有田焼に伊万里焼、嬉野茶や唐津くんちなど、古くから町に根付いた伝統や文化を持つ佐賀県。
首都圏の人たちに「佐賀県の印象は?」と聞くと、上記のような伝統文化や、佐賀牛や呼子のイカなど、食に関する感想をもつ人が多いでしょう。
いま佐賀県では、新しいイノベーションを起こすことを目的に、この伝統や文化をもつ各エリアにIT企業に向けたPRおよび誘致活動を進めています。
一方で、首都圏では、情報が集約されている東京圏内に留まっての活動から、地方に目を向け、各地に存在する様々なリソースを生かした新しいビジネス展開を目指すIT企業が増えつつあります。
そういった背景を受け佐賀県は、OFF TOKYO(東京にこだわらない働き方)を提唱するシビレ株式会社と連携し、都内で地方展開を検討するIT企業を対象としたツアーを実施しました。
佐賀県内の各エリアを訪れ、市町の特性や魅力を直接体感し、味わい、知ってもらい、具体的に拠点立地についても検討いただきました。

焼き物で栄えた2エリアを歩く。まずは唐津・伊万里を知る2DAYS
今回、佐賀県へのツアーは2行程で実施されました。
まずは第一行程「唐津・伊万里」編に参加する企業ご一行が、佐賀空港に集合してツアーはスタート。
バスに乗って一行は第一の目的地・唐津へと進みます。バスの車中では自己紹介を。

お互いの参加目的を共有し、事業内容について共有することで、佐賀県を軸に事業の連携などの可能性を探る時間となりました。
唐津市は、「唐津くんち」と呼ばれる祭りがあることで知られる町。1年のうちの3日間に町の人たちは魂を込めています。

最近では海外にも広く紹介されており、平成28年には唐津くんちの曳山行事をふくむ「山・鉾・屋台行事」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。この町の文化に惹かれて、移住を決める人もいるとか。
唐津市に実際に立地を決めた企業にも訪問しました。

株式会社ココトは、東京に本社を置くIT企業。唐津事業所は、基本的に東京と同じ仕事ができる状態をつくっており、社員の平均年齢は26歳。ほぼ唐津で採用ができているということもあり、参加した企業の方々は採用率の高さに驚きを示していました。
そのほか、市内団体がプログラミング体験イベントを実施するなどして、地域のIT化に貢献しようとする点など、ツアー参加者の関心を集めていました。

佐賀県は、実直な人が多いとか。唐津を代表する「唐津焼」の窯元を視察し、このエリアに根付く職人が作り上げてきた文化や町の伝統、このエリアに住む人たちの気質なども体感しました。
唐津の行程はここで終了。
バスで、次の視察エリアである伊万里に移動します。
1日目の行程の最後には、ツアー参加企業や市町の方々とともに懇親会が開かれました。
スペシャルゲストとして、深浦弘信伊万里市長も参加し、伊万里市の取り組みや目指す方向性などを同じ目線でお話しいただき、IT誘致に意気込む様子が伝わってきました。

参加者のひとりは、「伊万里市の方の誘致に関しての力の入れように感心しました!」と話していました。
伊万里を中心とした佐賀県の食材やお酒を堪能し、市町の人たちとじっくり交流する夜となりました。
美しい伊万里の街並みを体感。歩くだけで伝統を感じられる
第一行程の2日目は、伊万里市から始まります。

伊万里市は、その美しい町並みを堪能してほしい、ということから朝一番の街歩きからスタートです。
築130年の建物をリノベーションした伊万里川沿いにあるカフェ「LIB COFFEE IMARI」で、この日特別につくってくれたモーニングセットをいただきます。ここは、ヒトとヒトとがつながることを意識してつくられた場所で、オーナーの森永一紀さんが伊万里の歴史やお祭り、伊万里の今昔を語ってくれました。

ぶらぶらと町を歩きながら、到着したのは、PORTO3316IMARI。「伊萬里まちなか一番館」は、“まちなかに賑わいを取り戻したい”という想いのもとオープンした施設。もともと信用金庫だった広い館内にはハンドメイド雑貨などを販売するレンタルBOXやカフェ、ワークショップ・イベントスペースなどがあります。モーニングで訪れたLIB COFFEE IMARIは「まちなか二番館」で、伊万里まちなか活性化運営協議会が運営する一番館を核として店舗を増やし、『点』から『面』への中心市街地活性化に繋げようとする取り組みを行っています。
ドローンスクールやシェアリングサミットなどの最先端の取り組みを行っており、「地域」を軸にした新しい取り組みに、ツアー参加者は興味をもって話を聞いていました。

そして、伊万里市内につくられたビジネス支援オフィス「バンリビル」も視察。すでに数社の入居が決まっており、新しいイノベーションが始まる可能性を感じました。
伊万里市内で訪れた「名村情報システム(株)」のデータセンターを見学。これは前夜の懇親会の中で話にあがったもので、急遽伊万里市の方の手配で立ち寄ることができました。
参加者からはデータセンターを初めて見る方もおり、また今後BCPの観点から地方のデータセンターを併用することがより現実的になっていくとのことで好評でした。

伊万里市は、伊万里を象徴する「伊万里焼」の磁器が街なかに飾られており、美しい景観が拝見できました。そしてその磁器は、傷つけられたことも壊されたことも一度もないとのこと。ツアーに参加した企業から「佐賀の方たちは礼儀正しく、時間の流れが良く、地域愛があることがよくわかりました」と感想を語る方もいて、伝統や文化を受け継ごうとする想いが、色濃く受け継がれていると感じました。

参加した企業は、佐賀で活躍する人たちや伝統・文化を守る姿勢に感銘を受け、「佐賀県と関わっていけるような仕事を検討したい」「佐賀県に拠点を作りたい、検討したい」「再度、佐賀県に訪問して検討していきたい」と語っていました。町の伝統や人に触れたことで、佐賀県への想いが膨らんだようです。

ビジネス拠点としてのメリットを探り、嬉野・有田を味わい尽くす
そして、第二行程「嬉野・有田」編も同時並行でスタートしました。
空港に集合したのち、佐賀市内へと移動。

佐賀市内のビジネスセンター「アイ・フォレストビル」を視察したのち、一行は嬉野市へ。佐賀市内から約1時間で到着しました。

「嬉野」は、美肌に効果のある温泉や癒しの風景などに特徴あるエリア。
公衆浴場なども充実していることから、すでに嬉野エリアに拠点立地した企業などでは、「日常的に温泉や自然、癒しの街並みにすぐにアクセスできる」点を魅力に感じ、地縁のなかった従業員の移住も増えているようです。
新設する嬉野温泉駅前にできた「嬉野オフィスビル」(嬉野市企業誘致ビル)を見学し、新たにビジネスを始めるイメージを膨らませました。施設の利用料のお得感に、本気で立地を検討したいという企業もいました。

新幹線の停車駅ができるなど、交通利便性の向上も見込まれる嬉野の癒しの街を歩き、今回の宿泊先でもある「和楽園」にチェックイン。ツアーの参加者は、良質な嬉野温泉を存分に体感しました。

そして、この日の懇親会の会場へ。
村上大祐嬉野市長が参加者に魅力を語るべく、参戦しました。そして、大盛り上がりのうちに、懇親会は終了。佐賀県を代表するディープなナイトスポットが点在する嬉野で、希望する人たちは二次会へと参加し、夜は更けていきました。

 

あふれる地域資源に、ビジネスの可能性を感じる
第二行程の2日目。
嬉野市から始まったこの日の最初の目的は、「嬉野茶」の茶畑です。嬉野エリアは、温泉、夜の街並みにとどまらず、「嬉野茶」が有名な産物。
嬉野という一エリアに数多くの資源があふれており、ITを軸にさまざまなビジネス展開の可能性が感じられました。
そして一行は、「有田焼」で有名な有田町へ。

有田には、全国でも珍しいデザイン科をもつ高校があります。それが、佐賀県立有田工業高校デザイン科です。

この佐賀県立有田工業高校は、全国高等学校デザイン選手権大会などで賞を獲得する学生も多く輩出しており、実績のある高校を視察し、将来的な採用の可能性などについても検討してもらいました。

つくばから有田へ。AI開発を有田で行う企業を訪問
そしてAI開発を行う株式会社LIGHTzを訪問。この企業は、茨城県つくば市に本社をもち、AI開発を行う企業です。
佐賀県に縁もゆかりもなかったところから、あるキッカケで佐賀県と出会い、優秀な人材の採用ができる可能性が高い、という点を魅力に感じ、立地を決意しました。
県内で実施した説明会には60名以上が参加、当初採用を想定していた人数の4倍ほどの採用が実現したとのこと。
有田町と佐賀市に拠点を開設し、つくばと連携しながら開発を進めていく予定とのこと。
首都圏だと難しい採用が、佐賀だとまだ実現できそうな点に可能性を感じる参加企業が多くいました。

有田の魅力のひとつは、町中でも有田焼を身近に感じられる点があります。有田焼の磁器製の鳥居や狛犬など、やきものの町ならではの風情に触れることができる「陶山神社」を訪問し、歴史が彩る文化的な街並みを堪能しました。
参加した企業の皆さまは、「市長やキーパーソンと交流できてよかった」「現地のIT企業の話が聞けてリアリティがもてた」など、現地の方たちの交流が、自社のビジネスに生かせそうだという声が多く聞かれました。
また、街並み、古民家、産業、学校など、地元に根付いた素晴らしい資産を見られたことで、より具体的な展望が描けたと話す企業もありました。

参加企業に感想を聞くと、「想像している以上に可能性を感じた」「“働き方”に感心のある今だからこそ注目したいエリアだ」という意見が上がりました。具体的に、ツアーに参加した企業の1社は「次回は社員を連れて再訪問したい。佐賀県内の優秀な学生とも交流したい」と話し、1社はすでに近日中での再訪問を決定。自社のビジネスを生かす土壌があると判断したようでした。
佐賀県では引き続き、県外のIT企業を対象に佐賀県の魅力を知っていただくべく情報発信を続けていきます。
佐賀県に関心を持たれた方、ぜひ一度訪問してみてはいかがでしょう?