「家族でレストランなんて恥ずかしい」。我が子の言葉が新しい店舗のモデルを探すきっかけになったことも

紆余曲折の末、事業はようやく軌道に乗り始め、現在では愛媛を中心に、四国、九州で幅広く事業を営んでいる。飲食は、モスバーガー、大戸屋をはじめとするフランチャイズチェーン本部に加盟してビジネスに取り組んでいるが、最初のきっかけとなった出来事は今から30年以上前に遡る。

「船井総研に勤める前に、親父から、『レストラン業をやりたいからモデルになるもの探してきてくれ』っていきなり言われたんです。自分で探してみたけど見付からないから引き受けてくれ、と。でも、そのころ人口10万人くらいの街でレストランうまくいってるとこなんてなかったんですよ。だって、みんな外食なんて行かないから。

でも広く外に目を向けてみると、京都の舞鶴で『トマトアンドオニオン』の2店舗が超繁盛してるってことがわかって親父に話したら、まだ2店舗しかないのに、うちでフランチャイズやりたいと言い出して。それで『トマトアンドオニオン』のフランチャイズ1号店出したのがスタートになりました」

その後も、フランチャイズを手掛ける店舗は増える一方。あるときは、プライベートで食事に行ったことがきっかけで新しい店を探すことになったという。

「『トマトアンドオニオン』は家族で利用してくれてる人も多くて、うちも小さいころはそうだったんだけど、子どもが小学校4、5年ともなると、恥ずかしいっていってこういう店には一緒に行かなくなるんだよ。じゃあどんな店ならいいんだ?って考えたとき、僕は僕で外食するなら一杯飲みたい派だから、お酒が飲めて焼き鳥がおいしくて、明るくてきれいな店がいいっていう理想が出てきて、すぐにモデル探しをはじめたんです」

その結果はじめることとなったのが、「馳走家とり壱」。愛媛の地鶏を使ったおいしい焼き鳥はもちろん、しまなみ海峡の鮮魚を使った刺身や寿司、煮魚まで楽しめる名店だ。

さらに、素材選びにこだわった自然食バイキング「ティア 家族のテーブル」、本格フレンチを低価格で楽しめる「俺のフレンチ」、パティシエ手作りのケーキや焼きたてのパンがそろう「デリカ・スイーツ&ベーカリー」などバラエティ豊かな店舗を運営。

ちなみに、自分たちで店舗をプロデュースしようという考えには至らなかったのかというと、「自分の性格的にも、それは無い」ときっぱり。「飲食業がこれからどうなるとか、働く女性が増えたら飲食が伸びるとか、そんなことを計算したことは一度もない。それでもうまくいったのは、やっぱり“愛と感謝の法則”やね。困ってる人を助けようとしたり、必要なものを必要なところへ届けようとしたりしたら、いつかは自分の元に返ってくるものなのかもしれんね」

井本様3

ニーズを察知した際の行動力の大きさは計り知れない。

事業のもう一つの大きな車輪であるリユース業をはじめたきっかけは、たまたま日経新聞に掲載されていたBOOKOFFの記事を目にしたことだというが、このときもすぐに先方に話をつけにいったという。
「社内ははじめ大反発。リユースという言葉自体なかった時代だったから、『なんで古本なんかやるんですか?』って。銀行でいったら廃品回収みたいなものだという認識だったんでしょうね。でも2年半くらいかけてようやく事業としてスタートすることができた」

ここからはさらに躍進が続き、関連事業のHARD OFF、OFF HOUSEなどにも手を伸ばしただけでなく、つい最近はウラジオストックにリユース事業の展開を探るため、現地まで足を運んだばかりだ。