【しまね女子ブログ】 小坂まりえvol.2

かなりご無沙汰しての第2回。
雪に閉ざされた隠岐・海士町で書いています。現在2021年の12月27日です。
記事公開は新年ですので、公開直後にお読みいただいたとしても皆さまはもう睦月も半ばの世界にいらっしゃる。
遅ればせながら、2022年もよろしくお願いいたします。

さて新年、どうせなら島らしいお正月の話題を…とも考えたのですが、隠岐へ移住したIターン者ならではの年末事情を書き残しておくのも一興と思い、年末ネタでいきます。
時化る日本海を越えて本土へ渡らねば帰省できない私たち。
ゲームのような独特の大変さ(面白さ)があるのですよ。

(↑)これが我々の足、隠岐汽船のフェリー!(冬は高速船は休航中)

「帰る?いつ出る?」
これがIターン者の年末の合い言葉です。
島民は日常的に、島を脱出して本土へ渡るという意味で「出る」という表現を使います。例えば「最近、出とる~?」と言った場合、パチンコの話ではなく、最近本土へ遊びに行ってる?ということです。(応え方の例:「今日の午後便で出るよ~」、「やっぱりたまには出らんとやっとれんわて~」等々)

年末、今は新型コロナの状況により帰省の判断も難しいところですが、やっぱりIターン者は帰る人のほうが多いです。
そして帰省を望む者ならば大抵は、隠岐汽船の公式サイトの「運航状況」のページをチェックしています。原則朝6時半に更新されるので、その時間に合わせて見ます。(真冬の朝6時半は暗いし起きるの大変って?いえ、海士町では6時半キッカリに島民をたたき起こす大ボリュームの町民歌が防災無線で流れるので心配ご無用)

運航状況のページで分かるのは、その日と翌日の波の高さと、船が運航するかどうかの最新情報。
その日に乗船希望の場合は、乗りたい船が欠航していないか。
運航しているとしても波の高さはどうか。(←揺れそうなら覚悟を決める)
翌日希望の場合は、明日は出航しそうか。(←波が高くて欠航ぽいなら即判断で今日のうちに出る!と決めて至急準備)

最近は精度の高いお天気アプリもたくさんあり、風予報や波予報をいくつか見比べたりもするのですが…
結局決め手になるのは、隠岐汽船が船を出すか出さないか。
波が何m以上だと必ず欠航!とか決まっていないのがオモシロイ、いや難しいところです。

巷の噂では、「船長さんが強気な人だと波5mでも船は出る」とか「最近はどうやら守りに入りがち」とか…我々は勝手なことばっかり言ってます(笑)。また、2日連続欠航した場合、引き続き波が高くても「さすがに3日連続で止めないだろう。今日は多少無理しても船を出すはず(ニヤリ)」みたいな読みで出航に賭けることもままある。
逆に、「明後日に止めるつもりで、今日は多少無理してでも出すだろう(お見通しだよフフ)」とか。
これはもう自然との駆け引きではなく、隠岐汽船との駆け引き!!(笑)
(※個人的な感想です。)

以上のことは年末に限ったことではなく、年間を通じて直面する島事情です。
が、やはり冬、特に年末年始は海が時化ることが多いので欠航も頻発し、スケジュール通りに帰省するのはけっこう難しい。年末は運良く凪だったとしても、年明けは突然荒れて島へ帰れなくなったり、或いはひどく荒れてきそうだから予定前倒しで早めに島に戻ってくることになり実家の両親はガッカリ…とか。隠岐あるある。
そして多くの人の読みがかぶった場合、フェリーは激混みとなり難民キャンプ状態と化す。これも、隠岐あるある。

かく言う私も、30日に出るつもりですが「その日はヤバいって!」という島民情報により、29日のうちに出たほうがいいかもなと思案中。
(※後日追記。やっぱり安全策で29日に出ました。が、30日の朝のフェリーは高波に負けずに通常運航。「な~んだ、30日でもよかったじゃん…」という悔しさを口には出さず、「でも早めに出といて良かったよ、どうせめっちゃ揺れただろうしね!」と強がる。これも隠岐あるあるです。笑)

(↑)年末の大雪でご近所にカマクラ出現。海士町としてはけっこう降った

そんな感じでバタバタと帰省準備と大掃除で過ごす中、「出雲大社のお札、いかがですか?」という連絡が。
出雲大社菱浦教会の神主、榊原信也さんからでした。
そう、海士町には、かの有名な出雲大社の教会所がありまして、島では通称“大社さん”。私もときどき参拝に行きます。

(↑)雪が残る大社さん。12月ですがもう梅が咲いています

海士町の大社さんは菱浦という地区にあります。
この菱浦は、「怪談」や「知られぬ日本の面影」などの作者である明治時代のアイルランド人作家、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が愛した場所。明治25年(1892年)の夏に隠岐を訪れた八雲は、約2週間の滞在のうち延べ8日間を菱浦で過ごしたという話もあります。
入り江の静謐な佇まいが特に八雲のお気に入りで、鏡のように穏やかな海を「鏡ヶ浦」と称して愛でたそうな。それが現在の菱浦湾です。

(↑)現在の菱浦湾の様子。漁船が並んでいます

大社さんは菱浦湾から歩いてすぐ。八雲の滞在時(130年前!)にもあったので、きっとふらりとお散歩に来たんでしょうね。八雲が見たであろう拝殿は、当時の姿が現存する、海士町でただ一つの建物なんだそうです。

この神社の宮司である榊原さんは、島で唯一の印刷会社の経営者でもあり、海士町文化財保護審議委員、ふるさと案内人、隠岐島前神楽(県指定無形民俗文化財)の奏楽演奏者、詩吟の吟じ手と、マルチな才能で活躍しておられるスーパー神主さん。
私は島に移住した13年前からずーっと親戚のおっつぁんのような感じで公私ともに助けていただいており、「この人がいなかったら私は海士町を出てただろうな・・・」と思う恩人の一人です。
海士弁のやさしい語り口と笑顔に癒やされる。大社さんもだけど、榊原さんその人が私のパワースポット。

(↑)大社さんの拝殿内にて

御年70を超えておられますが、若者との交流に積極的で、発想が若々しくてピュア。型にはまらない考え方が素敵です。
そういえば移住1年目、大怪我(骨折)してしまい実家の近くで入院したとき、鯖が大好物な私が元気になるようにと、海士町の定置網でとれた大きな鯖を鮮度抜群のまま三重・鈴鹿の病院まで送ってきてくれたことがあったな・・・。病室のベッドに寝たまま生の鯖を拝んだ経験は忘れ得ません。(親がビックリしてました)
あと、神主なのに「クリスマスだから♪」と言って神棚をプレゼントしてくれたり・・・。
柔軟。カタいこと言わない。とにかくいろいろチャーミング(笑)

さて、海士町のオモシロ神主、もとい、個性派の神主さんと言えば、この人もです。
村尾茂樹さん。

(↑)秋晴れの某日、隠岐神社の鳥居前にて撮影

茂樹さんは、隠岐に四座ある名神大社(みょうじんたいしゃ。格の高い神社)の一つ、宇受賀命(うつかみこと)神社の宮司さん。
隠岐神社では禰宜(ねぎ)を務めておられます。(※宮司はお父様である村尾周さん)

話題豊富でプレゼン上手な茂樹さんはガイドもお得意。普段は後鳥羽院資料館の事務所におられ、来場者の館内ガイドをすることもしばしば。隠岐神社の周辺で、軽妙なトークで観光客の心をつかんでいる姿を見かけることもあります。

(↑)ガイド中。今よりちょっとお若い頃ですね!

実は、今回のブログを書くにあたり、茂樹さんにネタをもらおう♪と軽い気持ちで取材に行ってきたのです。
が・・・。「この島で神社ってどういう存在ですか?」という質問が悪かった。神主スイッチが入ったらしく、話の内容が深く濃く広がってとてもまとめきれなくなっちゃったので(笑)その件に関してはまた次の機会に書きますね。

今回は、茂樹さんイチオシのお店、「つなかけ」の紹介だけさせてもらいます。
つなかけは、隠岐神社の鳥居の真ん前にあるお店。海士町へ遊びに来た際には、ぜひ隠岐神社を参拝・散策したあと、つなかけで海士らしいパンやおみやげをゲットしていただきたいです♪

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《 お土産と手仕事のお店 つなかけ 》
「キンニャモニャまんじゅう」や「白浪(しらなみ)」などの定番みやげ、昔ながらの製法の「ときわベーカリー」のパン、島の若手クリエイターの手作り雑貨や隠岐神社関連グッズを販売。小さなイートインスペースもあります。店名の「つなかけ」は、お店の正面にある「綱掛の松」という史跡に由来。昔はこの辺り一面が海だったため、上陸するときに船の綱を掛ける松があったんですね。この豆知識はかなりマニアック!

■住所:〒684-0403 島根県隠岐郡海士町海士1521-1
■営業:8:30-17:00
年中無休(年末年始は除く。天候不良による臨時休業日あり)
■つなかけオンラインショップ:https://okiofusha.thebase.in
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ああ、また長々と。
年末に日本海を越える帰省の話から、神主さん紹介まで広がってしまいました。
師走のバタバタでとっちらかった私の心を反映するかのようで恐縮です。

でも気づいたのは、「あれっ、私、移住するまでは神主さんとこんなに親しくなかったよな・・・」ということ。
そうなんです。東京にいた頃は、神社とも神主さんともこんなに密な感じじゃなかった。でもこの島に来てからは、特に何もなくてもふらっと神社にお参りに行くし(神さまにご挨拶という感じ)、何かあるときは当然、気合いを入れてご祈願に行き、報告やお礼参りもする。神主さんへの質問や相談も(なんならサシ飲みやぶっちゃけトークも)ぜんぜん気負わずにできます。
近いんですよね、神さま界隈が。友達感覚で申し訳ないくらい。

なぜでしょうね。
小さなコミュニティで暮らしているので、神社や神主さんとの関わりが目に見えやすいというのもありますが、やっぱり隠岐という、自然に近い素朴な暮らしの中で、農業や漁業を生業とする島民も多く、神さまを信じる文化や伝統行事がふつーに残っているんですよね。みんなで神社を守っている感。そして神さまに守られている感。

地元の皆さんのそういう習慣や態度、考え方に触れ、とても心地よくて、私も同じような感覚になってきたようです。(特に海士町の場合は後鳥羽上皇という実在した人物が神さまとして祀られていることも関係あるのでは。上皇であり神さまなのに「ごとばんさん」って親しげに呼ばれていますし)

隠岐神社のご祭神は第82代天皇、後鳥羽上皇。(↑)雪の日(↓)夏の日

これって隠岐だけじゃなくて島根全体がそうなんじゃないですかね。
なんたって島根は神社だらけ。秋には「石を投げたら神さまに当たる」と言われるほど全国八百万の神さまが集まってこられる(神在月ね)、そんな土地ですから。
ありがたい。守ってくれると信じられる存在が増えたということはすご~く有り難し!と今は思ってます。
移住にともなう思いがけないカルチャーショックって色々ありますけど、「神さまや神社との距離が縮まった!」のは私にとって一生モノの幸運でしたね。

年の瀬に(すみません、私はまだ年末なもので)意外と大事なことを確認できたようで、嬉しいです。
今回は“たのくるしい”年末事情、ということで、帰省の船にまつわるアレコレをご紹介しました。が、たのしい、くるしい、だけじゃないですね。
島を出る前に神社に行き、「今年も本当に色々とありがとうございました!!」と神さまに御礼をするその瞬間は、「ありがたい」に尽きます。
たのしさ、くるしさとともに、ありがたさも満喫できる、島の年末です。

(↑)夕陽、島影、行き交う船。冬ならではのこの感じ、美しい…(寒いけど)

それでは皆さま、ごきげんよう。
改めて、2022年も何卒よろしくお願いいたします。
(抱負。新年はもっと短く書けるよう頑張りますっ!)

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(↑)稲穂と稲わらで作った亀さんにサンキライの実をのせて。これもフラワーアレンジ?笑

【名前】小坂まりえ
【移住市町村】隠岐郡海士町
【UターンorIターン】Iターン
【移住前の居住地】東京都(三重県出身)
【年代】40代
【お仕事】仕事はフリーランスでライター業をメインに編集やイラストなど諸々
【趣味】本とランニングとフラワーアレンジ。
島の植物を使ったリースやスワッグを作るのは至福の時間。
【Love shimaneとしてひと言】
島根の好きなところは、海が美しいこと、地酒が美味しいこと、人が適度に少ないこと、暮らしの中で神さまの存在を意識する機会が多いこと等々。

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