北海道鹿部町は、人口3900人の漁師町で日本有数の国産たらこの生産地。自ら昆布漁に勤しむ町長のもと「にっぽんA級(永久)グルメのまち連合」に名を連ね、食を中心にしたまちづくりの歩みを進めている。

その鹿部町で設立されたばかりのローカルベンチャー株式会社シカベンチャーが現在、まちづくりの一丁目一番地である「道の駅しかべ間歇泉公園」の店長(幹部候補)を募集している。月収のオファーは40-50万円と、小売大手の店長に引けを取らない金額。ここに、鹿部町と、道の駅を経営する株式会社シカベンチャーの展望と本気度合いが現れている。

シカベンチャーはビジネスの専門家集団

株式会社シカベンチャーは、2018年11月に産声を上げた新興企業だ。役員3名の経歴は以下のとおり。

役員紹介

代表取締役 大関将広氏(画像下段)
日本アイ・ビー・エム時代に石巻の復興事業に携わったことが契機となり、2014年9月に独立起業してふるさと納税事業を開始。地元への還元を最大化する事業スキームの構築を得意とし、北海道から沖縄までの自治体を支援している。(参考記事)https://www.nativ.co.jp/article/biggate_recruit/?key1=biggate1

取締役 金山宏樹氏(上段・左)
淡路島出身。地元の観光施設運営会社でEC事業を担当した後、飲食事業部の取締役として会社の業績を4年間で8億から14億5,000万円へ伸ばす。2017年7月、集客したい全国の自治体、施設を支援する株式会社シカケを設立。「行きたくなる」飲食店、「買いたくなる」お買い場をつくる手法を全国に伝えている。(参考記事)https://nativ.media/800/

執行役員 岡澤有紘氏(上段・右)
丸紅株式会社を経て2社の投資会社で事業性評価や企業価値向上を手がけたあと、株式会社オリザリアを創業。1次産業と関連する食品製造・卸売・小売業における事業構想・計画の作成・スキーム構築・必要資金の調達・運営体制構築等に特化したアドバイザリーファームとして活動している。

1年で道の駅の売上を10%、粗利を4.5%UP

「道の駅しかべ間歇泉公園」は、シカベンチャーが運営をはじめてから、2020年3月に1期目を終えたところで、対昨年比で売り上げを10%、粗利を4.5%伸ばしている。コロナ禍により全国に先駆けて緊急事態宣言が発令された北海道で、2月・3月の売り上げが激減したのにもかかわらずだ。2期目のスタートとなる2020年4月・5月は臨時休業を余儀なくされたが、休業明けの6月は昨対プラス。7月も好調に推移している。

「域外からのお客さんが戻ってきたかといえばそうではなく、観光での来店者数は半減しています。ではなぜ売上が伸びているかといえば、印象が変わったから。金山さんがスタッフの意識改革やお買い場の改造、新商品開発を進めたり、コロナの最中に『WEB来店』(https://shikabe-tara.com/welcome)という取り組みが注目されて、NHKやフジテレビ、TBSなど全国ネット、新聞で取り上げられたことで、地元や近隣市町村の皆様が『鹿部、最近アグレッシブで若者が頑張ってるね』と来てくださるようになったのです。」(大関社長)

シカベンチャー道の駅しかべ間歇泉公園の公式サイト
https://shikabe-tara.com/

扇の要となる現場指揮官を募集中

田舎でのんびり暮らしたいといった感覚なら、応募はオススメしない。鹿部町を本気で日本一の地域に成長させようと考える猛者たちと、仕事をすることになるからだ。

「求めているのは、現場指揮官です。僕らの目となり耳となりながら現場をまわし、要所要所で報告してもらって、こちらからディレクションを出す。そうしてお買い場を改善していくサイクルをいかに効果的にまわせるか。そこが肝なんです。」(大関社長)

店長職は、役員3名の豊富な知見を、現場のリアルに即したかたちで反映するパイプ役。扇の要となるポジションだ。従って、3名がこれまでのキャリアで培ってきたノウハウを存分に吸収できることは、言うまでもない。

道の駅というと、地元の人がつくったものが安く買えて、つくる方はおこづかい稼ぎになり、買う方は地産地消やローカル感を楽しめるという牧歌的なイメージが強い。つまり、儲からなくても、地域のために存在するので行政が補助金で支える構造になりがちだ。しかし、シカベンチャーが考える道の駅は、全く異なる。ビジネスマインドをもった厳しさで高収益の道の駅を創り出し、地元の若者が地元で働く将来を描ける、お給料が上がる良質な雇用を生み出そうという考えがベースにある。

「行動指針は、『鹿部町に来た全ての方に楽しんでいただく』です。仕事の付加価値を上げて来たお客さまを楽しませることが肝要なので、『道の駅は地域のおじいちゃんおばあちゃんに楽しんでもらうことが全て』という考えの人は難しいと思います。われわれは、道の駅は地域のセーフティネットではないと思ってるんですよ。」(大関社長)

付加価値を上げる、という言葉どおり、シカベンチャーは1年で粗利を4.5%上げることにも成功した。稼いだ利益は人件費を含めた投資に還流させる。

鹿部町に来たすべての人を楽しませる「お買い場」をつくる

「発展している地域の特徴は、未来を描いて投資をしていることです。道の駅しかべ間歇泉公園も、僕らが運営する中で利益を原資として1,000万円以上かけてリニューアルして、その結果コロナ禍の中でも6月は昨年度実績を超える売上を獲得し、7月に至っては昨年度実績を20%も上回る売上になりました。スタッフのお給料も、もともと一律最低賃金でどれだけ頑張っても上がらないしくみだったのを、役職をつけて差をつけたり、ベースアップとボーナスも取り入れていく。粗利を増やすビジョンがあれば、こうした投資ができるんです。」(金山さん)

「地域の生産者さんだからといって仕入れ価格を高くせず、適正価格で仕入れる。道の駅だから安く売るのではなく、適正にプライシングする。その上で、お客様に商品のよさを理解して楽しく買っていただけるように、POPを書く。

スタッフみんなが、粗利から自分のお給料が出ている意識と、いい仕事をして適正な利益をいただく発想を持つことが大切です。」(大関社長)

こうした攻めの姿勢は、鹿部町という地域の伸びしろが大きいことの裏返しでもある。事実、金山さんが2019年9月にリブランディングした地元の特産品「白口浜真昆布」を根っこ部分を使った液体出汁は、現在、数ある取扱商品の中でも売上は圧倒的な1位となるヒット商品に。ファンがつき、函館から1時間かけて買いに来る人もいれば、1日100本近く売れる日もあるそうだ。

原石を磨きヒットした白口浜真昆布の根昆布だし

「鹿部町に関わって白口浜真昆布って、はじめて聞いたワードなんですよね。でも、昆布手帳という業界の手帳では『鹿部町の目の前にある白口浜でとれる最高級品』とお墨付きをもらってる昆布なんです。それなのに、この商品は『だし昆布』みたいなよくある名前で、白口浜真昆布という正式名称も書かれずに、お買い場に安く置かれていた。そこで、ラベルとプライシング打ち出し方や店内での扱いを変え、店内の一等地に商品を置いた。さらに「根昆布だし」という商品は、モンドセレクションに出品し金賞をいただき、この商品は売上ダントツトップ商品になりました。こういう原石が、この地域にはまだまだあるなと感じています。」(金山さん)

だからこそ、シカベンチャーは、地域の成長の余白、裏を返せば至らない部分を、自分の成長に生かしたいと思えるような人物を熱望している。道の駅の仕事の幅は広く、そのぶん裁量が大きいのも魅力だ。店長経験者ではなくても、店長の補佐や副店長、売り場のリーダーなどの経験があり、店長をやってみたいという意気込みがあればOKだという。

飲食店・まちづくり・地域商社へ広がるキャリアパス

「役員3名とはあらゆる場面で日々コミュニケーションが発生すると思うので、ある意味ブートキャンプ状態になるはずです(笑)。キャリアパスとしては、2−3年で地元の若手人材を店長に育て上げたら、次のマネジメントのステージに突入してもらいたい。いずれは地域商社の幹部になるようなマインドで来てもらえると、僕らとしても理想です。」(大関社長)

シカベンチャーが設立されて約2年。当初は、黒船襲来といった受け止め方をする人も多かったが、地域内での評価も大きく変わり、活動を好意的に捉えられているという。空き家や貸別荘、廃業した温泉施設等の活用方法を共に考えてくれる助っ人も増えた。現在は物販と施設管理を主な事業としているが、近い将来には飲食業への事業展開も計画している。

「町の中でユニークな役割を期待されるポジションになってきている。小さな町ですが、まちづくりをど真ん中でできるのは面白いと思います。『でも』『だって』ではなく、『なぜ』『もっと』というプラス思考でわれわれとタッグを組めるかたをお待ちしています。」(大関社長)

シカベンチャー
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