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【福島県・移住体験ツアーレポートin富岡町&大熊町】ふくしまの笑顔とあなたの未来を重ねる旅

2023年11月3日(金)から5日(日)の2泊3日で、富岡町と大熊町を巡る移住体験ツアー「ふくしまの笑顔とあなたの未来を重ねる旅in富岡町&大熊町」が開催されました。この記事では、3日間のツアーのうち富岡町を訪問した11月5日(日)の様子をご紹介しながら、富岡町の暮らしや参加者のみなさんの声をお伝えします。

富岡町ってどんな地域?

富岡町は福島県沿岸部の中央に位置し、公共機関や商業施設が集まる双葉郡の中核的な役割を担う町です。積雪は少なく、四季を通じて暮らしやすい温暖な気候が特徴です。

東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故により避難指示が出されましたが、2017年4月に帰還困難区域を除いた地域で避難指示が解除されました。その後も、除染を終えた帰還困難区域の避難指示解除が段階的に進められており、2023年12月時点で町面積の9割以上で居住が可能になっています。

■富岡町の概要
https://mirai-work.life/city/tomioka/

ワイン用ブドウの圃場で作業を体験

ツアー3日目となったこの日は、富岡町でワイン用ブドウを栽培する一般社団法人とみおかワインドメーヌ(以下、とみおかワインドメーヌ)からスタートです。

とみおかワインドメーヌは震災後の2016年にブドウ作りを開始し、2024年夏にワイナリーのオープンを予定しています。案内してくださったのは、統括責任者の細川順一郎さんです。細川さんも移住者で、日本ワインの本場・山梨県のワイナリーで栽培から醸造、マーケティングまで経験したのち、富岡町にやってきました。

まずは、敷地内にある展望台へ。眼下にはブドウ畑が広がります。

ここで育てるブドウは潮風がストレスとなることで皮が厚くなり、仕込んだワインは豊かな味わいになるのだそう。「常磐もの」の白身魚に合わせるため白ワイン用の品種が多く作られている

細川さん「現在、富岡駅の目の前に約3万3,000平方メートルのブドウ畑が稼働しています。富岡駅は常磐線の特急ひたち号も停車する駅ですが、ブドウ畑を整備する以前は荒れ地状態。ワイン用のブドウを植えることによって新しい景色を作っていこうと地権者にかけ合ったり、富岡町から土地を貸してもらい、畑の整備を進めました。今後、畑をさらに拡大させ、5年後には駅北側の常磐線沿いのエリアもブドウ畑に変わる予定です」

とみおかワインドメーヌには、2016年からの7年間でのべ750人もの人がボランティアに参加しているのだそう。「震災後に失われてしまったコミュニティを元に戻すのは難しいですが、僕たちの活動を通してコミュニティを再形成し、震災前以上に賑わうまちにする。そこが私達の取り組みの一番大事なところだと思っています」と細川さん。ボランティアを通してつながりが生まれ富岡町へ移住した方も10人いらっしゃるといいます。

ツアー当日はブドウの収穫が終わった後でしたが、収穫後もまだ仕事はあります。参加者のみなさんは、100mほどの長さがある圃場の獣害防止用のネットを苗から取り外し、来季のためにまとめる作業に挑戦。声を掛け合いながら作業を進めました。

夜ノ森駅周辺をまちあるき

続いて向かったのは、常磐線の夜ノ森駅。駅周辺にお住まいで今回のツアーに帯同してくれた、富岡町の移住相談窓口とみおかくらし情報館の辺見珠美さんの案内でまち歩きです。まずは、駅西側にあるリメークデニムの専門店YONOMORI DENIMへ。店内にはリメーク品の制作会社から取り寄せたジャケットやズボン、バッグ、エプロンなどが並びます。避難でバラバラになった人たちをデニムでつなぐという思いが込められたお店です。

デニムで作られたバングルを購入して記念撮影

続いて、2023年春に避難指示が解除されたばかりの夜ノ森駅東側を歩きます。このあたりは家屋の解体が進んでおり、更地が多いエリアです。「双葉郡の中心的な商業施設・さくらモールとみおかまでは車で10分なので不便は感じません」と辺見さん。たまたま通りがかった辺見さんのお知り合いからお話をうかがったり、住人を募集している貸家をのぞいたりしながら歩みを進めました。

夜ノ森駅から10分ほど歩くと、2023年8月にオープンしたバウムクーヘン店BAUM HOUSE YONOMORIに到着しました。ここでは富岡町産の米粉を100%使用したバウムクーヘンを販売しており、試食もできます。お土産として購入されていく方も多くいらっしゃいました。

この夜の森地区にある「夜の森の桜並木」は、福島県を代表する桜の名所として有名で、毎年桜まつりが開かれています。色づき始めた秋の桜並木を写真に収めて、次の目的地へと向かいます。

ランチタイムは、富岡駅前にある富岡ホテルです。ここはワインドメーヌから1.2kmほどの距離ということもあり、ボランティアで訪れる人も多く宿泊するのだそう。仕事で1~2ヵ月長期滞在するお客さんも多いそうです。フロント業務を中心に求人募集もしています。

2017年に開業した富岡ホテル。シングルルームはきれいで快適に過ごせそうです

移住後の暮らしをイメージできるお試し住宅

続いては、富岡町移住相談窓口「とみおかくらし情報館」に併設する、富岡町お試し住宅を見学しました。震災の5年前に建てられた2階建てをきれいにリフォームしたもので、最大4泊5日まで利用可能。滞在を通して町での暮らしを体感することができます。

滞在の条件は、移住体験プログラムを受けること。地域を熟知したスタッフが利用者の相談内容に合わせて、より具体的に町の暮らしを知ることができるプログラムを用意してくれます。「先輩移住者に会いたいという方にはご紹介しますし、お子さんがいれば子どもの遊び場もご案内します」と辺見さん。移住を決める前にクリアにしておきたい悩み事を相談する機会にもできそうです。

富岡町お試し住宅の詳細はこちらの記事をご覧ください。
https://mirai-work.life/magazine/1740/

2泊3日を振り返りながら意見交換

続いて訪れたのは、双葉郡の情報発信拠点ふたばいんふぉです。民間団体の双葉郡未来会議が運営している施設で、双葉郡8町村の情報が写真やパネルなどで紹介されています。コワーキングスペースとしても利用できます。

まずは、福島12市町村移住支援センターの徐銓軼さんが、震災直後に福島に移り住み、センターで移住支援に携わるまでの経験を語りました。「いつか中国に帰る可能性はありますが、福島をきっかけに経験した無数の出会いは一生の宝物。少なくとも、みなさんが喜んで福島に移住してくれるまでここに居続けたい」と話しました。

参加者のみなさんは3日間のツアーの振り返りに入ります。ツアー初日に掲げた意気込みを読み返しつつ、印象に残ったこと、参加前後の気持ちの変化、今後の福島12市町村との関わりでどんなことができるか―について意見交換をしました。富岡町と大熊町を実際に巡ってみてどんなことを感じたのでしょうか。

参加者の声をご紹介します。

「この2泊3日で移住を決めることはできませんでしたが、お試し移住やボランティアで関わり続けられるという選択肢があることがわかったし、自分が行動するためのサポートがたくさんあることに気づけました」

「最先端のものが集まる土地で子育てしてみたいという思いがあります。お試し住宅を利用しながら大熊町の『学び舎 ゆめの森』の見学に行ってみたいです。看護師の仕事をしていますが、医療と美容をかけ合わせたお店を作りたいです」

「移住支援制度の充実度に驚きました。一方で、理想と現実が離れていることも感じて、移住は冷静に慎重に決めることが大事だとわかりました。早く家に帰って家族に相談したいです」

このほかにも、「この地でやりたいことを見つけた先輩移住者が印象的だった」「秋でも過ごしやすいのが意外だった」「地域のイベントに足を運びながら移住を考えたい」などの意見が上がりました。一部の参加者からは、移住に関する情報交換をするLINEグループを作りたいとの声も出ました。

まとめ

1日目の大熊町では、情報発信やイベントの拠点となっているKUMA・PUREや、いちご工場のネクサスファームおおくまの訪問を通して、“ゼロからのまちづくり”に携わる町民の声や新しい産業の芽吹きに触れました。2日目は東日本大震災・原子力災害伝承館や就職先候補地を訪問し、ワークショップを通じて震災・原発事故からの復興の流れを感じました。参加者のみなさんは、大熊町で講話をしてくれた佐藤亜紀さんや、富岡町を案内してくれた辺見珠美さんら先輩移住者の体験談からも、双葉郡の暮らしをイメージすることができたようです。

2023年度の「未来ワークふくしま移住体験ツアー」は3月まで月1回開催予定です。

詳しくはこちらからご確認ください。
https://mirai-work.life/lp/tour2023/

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです
文・写真:五十嵐秋音

※本記事はふくしま12市町村移住ポータルサイト『未来ワークふくしま』からの転載です。

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