地域活性化を目的に、各自治体が都市部から移住者を募集する地域おこし協力隊制度。
2021年度現在で全国1,085自治体で受け入れ、総勢6,015人もの人たちが各地で活動しています。
政府は再来年の2024年度までに総勢8,900人にまで増やすことを目標に、各地での取り組みをテコ入れに動いています。

一方で、今やこの募集は明らかに「売り手市場」。
つまり募集数に対して応募者が少なく、各地で募集しても反応がない、集まらないという状況が頻発しています。

最近、こんな記事も話題になっていました。

これらの報道によると、やはり人気の自治体に応募が集中しているという状況があるようです。

これは一体どうしてなのでしょうか?

実は私達も、このネイティブ.メディアを使ってこれまで数多くの「地域おこし協力隊募集」をサポートしてきました。
その経験から、「集まる地域と集まらない地域」には、地域おこし協力隊の捉え方や募集方法などに明らかな「差」があることを痛感しています。
そこでそれらの背景を整理しながら、原因となっている”勘違い”や”過ち”を、以下の3つのポイントとしてあげていこうと思います。

勘違い1:  未だに協力隊を”無料で雇える人手”だと思っている

地域おこし協力隊制度は、移住を条件として3年間を上限に、国がその人件費や活動経費などを年間上限480万円まで特別交付税として自治体に補助する制度です。
その名の通りまさに「地域おこし」に力を発揮してくれる人材を域外から招聘し、地域で活躍して任期後もできれば定着してくれるのを期待するという仕組みです。

その一方で、自治体からすればこの制度を使えば人件費「無料」で人を雇えるということが大きなメリット。
しかし実はこのメリットをどう捉えるか自体が、開始当初から制度の主旨と実際の使われ方に”歪み”を生み出してきたとも言えます。

つまり、明確な役割やミッションを固めないまま募集したり、地域の事業者に不足する”人手”として雇われたりする事例も、少なからずあったということです。
これは役割自体の価値以上に、人件費の節約という価値を求めているということになります。
同時に、だからこそ明確な意志が弱い”モラトリアム”的な人も一定程度入ってきて、結果的になかなか地域に馴染めなかったり、うまくその存在価値を見いだせないということもありました。
もちろん当初から大活躍する事例も数多くあったのですが、そこはご多分にもれず”悪い評判のほうが広がりやすい”こともあり、当初は制度自体の評判も必ずしも良くはありませんでした。

しかし最近は、状況はかなり変わってきたと言ってもいいと思います。
というもの、この制度をうまく活用する地域が増え、同時にその情報が広く知れわたって来ているからです。

例えば、こちらは我々も情報発信のご支援をさせていただいている事例ですが、島根県邑南町を中心とする「A級グルメのまち連合」の取り組みが正にそうです。

こちらは、地域おこし協力隊の制度を活用して、将来は地域で起業して自分の飲食店を持つ「シェフ」を育成しようという取り組みです。
あまりにも有名な例なのでご存じの方も多いかと思いますが、地域おこし協力隊の制度を熟知し、しかも「シェフになれる」「自分のお店が持てる」という、採用される側の「夢」を実現させる明確な道を示した、画期的な活用事例と言っていいと思います。

ちなみに、その仕掛け人であるの元・邑南町職員である寺本英仁さんは、この春独立されてその活動の場を全国に広げています。

またこちらの、香川県観音寺市の募集では、「無人駅を活用する拠点プロデューサー」というユニークなミッションで話題になりました。

こちらの募集には数十件の問い合わせが寄せられ、数多くの応募者を集めることに成功。
そして経験と意欲に溢れた有望な人材を獲得することができました。
実はこちらについても、我々がそのミッションの整理や打ち出し方をご支援させていただいたのですが、何にも増してその成功の一番の要因は、受け入れる側の地域の皆さんの熱意とその協力体制が大きかったと思います。またそれをとりまとめ、地域の課題をしっかりと見つめて非常に魅力的なミッションを導き出した、観音寺市の担当職員の皆さんの力の賜物だと感じています。

こうした事例を見ていても、やはり成功の一つの大きなポイントは、地域の側が如何にその課題を整理し、どんな人にどんな役割を担ってもらいたいかを明確にすることに他なりません。
同時に、その活動を支援する体制や環境を整備して、ある意味人生をかけて大きな決断をして来てくれる人に対して、一緒にやろうという気持ちで受け入れる「覚悟」が必要です。
これは考えてみれば当たり前のことですが、先にも説明したとおりコスト面のメリットだけに着目し、職員のアシスタント的な仕事や、人材不足に悩む地元企業の「人手」としての認識だけで募集する地域が、未だにゼロではないのも事実です。

こうした点から見れば、ある意味「集まりそうな募集」と「そうでない募集」の差は歴然としています。
ますます人材不足になると言われている時代になり、こうした面からも「地域の格差」は広がってくるのではないかと懸念されるほどです。

逆に言えば、地域おこし協力隊に限らず、いい人材が集まる地域には、より多くのいい人が集まる環境が整ってきているといえます。
制度をどう活用するかは、正にその地域の”意志”次第だとも言えるのです。

勘違い2:  9時〜5時のオフィス勤務が当然だと思っている

ご存知の通り、ある意味コロナ禍の数少ない”良い”影響で、日本社会の「働き方改革」がかつてないほど大きく前進しました。
Zoomなどのオンラインでの会議やセミナーは今や当たり前となり、在宅勤務も進み、サテライトオフィスやコワーキングスペースなども全国で急速に普及し、時間や場所に縛られない働き方が広まっています。もちろん職種や仕事の内容によってその度合はまちまちですが、大都市圏では誰もが知る大企業もそうした制度や施設の導入・改革を加速しています。その変化が、必ずしもIT企業だけにとどまらないというのも、そのインパクトの大きさを示していると言えるでしょう。

こうした世の中の変化は、当然この「地域おこし協力隊」制度にも影響しています。

つまるところ、以前と同じような「9時〜5時勤務」や「原則庁舎への出勤が必須」などの働き方を前提とする条件は、明らかに人気が無くなっています。
中には、募集の条件ではそう謳いながらも実際の現場で自由度を確保して上手に運用している自治体もあるので、募集要項の字面だけでは判断しづらいのですが、やはり隊員の働き方の自由度を確保する条件は明らかに変化しているようです。

さらに言えば、我々の経験からいうと「副業・兼業OK」も、もはや「必須条件」に近づいているのではないかと感じています。

協力隊員の月20万円前後の報酬は、もちろん地域で暮らすには問題ないとも言えます。しかしやはりある程度高いスキルや意志を持った人材を確保するには、決して十分ではありません。さらに言えば、「3年後に起業してほしい」という期待を込めるのならなおさら、貯蓄もできない報酬の仕事しか「やってはいけない」という条件は、よほど若くて勢いのある”猛者”以外にとっては、いわゆる「無理ゲー」に他なりません。

コロナ禍の中で加速した「副業・兼業」の流れは、この状況に大きな変化をもたらしています。
自分で既に起業し、場所に縛られない事業に従事している人にとって、逆に「固定の20万円」は非常に大きい、ありがたい条件です。既に持っている仕事をやりながらその固定の収入を得られ、同時に自分のやりたいことと地域の課題の重なる部分をミッションにできるのであれば、これほどやりがいのあることは無いでしょう。その能力を存分に発揮し、まさに「金額以上」のパフォーマンスを出すきっかけとなるに違いありません。

さらに言えば、最近よく耳にするようになった「転職なき移住」にも、正に当てはまります。
都市部の企業で「副業・兼業可」にしている企業は、どんどん増えています。そうした会社に務めながら「地域おこし協力隊」として活躍するような人も、今後は増えてくるのではないでしょうか。いやむしろ自治体の方から、そういう働き方がしやすい「条件」を、企業に提案すべきではないかと思うくらいです。

実は既に、そうした動きは地域によっては進んでいます。ただこの数年は、やはりコロナ禍の状況もあり、そのインパクトを受けてしまった業種の社員を一時的に自治体に受け入れるような、ある意味「救済措置」としての側面でこの動きがあったようです。しかしこれからは、そういう短期的な側面ではなく、中長期的な取り組みとして地域おこし協力隊や地域プロジェクトマネージャーという人材制度が、企業との連携で進んでいくのではと見ています。我々もそうした動きを捉えたご支援も、徐々にですが進めて行こうと思っているところです。

結論として、やはりこうした働き方の変化に応じた、制度設計、募集要項にしていくべきです。
少なくとも、自治体側は、固定化した条件で働き方を縛らないことが重要、いやそれを必須にすべきです。
中には「自治体職員自体が、副業・兼業やフレックスタイム制度に慣れていない、対応できていない」という理由で、ここを諦めているような地域もあるようですが、もう何をか言わんやです。逆にそういう働き方では成し得ない役割を担ってもらうための制度ではないのかと思うのですが…。そういうところで止まっているような地域に、いい人材が行くわけがありません。むしろ応募する側としては、ある意味”危険信号”として捉えて回避すべき”条件”だとすら思えます。

ただ繰り返しになりますが、表向きには「9時-5時・オフィス勤務」と書いてあっても、運用でうまく自由を確保している自治体もあります。このあたりは内容を見てもし興味があれば、一度問い合わせてみるのがおすすめです。

勘違い3:  文字だけの募集要項で”伝わる”と思っている

3つ目のポイントは、募集の内容を如何に魅力的に、またその真意をしっかり伝えるようにできるかです。

当然ですが、「移住を伴う転職」には並々ならぬ決意が必要です。その仕事を魅力的に感じてもらうためには、当たり前ですがハローワークの求人のような、文字だけで条件だけを書き連ねているような募集要項だけでは、決断どころか検討すら難しいはずです。

そういう意味で、自治体がその市町村のウェブサイトで形式的に掲載するだけで「応募される」ことを期待するのは、普通ならあまりにも難しいことは担当者は認識すべきです。

募集の手段としては、勿論他にも沢山あります。自治体が無料で掲載できるJOIN(一般社団法人移住・交流推進機構)の地域おこし協力隊サイトでは、地域によっては写真などを駆使して、様々な情報を掲載しています。

これもまた地域によってその内容の厚みに差があるのが一目瞭然です。
もっといえば、我々の経験からも、もっと内容を増やして掲載したほうがいい情報はまだまだあります。
例えば、入職した隊員をサポートする体制や仕組みに関する情報です。前述のA級グルメ連合のように、人材を育成する仕組みやプログラムがあれば理想的ですが、そこまででなくても「こんな人達がサポートするんだ」という顔ぶれが見られたりするだけで、大きな安心感になるはずです。

また地域の様子がわかる動画なども、情報としては有効です。やはり写真や文字だけで伝わらない雰囲気も、動画であれば伝わることも大いにあります。その土地の風土や文化、地域性などの情報もあればそれに越したことはありません。

そうした情報が網羅的に、且つかなり効果的に訴求できている募集記事があります。
それがこちらの鹿児島県沖永良部島(和泊町)の「シーフード・プロデューサー」募集です。

※募集は既に終了しています。

こちらもネイティブ.メディアで掲載させていただいた事例ですが、SNSでも数多くシェアされるなどして結果として十数万人にリーチし、やはり数十件を超える多数の問い合わせを実現しました。
その結果、やはり理想的な人材を獲得することができたという成功事例となっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。こうしたポイントがしっかり抑えられている募集と、そうでない募集との差は、誰の目にも明らかではないでしょうか。
何度もいいますが、地域おこし協力隊制度の活用度合いを見ていると、その地域の”本気度”の差としても見えてくるものがあります。応募者はそれを敏感に感じ取っているのです。

地域の様々な取り組みの核となる人材を確保できるかどうかは、今後ますます重要になります。
その中で、まずはうまく隊員募集ができるかどうかは、そのスタートとしてはかなり大切な取り組みのはずです。
「掲載したのに,なかなか応募がないな」と待っている姿勢だけでは、まったく埒が明きません。
その情報発信への取り組みについては、上記のポイントを把握し、他の地域の募集も参考にしながら、如何に効率的で効果的な募集につなげていくかを再考すべきではないでしょうか?

文:ネイティブ.メディア編集部

参考情報: 当メディアを地域おこし協力隊募集に活用してみませんか?

上記の記事中でもご紹介したとおり、当社はネイティブ.メディアの情報発信力を活用し、各地の地域おこし協力隊募集のご支援をしています。募集要項の掲載・情報拡散だけでなく、ミッションの整理や記事や募集要項の取材・編集・掲載、さらには人材選考のサポートなどを一括してお手伝いした事例もあります。資料請求だけでも可能です。ご興味をお持ち頂ける自治体及びご関係者の方がいらっしゃいましたら、是非以下のボタンをクリックし専用フォームからお気軽にお問い合わせください。