう。未知のジャングルに入るには、やはり地図とコンパスが必須です。
それらはインターネットのあちこちから拾い集めるよりも、様々な知識人やオピニオンリーダーたちの意見がまとまった書籍が最も頼りになりそうです。
一つの例として、昨年の終わりに出版された、落合陽一さんの「2030年の世界地図帳〜あたらしい経済とSDGs、未来への展望」は、非常に読み応えがありました。

(Amazonへリンク↗)

とにかく、落合さんの知見の広さには驚愕です。しかもその分析も緻密で、同時に図式も多くて分かりやすく説明されている良著です。それ以上に特筆すべき点は、安易な悲観論に走っていないことです。やはり若さがその原動力なのでしょうか。カオスをひとつづつ丁寧に紐解き、投げ出すことなく丁寧に探る姿勢には、非常に強い共感と心地よさを感じました。
2030年に向けて、世界を俯瞰した分かりやすくも緻密な地図を与えてくれます。
この人、やはり只者ではないようです。

②自分の武器を探る

このカオスの中で生き残るためには、やはり“自分自身の武器”が欲しいですね。魔法の杖は望めませんが、なんとか自分の強みを見極め、出来るだけ研ぎ澄ましておきたいものです。
そんな我々に、まさにその言葉通りの助けになる名著があります。
それは、瀧本哲史さんの「僕は君たちに武器を配りたい」(エッセンシャル版)です。

(Amazonへリンク↗)

瀧本さんは、マッキンゼーのコンサルタントから、起業家、投資家、京大の客員教授と、その溢れんばかりの才能を発揮していた矢先に、47歳という若さで惜しくも急逝された“伝説の人物”です。この渾身の著書では、これからの社会を生き抜くには「スペシャリティ」を体得する必要があり、その方向性は、マーケター/イノベーター/リーダー/投資家の4つしかないと喝破しています。野心に溢れながらもシンプルで力強い瀧本さんの言葉は、なんとか自分ならではの武器を探り、研ぎ澄すまそうという勇気を与えてくれます。常にカバンに潜ませておきたい人には、文庫本サイズの“エッセンシャル版”がおすすめです。

③情報の入手ルートを変える

テレビや新聞、雑誌などは、すでに新しい時代への不安や悲観で溢れています。
今まで時代を見据えてきた多くの論者たちも、その方向性を見いだせていないようです。そもそもこうした既存メディアは、「不安や悲観」を語るほうが“売れる”もの。
もちろん全部そうだとはいいませんが、あまりあてにはなりません。やはり(前述のような)書籍には、頼れるものがあります。
それ以外で少し極端ですが、YouTUBEは他とは違う気がします。
もちろん他のネット情報と同じく、玉石混交度合いは半端ないのですが、個人が自由に発信できるという意味では、書籍に近いものがあります。
しかも、従来のブログなどよりも波及効果が高く、収益にもなるので、自力のある個人はもちろん、各方面からの個性溢れる実力者がなだれ込んでいるのも、急速に価値が高まっている要因でしょう。
少なくとも、今ここに集まりはじめている人たちは、時代に対応しライフ・シフトを遂げようとアクションを起こしている人たちです。その熱量や姿勢そのものに、多くのヒントが感じられます。

その詳しい様子は、こちらの【コラム】次に世の中を席巻する”SNS”が見えてきた。でも書きましたので是非ご一読下さい。

④次に住むなら何処がいいかを妄想する

今までは、都会が圧倒的に魅力的で、便利で、有利でもありました。それが急速に崩れていることは間違いありません。
情報も買い物も、人との出会いまでもがインターネット経由になってきているからです。
それでも日本では都市部への人口流入が止まらない。これはやはり「仕事」がまだ都会に集中しているからでしょう。
しかし、その仕事も徐々に、ネット経由になりつつあります。もちろん全てではないですが、状況は更に変化していくはずです。

同時に、ここ数年、年に何度も激甚災害が発生する時代を迎えてしまった日本。先日NHKでも1週間に渡って特集していた「首都直下型地震」は、「30年以内に70%の確率で起こる」とまで言われています。それだけではなく、南海トラフや東海大地震など、日本どこでもそうしたリスクは避けようがありません。
いやそんな悲観的な事を前提にしなくても、今は他拠点居住などという言葉も出てきて、住むという概念自体が変化しつつあります。もっと緩やかに考えても、テレワークはどんどん進み、わざわざ出勤しなくてもいい職種から、コスパの悪い都会暮らしを離れる傾向も進みつつあります。

こうした状況を考えると、今すぐは現実味がなくとも、望むか望まざるかに関わらず、私達誰もが、次の10年以内に「居場所を変える」可能性はわりと高いのではないでしょうか?

それを具体的に考えるまでいかなくとも、「もし移住するとしたら、自分にとって何処がいいのかな?」と妄想を巡らせておくのは悪くないかもしれません。
できれば、その候補地は、複数あったほうがよりいいかもしれませんね。日本各地の移住サイトをまとめた記事「おすすめの移住サイト42道府県分まとめ!」もこちらにありますので参考にしてみてください。

自分の出身地や縁戚・地縁、好きな場所、好きなことができる場所、旅行で印象に残っている土地、仕事で地の利がある場所・・・などなど。なんでもいいんです。
そしてできれば、近い内になにか理由をつけて、その地を訪れてみるのもいいでしょう。そういう思いを抱いて訪れると、また違って見えるかもしれません。

⑤今までに一度もやったことのないことをやってみる

最後に、こうした準備をしても実際に大きなアクションをとれるかは別です。誰しもが、いきなり大きな行動を取るのは勇気がいるし、なかなか踏み出せないものです。しかし、次の10年、特に何もしなくていいということはほぼ無いと考えて良さそうです。これだけの変化に対応するには、それぞれが「思い切った行動」をとる場面を迎えるはず。そのときに動けるようにするために、どんな小さなことでもいいので、今までに一度もやったことのないことを、やってみることを強くおすすめします。

今までこれと言って個人で情報発信をしてこなかった人は、SNSやブログをやるとか。そこまでできたら、素晴らしいですね。
それほどでなくても、行ったことのないところに足を運ぶとか、食べたことのないものを食べるとか、そんな他愛もないことでもいいと思います。
大事なのは「よし、やったことのないことをやるぞ」と思って行動することです。
その結果は、多くの場合、うまく行かなかったり、大したことなかったりするでしょう。しかし、それでも十分意味があります。なぜなら、大きな行動の障害になるのは、たいがい自分自信の“躊躇”だからです。小さくてもその障害に慣れておくと、大きな行動にも踏み出しやすくなるはずです。

いかがでしょうか? いずれにせよ、2020年は今を生きる誰もが迎える転機の入り口のような気がしてなりません。多かれ少なかれ、良い悪いは抜きにして、誰もが勇気を持って決心する場面を迎える可能性が、いつもの10年よりも高まりそうです。そんななかで開催される東京オリンピック/パラリンピックは、勇気を補充するいい機会になりそうですね。タイミング的に非常にラッキーかもしれません。楽しみながらも、どこか冷静な意志を持って観ておきたいものです。

その後の日常に戻った後で、いや待たなくてもいいんですが、それぞれがそれぞれの考えのもとに、“動き出す”必要があるでしょう。そして一番大事なのは、たとえ想像がつかなくても、その時の目線を10年後の2030年に置くことだと思います。

文:ネイティブ倉重

【著者】ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重 宜弘(くらしげ よしひろ)
愛知県出身。早稲田大学 第一文学部 社会学専修 卒業。金融系シンクタンクを経て、2000年よりデジタルマーケティング専門ベンチャーに創業期から参画。大手企業のデジタルマーケティングや、ブランディング戦略、サイトやコンテンツの企画・プロデュースに数多く携わる。関連会社役員・事業部長を歴任し、2012年より地域の観光振興やブランディングを目的としたメディア開発などを多数経験。2016年3月にネイティブ株式会社を起業して独立。2018年7月創設の一般社団法人 全国道の駅支援機構の理事長を兼務。