【しまね女子ブログ】 小坂まりえvol.6

そういえばIターンって、“風の人”なんて言われたりもします。遠くからやってくる人。
響きはカッコいいけれど、地元の人からしてみれば、土地に根付かずにいつか去る人という意味もあり…私はややネガティブなニュアンスでそう呼ばれた経験もあります。

 

移住者が多い海士町では人の出入りが激しくて、出会いと別れが頻繁にあります。卒業や転勤シーズンの春は特にそうです。

でも私はあまり寂しくなくて、どこにいてもゆるく繋がっていけるから大丈夫、という感覚です。
軽やかに来て鮮やかに去り、そしてまた来る。フェリーで発つ人を見送る島民の挨拶が、「さよなら~」ではなく「行ってらっしゃい!」であることが、すごく気に入っています。

 

ご存じの方もおられると思いますが、占星術の世界では今ちょうど時代の転換点にあたり、“風の時代”に入ったのだ、なんて言われています。ちなみに風の前は“地の時代”でした。

どんな変化が起きているかというと・・・(私は専門家じゃないのでざっくりした説明しかできませんが!)風の時代は、知性や情報、循環、個性、繋がりなどの目に見えないものがより大切になってくるそうです。これまでの、上昇志向や地位や名誉、経済的・物質的な豊かさに価値が置かれた地の時代とは一変し、より本質的なものへと人々の意識が向かうそうです。

 

・・・言われてみれば、ここ数年で、島でもさまざまな“風っぽい”変化を感じます。
大きな組織から抜け出てフリーランスになり、自分らしい生き方にシフトする人が増えました。(私もそう)
コロナ禍でリモートワークが進んだことを背景に、本土との2拠点生活に挑もうとする人がチラホラ出てきました。(私もそう)

そして、海士町複業協同組合という全国初の組織が誕生し、副業ならぬ複業、すなわちマルチワーカーという新しく柔軟な働き方が少しずつ浸透しつつあります。

定置網漁の現場に女性が。複業組合ができ、女性でも漁業に挑戦しやすくなりました。

さてここで紹介したいのが、海士町がキャッチコピーとして掲げている『ないものはない』です。
ないものはないは、「無くていい」と「ぜんぶ有る」のダブルミーニング。

都会みたいに溢れるほどのモノは無くていいだわい。本当に必要なものはこの島に全部あっけんな!無くて困るなら自分らで作りゃええだわい。知恵をしぼって有るものを活かすだわ!
・・・そんな生き方を、海士町では、ないものはないって表現してます。

 

例えば、私が好きでやっているフラワーアレンジ制作。島には花屋さんが無いので、使う材料は自分で育てた植物や、そのへんの野山で採ってきた植物、浜辺で拾った流木などがメイン。でもそれが楽しいし、工夫のしどころ。島にある素材の色や形を活かして、ないものはない「島リース」を作れたときには心がときめきます。

庭で育てたミモザだけで作ったリース。リースの土台は裏山の蔓。

海岸で拾った海藻をドライにして、脱色した松ぼっくりやダリアのドライフラワーと組み合わせました。海藻リースって珍しいんじゃないでしょうか?

最近仕事で取材した、島の某アーティスト女性は、「アートの制作も料理も、無いからこそ面白いのよ!」と言っていました。例えば一つの素材から幾通りもの型破りな使い方を考えつく。無いおかげでインスピレーションがわくと。

また別の女性は、初めて福祉の仕事に挑戦する時に、「自分には資格も経験も無いけれど、ぜんぶ現場にあるから大丈夫!いくらでも学べるわ」と。さらに、「私は専門家じゃないから知識が無くて分からないことばかり。でも多くの人と繋がって何でも教えてもらえるから、なんとかなる!」とも。

 

無いことを卑下せずフラットに受け入れつつ、妥協せず、「無いならどうする?」「自分にできることは何?」をしぶとく考え続けること。それが、ないものはない。
ですが明確な定義はないので、海士人はみんな自由な解釈で、ないものはないに含まれた多様なメッセージを受け取っています。

足るを知る、という言葉がありますね。それも、ないものはないの一側面です。足りないことに文句を言わず日常を楽しんでいるうちに、無くても平気になってきたり。本当に欲しいものがわかってきたり。「あれ?これで十分じゃん。なんならベストじゃん?」って気付いて、感謝の気持ちがわいてくる。すごくご機嫌な世界。

 

最初の話に戻りますが、今は価値観が変わってゆく節目。何が正解かますます分からないし、王道でもいいし逸れてもOK。どこでどう生きてもいい。何でもありなのが大前提になってきた風の時代だからこそ、自分が日々どんな気持ちでいられるかを大事にしたいです。

仕事でも暮らしでも、人間関係でも、自分が満たされるポイント=“ご機嫌さんでいられるツボ”をよりたくさん見つけることで、「たのくるしい(イタ気持ちいい?)」人生の中でも「たのしい」の割合をどんどん増やせますもんね!

私はこの島で、ご機嫌ツボを開発する人体実験をず〜っとしています(笑)。ある時は大失敗して激痛にのたうち回り(ひでぶー!!)、ある時は大当たりで恍惚となりながら・・・

海士で見つけた私のご機嫌ツボの重要な一つ。 「夏の夕方、友人と海へ行く」

ないものはないは、今をどう生きたいかを問う言葉です。
『映画館の、非常灯か、足元灯か』という例えで言うと、後者。目指す先は人それぞれですし、遠い出口よりも足元を見つめて確実な一歩を踏み出すほうが大事ですもんね。自分は何が好きで、私が豊かさを感じるのはどんな人生か、はっきり知っていたら生きるのもラク~。

材料は庭のミモザ、ユーカリ、エリカ。あとは私の、春到来を喜ぶ気持ち。ないものはない「島リース」作りこそ、私の最大のご機嫌ツボ。海士で出会えたライフワーク。

もしいつか私が島を出たら、その後の私にとって海士は、ないものはないの聖地みたいな存在になるのかも。何かに煮詰まって、原点回帰が必要~!ってなった時に必ず聖地巡礼する、みたいな。そしてそのとき私はきっと、「ただいま~」って言うんだろうと思います。

 

ではでは、これにて最終回です。
6回にわたり、私と海士町の“たのくるしい”話を聞いてくださり誠にありがとうございました!

 

海士町のないものはないにご興味をもってくださった方、海士町公式の「ないものはないサイト」を是非のぞいてみてくださいね。
何かお役に立てる、ちいさな足元灯が見つかるかもしれません♪

★ないものはないサイト⇒ https://naimonowanai.town.ama.shimane.jp

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【名前】小坂まりえ
【移住市町村】隠岐郡海士町
【UターンorIターン】Iターン
【移住前の居住地】東京都(三重県出身)
【年代】40代
【お仕事】仕事はフリーランスでライター業をメインに編集やイラストなど諸々
【趣味】本とランニングとフラワーアレンジ。
島の植物を使ったリースやスワッグを作るのは至福の時間。
【Love shimaneとしてひと言】
島根の好きなところは、海が美しいこと、地酒が美味しいこと、人が適度に少ないこと、暮らしの中で神さまの存在を意識する機会が多いこと等々。