都農町の考える地域活性化の原動力
山本 都農町は、今回の企画でとりあげた牛肉、トマト、ワインの他に、もともとフルーツの町で有名だということもありますし、海も近くて海産物も豊富です。
倉重 まさに「農の都」ですよね。
山本 そういう地域特性を存分に生かすには、やっぱりそれを独自の料理や商品にして、「美食」をキーワードに発展させていくしかないんじゃないかと思っています。
倉重 ガストロノミー・ツーリズム(美食観光)は、最近特に、観光のキーワードでよく聞きますよね。
山本 ですね。そうして多くの方から反応をいただければ、生産者も自信がでてきます。自分たちだけでは、自分たちの良さには、なかなか気づかないですからね。
倉重 どこの地域でも、よく言われることですよね。
山本 ふるさと納税の反響は、金額だけでなくてそこが大きかったなと…。生産者の皆さんが今まで以上に自信が持てたのが、大きな成果だったと思います。
倉重 私達が企画の中で取材させていただいた生産者の皆さんも、本当に自信に満ちあふれている感じがしました。なんというのか、腹が座っているというか…。自信のある人が語ると、ああも説得力があるものかと、感動したくらいです。同じ町のなかで、こういう人たちが数多くいらっしゃるのって、すごいなと思いますね。
山本 そういう方が3人から4人5人と増えていけば、町としても活気が出てきますよね。これは本当に実感として現れてきました。「もしかしたら俺もできるんじゃないか」という雰囲気がどんどん出てくるんですよね。じゃあ町で何かやろうとしたとき、こういう人たちが中心になって動いていただけるので、それでスピードが上がってきている感じがします。
倉重 どこの地域でも、本当に目指しているのはそこなんでしょうね。自治体がずっと引っ張っていくとか、だれか突出したリーダーがというんじゃなくて。
都農町の代表的な特産品であるトマト、宮崎牛、都農ワイン
山本 火がついて、どんどん飛び火していくような広がりがやっぱり理想ですよね。だから私、あんまり取材を受けないようにしているんです。(笑)誰か特定の人が注目されているうちは、本物じゃないと思いますしね。こうした今の状況も、本当に生産者の皆さんの努力の賜物ですし、部門を超えた庁内の協力と理解があったからこそなんです。そうでなければ絶対にここまで来られなかったと思います。
倉重 今回は、ご無理をお願いして申し訳ないです(笑)。
山本 いえいえ、特別です(笑)。
倉重 お話を伺っていると、日本って「遠隔地」から衰退するって思われているけど、本当はそうじゃないんだろうなって思います。交通の便とか、もともとの人口とかじゃなくて、そこでどんな人達が集まって、どう火がついて、どんなふうに変わっていくかによるんじゃないかと。日本は、ある意味、元気な場所とそうでない地域とで、まだら模様になっていくような気がします。都会ですら、そうかもしれません。
山本 よく「田舎は素晴らしい、環境はいいし、美味しいものも沢山あって恵まれてる」なんて言われますが、それって全国どこの田舎も同じですよね(笑)。そんな中で少しでも多くの人に関わってもらうには、やっぱり違いを出さないといけない。どこかで突き抜けるものを持って、体感してもらわないといけない。それが町の仕事だと思っています。
倉重 そういう仕事をひっぱる人がいるのが凄いですよね。町長も「1万人の社員の会社の社長みたいなもんだ」とおっしゃってましたが、それって本当にすごい意識ですよね。
山本 そう思います。そういうことが発端になっていると思いますが、今、都農町には本当に色んな人が関わりを持つようになってきてます。そこで生まれた人間関係が、都農町を動かしている原動力のひとつになっているじゃないかなと思っています。
倉重 人の輪がどんどん広がって繋がっていく感じですよね。生き生きしてる地域ってそうですよね。
山本 おもしろいですよね。こういう仕事してきて20年たって、初めてこういう雰囲気になってきたのが一番面白いし、こんなスピードがある町っていうのは、自慢できるんじゃないかなと思ってます。
倉重 今日はお話を伺えて本当に良かったです。ありがとうございました。是非、これからも私達も関わらせて下さい。
山本 こちらこそ、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
インタビューを終えたネイティブ代表の倉重(左)と都農町の山本さん(右)
取材・文・撮影:編集部
写真提供:都農町