コロナ禍でテレワークを導入する企業が増えました。中にはオフィスを手放し、完全にテレワーク化するというケースも出ています。しかし一方、働く側からは「快適に働くための環境づくり」に困惑の声も少なくありません。いきなりテレワークを課され、思うようなパフォーマンスを発揮せず苦戦している方は多いはずです。

では、どうすれば自宅で快適にテレワークできるのか。私はコロナ禍以前から、これまで約13年間にわたって在宅で働いてきました。自宅には4人の子どもと犬が1匹、自身でコワーキングスペースを運営したこともあります。その経験をもとに、テレワークで働くために考えておきたいポイントをご紹介しましょう。必ずしも万人にとって同じ環境が最良とは限りませんが、ぜひ参考にしてみてください。なお、副業やフリーランスで在宅勤務されている方もいるかと思いますが、ここでは主に会社員のテレワークを想定してお伝えします。

まずは家族の協力を得ること

一人暮らし以外の方は、まず家族の理解と協力が欠かせません。中には夫婦の時間がいきなり増えることに、少なからずストレスを感じてしまうこともあるでしょう。オンライン会議中には静かにしてもらうなど、何かと気を使わせてしまうもの。特にお子さんがいれば、幼い子が泣いてしまったり友達を連れてきて騒いだり、仕事に集中できないシーンが出てきます。

また後述しますが、仕事用の部屋やスペースを自宅に設ければ、その分だけ家族が自由に使える自宅内の空間は減ってしまいます。もしかしたら子供の遊び部屋を使ったり、リビングを占領したりする…なんてことがあるかもしれません。テレワークによって家族に不満を持たれないためには、ただ働いている姿を見せるだけでなく、しっかり説明して理解を得ることが必要です。

なお、テレワークで自宅に時間が増えると、家族はつい何かあったとき話しかけてしまいがち。買い物の相談やテレビで見たことの共有などの雑談、あるいはちょっとした愚痴など。しかし集中していると、そうした声がけを煩わしく感じてしまうことがあります。実際、私もつい強く「今は無理!」などと突っぱねてしまい、後になって反省したことが少なくありません。例えば「今、話しかけていい?」と一言掛けてもらったり、デスクに向かっているときは急用を除いて話しかけないよう配慮してもらったり。場合によって、そうしたルール作りが求められるでしょう。

強いインターネット回線は必須

今や仕事にインターネットは必須となりました。プライベートでのインターネット検索やメール程度であれば、恐らく自宅のインターネット回線に不便を感じることは少ないでしょう。しかしテレワークではWEB会議を行ったり、画像・動画など容量の大きなデータのやり取りを行ったりする機会が多いはず。テレワークでは、こうした対応にも問題ない強いインターネット回線が欠かせません。これまで日常で不便を感じていなかったインターネット環境が、仕事では十分ではなかったという声は多く聞かれます。

例えばWEB会議の最中に電波状態が悪くなり、何度も切れてしまう。これでは相手に不快感を与えますし、業務がとても非効率になります。また、容量の大きなデータの送受信に時間が掛かってしまい、なかなか作業が進まない…といった事態も考えられるでしょう。私は以前にインターネット無料の賃貸マンション(マンション全体で共用のインターネット回線が引かれていた)に住んでいました。最初は通信速度に問題はなく、「通信コストが不要でラッキー!」と喜んでいたものです。しかし、コロナ禍でマンション内にも自宅勤務者が増えたタイミングから回線速度が低下。今は引っ越して個別に回線を引いていますが、一時期は速度が遅いときだけスマホのテザリングに切り替えて対応するなど、苦労した経験がありました。

なお、インターネット回線の契約プランを見直すだけでなく、ルーターの買い替えでも通信速度が上がることがあります。テレワークを行うなら、あらかじめ業務に十分なインターネット環境が整っているか確認しておくことが大切です。

できれば仕事用の電話番号を持つ

テレワークでオンライン化が進んでも、やはり電話連絡はゼロにならないでしょう。社員同士はもちろん、顧客や関係企業など外部との連絡手段として、まだまだ電話は根強く残っています。では、テレワークでどのように電話対応していくのか。中には電話代行サービスを利用し、一次対応を外部委託するケースもあるでしょう。あるいは代表電話を廃止し、連絡は各社員のスマートフォン対応というケースもあるようです。いずれの場合においても共通しているのは、オフィス外でも対応できる電話番号を用意しておかなければいけないということです。

勤務先からスマートフォンを貸与されるなら、必然的にそれを用いることになります。しかしそれ以外なら、ご自身で電話番号を用意しなければいけません。多くの場合、プライベートで使用しているスマートフォンを手段として選ぶのではないでしょうか。しかし経験上、プライベートの電話番号を仕事に用いるのはおすすめしません。

オフィスに出社していれば、よほど急用でない限り退社後に電話連絡を迫られることはないでしょう。自分宛の電話があっても伝言が残されていて、翌日出社後にかけ直すといった対応になるはずです。しかしテレワークでは、用意した電話番号へ直接連絡が入ります。たとえ休みの日、あるいは夜遅い時間帯でも掛かってくる可能性は拭えません。もちろん“出ない”という選択はできますが、やはり電話が入ると気になってしまうもの。また、登録されていない電話番号からの着信では、プライベートと仕事、どちらの連絡か分かりません。
そのため、たとえ同じスマートフォンをでも別の番号で発着信できるようにしておくと、オンオフの切り替えがしやすく便利です。昨今は例えば楽天コミュニケーションズ社の「モバイルチョイス“050”」のように、IP電話番号を専用アプリで使用できるものがたくさんあります。別のスマートフォンを持つよりコストが大きく抑えられますし、2台持ちの煩わしさもありません。もちろんこの場合も交渉すれば、使用料は勤務先で負担してもらえる可能性があります。

広めのデスクで物は最小限に

リビングワークもできますが、生産性等を考えるなら仕事用のデスクと椅子を用意しましょう。椅子と机の高さが合っていないと、集中力が低下したり肩こり・腰痛などの原因になったりします。そのうえで、デスクは広めにしておくのがおすすめです。

パソコン作業だけであれば、それほど広いデスクは必要ないでしょう。しかし、例えばパソコン画面を見ながら手書きでメモを取ったり、紙資料を広げてパソコン操作したりすることがあるかもしれません。また、いずれ業務効率や生産性を考えてデュアルディスプレイにしたいと思ったとき、デスクが狭いと買い替えが必要になります。そのため、もちろん設置場所などで制限はありますが、机は「広いに越したことはない」のではないでしょうか。私自身、最初はホームセンターで購入したパソコンデスクを使用していましたが、現在は幅150cmと大きめのデスクを愛用中。周辺機器などは後から設置した棚に置いて、デスクスペースを広く確保するようにしています。

ただしスペースがあると、つい物をたくさん置いてしまうという方は少なくないでしょう。せっかく広いデスクなのに、気づいたら物に埋もれて作業スペースが狭いなんていうのでは本末転倒です。あくまで物は最小限に留め、すぐ使わないものは他の場所へ収納するのがおすすめ。スペースが狭いといざというとき、いちいち片付けるという無駄な作業は発生してしまいます。

仕事専用の部屋(もしくは空間)を用意

自宅で仕事するなら、できるだけ仕事専用の部屋を用意するのがおすすめ。どうしても難しければ、周囲から遮断された空間を持つのも良いでしょう。例えばノートパソコンを持っていればリビングやダイニング、あるいは床に座ってでも仕事はできます。しかし周囲に趣味のものがあったり家族の声があったりすると、やはり集中力は低下しやすいもの。また、どこでも仕事して良いという状態だと、なかなか“仕事モード”に入りにくいはずです。仕事だけに集中できる空間を持つことで、業務効率が高められます。自宅内であればドアを開くだけで趣味などリフレッシュできるものに手が届くので、わざわざ仕事場と混在させる必要はないでしょう。

また、家族など同居人に対しても、「ここにいるときは仕事モード」と声を掛けなくても理解してもらえます。私は日中に娘や犬の様子を見られる環境が好きなので、ドアで仕切れる隣接した空間を仕事場にしました。しかし、デスクに向かって仕事しているときは、急用でなければ家族が話しかけてくることがほとんどありません。むしろ長男などは、「パパは今仕事中だから」と周囲に呼び掛けてくれるほどです。どこで仕事を始めるか分からない状態より、仕事部屋を固定した方が周囲も過ごしやすいのではないでしょうか。

自分が働くうえで理想の環境をイメージしながら整えよう

このほかにも、テレワークを快適にする手段はさまざまです。例えばデスクについて取り上げましたが、実は椅子選びも非常に大切。集中力を継続するほか、肩こり・腰痛などに悩まされず身体を良好な状態に保つうえでも、慎重に選びたいアイテムの一つです。昨今はテレワーク向けに多様なオフィス用品が出ていますので、気になる方は調べてみてください。

あるいはテレワーク導入を機会とし、思い切って引っ越してしまうのも良いかもしれません。私は利便性より自然に囲まれて子育てしやすく、余裕のある住空間が欲しくて引っ越しを選択しました。地域によっては、移住者に助成金等を用意しているケースもあります。「いつか住みたい」と思っていた場所に、仕事を辞めることなく住むことができる可能性だってあるはずです。

自宅という空間で働くのに、どんな環境がベストなのか。これは、人それぞれ異なります。自分自身がテレワークする姿をイメージし、何が必要なのか考えてみてください。もちろん、どうしても自宅に働くための環境を整えられないという方もいるでしょう。そうした際には、シェアオフィスなど自宅外に環境を持つのも有効な手段です。とはいえコストが発生するため、会社にも費用負担してもらえないか確認してみることをおすすめします。


三河賢文
1983年生まれ、千葉県印西市在住。出身は宮城県仙台市。ナレッジ・リンクス(株)代表、“走る”フリーライター、ランニングコーチ、NPO法人HASHIRU 理事など、さまざまな顔を持って活動。仕事からプライベートまで全国各地を“走って”巡り、旅ラン&島ランが趣味。4児の子を持つ大家族フリーランス。
https://www.run-writer.com