「真室川らしさって何?」と訊かれると、「昔ながらの雪国の暮らし文化が暮らしの中に息づいていること」と答える、真室川暮らし8年目の梶村です。

そんな「昔ながらの雪国の暮らし文化」に食に関することが多いのは、降り積もる雪に閉ざされて食糧を調達できない冬を、どうやって命を繋いで乗り切ろうかと知恵を巡らせた時間が長かったからなのかもしれません。
たとえば、農家が種を採り伝えてきた伝承野菜の栽培、山菜やキノコ等の山からの食糧調達、保存食の加工、そしてこれらを使い手間ひまかけて作る郷土料理の数々。派手なところは一つもありませんが、優しくて心も身体も喜ぶ大切な食文化です。

ふるさと学習や食育の場面で、小中学校ではよく伝承野菜のことを勉強する機会を設けています。しかし、こうした食文化を次世代に残せるかと言えば、楽観視できない現状があります。
例えばこんな課題があります。
〇伝承野菜:元々農家が自給用に作り続けてきた歴史があるため、栽培量が少ないことからお金に換えるチカラが弱い→自給用のままでは次世代への伝承が不安なのでお金に換える力を強くすることで、生産者も生産量も確保したい。
〇保存食:保存食に加工するのにも料理するのにも手間と時間がかかり、若い人は敬遠しがち。今どきスーパーに行けばなんでも買える。しょっぱい。茶色い。作り手が減っている→手間ひまがかかることをポジティブに変換したい。作り手を確保したい。

これらの課題を一挙に解決できる方法はないのかもしれません。けれど、ビジネスによって小さくても経済循環を生み出すことができれば、生産者の確保につなげていくことができるのではと考えています。
そこで、食ビジネスを立ち上げることを目指して本プロジェクトにより、おはぎ店の立上げメンバーを募集します。

おはぎ屋の立上げメンバーとして活動しながら、町の食資源に触れる1年目

本プロジェクトでは、自ら食ビジネスを立ち上げたい方、もしくは盛り上げたい方を募集します。

地域おこし協力隊員として町から任用されることから、最大3年の任期を活かしてご自身が実現したい仕事と暮らしを作る活動を行っていただきたいと考えています。
そのため、たとえば任期1年目は町の食資源や市場環境などを知る「地域発見期間」、2年目はご自身が任期後に実現したい仕事について模索する「検討期間」、3年目は独立に向けた準備を行う「準備期間」として実証実験を行うという風に段階的に活動を行うのはいかがでしょうか?

1年目の地域発見期間は、弊社一般社団法人が立ち上げを予定している「おはぎ屋」で、菓子製造や販売、宣伝、店舗経営、食材生産者との交流や援農などに従事していただきたいと考えています。
(任期終了後もそのままおはぎ屋に就業したい方は、2年目以降も引き続きおはぎ屋で活動していただきます)

私たちの「おはぎ屋」では、地域の食材にこだわった手作りおはぎ(ぼた餅)を提供します。
おはぎに使う予定の地域食材は次の通りです。
*あずき(生産量が少ないため全量町内産は難しそう)
*くるみ(保存も効き、郷土料理にも大活躍する自生の沢胡桃を用います)
*きなこ(伝承大豆「黒五葉」を煎ってきなこにします)
*ずんだ(農家さん5人が立ち上げた農事組合法人さんから枝豆を仕入れます)
*ささぎ(伝承野菜「七夕白ささぎ」というインゲン豆で白餡にします)
*もち米(町の米作り名人親子などから仕入れます)

でも何故おはぎなのか。
それはお料理名人のKさんがこしらえた「くるみ餡のおはぎ」を振舞ってくれたことに始まります。
あまりにも美味しくて「どうやって作るの?」と尋ねると、返ってきたのは「まず9月ごろに沢胡桃の木の下で草刈りをするのよ」というエピソードから始まる思いのほか長いストーリーでした!笑
草刈りをしておくと、秋のお彼岸の頃から落ちてくる胡桃の実を見つけやすいのだそうです。拾ってきた胡桃の実は土の上で果肉を腐らせる→水で洗って殻を天日に干して保存→→→と幾つもの行程を経て目の前のおはぎが完成したのだと知ると、おはぎがより一層美味しく感じられる不思議に私たちは衝撃を受けたのでした。
それ以来、東京の若者たちも地元の女子高生ご一行も、案内すれば皆がみな絶賛するKさんのくるみ餡のおはぎに可能性を感じずにはいられませんでした。

おはぎが大好きな土地柄(最上地域では「ぼた餅」と呼ぶ方が馴染むようです)もあり、おはぎというコンテンツで地域の食材や食文化を発信するとともに、地元の生産者から食材を仕入れることで経済循環を生み出していきたいと考えています。

お料理名人のKさんが沢胡桃の殻を割っているところ

お料理名人のKさんが沢胡桃の殻を割っているところ

試作したおはぎ(左:沢くるみ餡、右:伝承大豆黒五葉きなこ)

試作したおはぎ(左:沢くるみ餡、右:伝承大豆黒五葉きなこ)