《都市と地方をかきまぜる》

これが、11年前に私が東北の被災地から掲げた日本社会の答え(ビジョン)だ。そしてこの11年間、全国各地で車座集会を重ね(現在1270回)、答えに共感してくれる仲間を増やしてきた。

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(全国各地に足を運び、のべ1000回以上行ってきた「車座」)

一方で、大きな限界も感じてきた。過疎で先細りの一途にある地方の農山漁村に残された時間はもうわずかだと現場を歩いていて感じてきた。今のスピードでやっていたのではとても間に合わない。だから、もっともっと仲間を増やし、目指す社会の実現に向かうスピードを上げるしかない。

その手段として、私が代表を務める会社、雨風太陽はインパクトIPO(上場)に挑むことにした。社会に良いインパクトを与える会社として上場する、つまり経済性と社会性の両立を目指す会社になる。

世界では今、企業価値を測る方法として、ESGが大きな潮流になっている。

業績や財務状況などの経済指標だけでなく、環境や社会問題への取り組みも加味された上での企業価値で、Eは環境(Environment)、Sは社会(Social)、Gは企業統治(Governance)の頭文字から取ってきている。

日本はこの世界的潮流から大きく立ち遅れている。また、大企業のESGを眺めると、客観的に数値化しやすい「脱炭素」と「女性役員登用」が目立つ。EとGだらけ。これらは詰まるところ、機関投資家向けの指標ということだろう。

問題は、Sがガラ空きになっていることだ。それもそのはずで、社会課題は客観的な数字の指標を置きにくい。だからこそ、インパクトスタートアップの出番だと思う。

そもそも、今の日本社会は誰の目にも明らかな社会課題は解消され、全体から取り残された課題か、この閉塞する社会が次にどこに向かうのかの目標の欠如しか残されていない。

となれば、課題の設定は主観的にならざるを得ない。社会起業家は、自らの主観で社会に課題を発見して起業したのだから、社会起業家の数だけ指標があっていいはずだ。

主観で示したこの指とまれ!に、個人投資家が(生産者や消費者など)が呼応し、一緒に社会課題を解決していく流れをつくる。雨風太陽はその先陣を切り、独自の指標を設定し、数値化し、公表し続けるという国内では前代未聞の方法で、日本初のインパクトIPOに挑戦する。

スペインの哲学者オルテガは、20世紀を通じて世界中で進行してきたのは、人々が自らの生をすべて国家にアウトソーシングして委ねてしまう『生の国有化』だったとの論を展開した。

確かに、近代化は人々の生存生活に必要な条件を最速で整える道だった。同時に、それは社会的自発性を国家に吸収されていく過程でもあった。

かくして社会課題は自分たちで解決するのではなく、国や自治体がやってくれるものだとなり、当事者意識が削がれていくことにもなった。

21世紀に入り、国もない袖は振れないから「地方自治体よ自立してくれ」、地方自治体も首が回らず「住民よ自治の時代だよ」と言い始めた。しかし現実には、観客民主主義が跋扈し、地方も住民も自立し切れずにいる。インパクトスタートアップの意味は、まさにここにこそある。

岸田政権は、看板である”新しい資本主義”の一丁目一番地として、インパクトスタートアップの支援強化を打ち出している。つまり、これまでは行政がやってきた社会課題解決を、これからは民間の活力で担っていってもらいたいというメッセージである。

これは民間の側から見れば『国有化された生』の奪還ということになるし、国の側からすれば『国有化した生』の返還になる(令和の『大政奉還』!)。

それは、私たちが自らの人生や暮らしの主役の座に座り直すことで、喪失してしまった”生きるリアリティ”を再生することそのものではないだろうか。

思えば、12年前に地方政治から社会起業の世界に転身し、それからNPO法人、一般社団法人、株式会社と手段を変えながら、都市と地方の分断という社会課題を解決するインパクトの最大化をその都度、仲間たちと試行覚悟しつつやってきた。

今回のIPOは、そのインパクトの極大化の最善の方法として選択した。そのことをこれまでご縁があった仲間たちや関係者のみなさんに直接宣言したい。そう思い、6月17日に東京の竹芝で決起集会ならぬ、「都市と地方の未来会議」を開催します。

この11年間、食べる通信からポケマルに至るまで、生産者と消費者を直接つなげる取り組みに様々な形で参加してくれたみなさん、関わってくれたみなさん、支えてくれたみなさんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

書くことと、話すことと、歩くことと、しつこさくらいしか能がないこのデクノボーが、ここまでやってこれたのは、ただただみなさんのお陰しかありません。

是非、これまでの感謝の気持ちと、次のステージへの挑戦への決意を、僕自身の生の言葉で直に伝えたいので、ご都合が合えば是非いらしてください。

都合が合わない方は、是非、周りの方にお広めいただける形で応援してくれるとうれしいです。


◆「都市と地方の未来会議」

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