北陸、石川県にある小松市は東京・大阪・名古屋の3大都市圏からほぼ等距離に位置する、人口約10万人の地方都市。市内には日本海側最大の小松空港があり、国内線と国際線が就航している。さらに地上にはJR特急列車が停車する駅があり、2024年には北陸新幹線の駅も開業予定の、アクセス抜群のまちだ。

市内はクルマで30分圏内の身近さに海、山などの自然はもちろん、ショッピングモールや学校、図書館、病院、子どもたちの遊ぶ施設も多い。全国的に見ても、安心・快適・利便など全ての指標のバランスがよい、優れたまちとして評価され「住み良さランキング」で全国8位を獲得(出典:東洋経済新報社「都市データパック2020年版」)。「多様な働き方が可能な都市」として第1位にも選ばれた(日本経済新聞と東京大学の2021年調査結果)。テレワークや二拠点生活にも適した、住みやすいまちと評価が高い。

子育て支援にも力を入れており、妊娠時に「おなかの赤ちゃん給付金」を支給。2022年からは「赤ちゃん紙おむつ定期便」として自宅に直接無料でおむつを届けている。物資支援というだけでなく、見守り訪問を行うことによって、子育てに対する心配や不安を和らげてもらう目的だ。

さらに小松市はなんと「待機児童ゼロ」。本当の意味で働く親に優しいまちだともいえるだろう。そこで今回は、こども園を運営している園長先生ご夫妻にお話を伺った。

20年過ごした東京から小松へ

園児の増加に伴い、増築を繰り返しているこども園

小松市吉竹町にある「吉竹福祉会」は、小松市内にこども園を3つ、津幡町に3つ、さらに学童保育も運営している社会福祉法人。よしたけこども園は1982年に⺠家の⼀部を改装して6人の園児からスタートし、定員330人まで巨大化し、その後に園を増やしてきた。大規模クラスを超えて最大規模クラスで、これより定員の多い保育園は数園しかないはずだ。

園内のトンネルを抜けると、笑顔の子どもたちが迎えてくれた。皆が「こんにちは」「誰かな?だあれ?」と言いながらもハイタッチや挨拶をしてくれる。自分からきちんと声をかけられる子どもたちが、のびのびと過ごしている。

子ども目線で作られた快適な園内

「良い園があると、人口が増えると先代が言っておりまして、この地域にはもともとの住民だけでなく、転勤してきた方も増えていますね」と語ってくれたのは、園長である長戸康英さん。小松市出身で中学、高校は金沢へ通い、その後東京の大学へ進学。20年ほどを過ごしてから園の運営のために小松へ戻ってきた。

東京で知り合い、小松へ戻ってきた長戸園長と奥さまである副園長

その頃出会った奥さま(副園長)は千葉県の出身で、ほぼ東京で暮らしてきた。2人が結婚する時点で、いずれは小松へという気持ちがあり、10年ほど前に小松へ戻ることとなった。奥さまに当時の状況をお聞きした。

「その時子どもは1歳と3歳でした。小松には知っている人が家族しかない状況なので、最初は心細かったんです。でも職員の先生たちも含め、小松の人たちが丁度よい距離感で本当に優しくてほっとしました」

小松で生活するためにクルマの免許を取得したそうだが、道路も広くて運転もしやすかったそう。東京では、自転車の前と後ろに子どもを乗せて登園する親も多く、雨の日などの朝は本当につらい。

「それに比べると、小松はクルマに乗せてどこへにも行きやすく、渋滞も混雑もほとんどないです。とても生活がしやすくなりました。3人目が今まだ年中でして、石川県立航空プラザが大好きでよく行きます」

小松空港の北側に位置する、日本海側では唯一の航空博物館 Ⓒ(一社)こまつ観光物産ネットワーク

住み心地のよい小松で、園の仕事もスタート。大規模園をいくつも運営する吉竹福祉会は、どのような園なのか。

 

自然に恵まれた環境下での保育

「愛されているという思いを育てましょう、思いやりの心を育てましょう、多くの良い経験をさせましょう、という3つを保育目標としています。まずは、自分が大切に愛されている存在なんだなとわかる。そうすると、隣にいるお友達にも思いやりの心が生まれてくる。愛情が満たされた子どもは、いろんなことにチャレンジしていくようになる、というふうにつながっています」

また、保育者側としては “かわいがりましょう。そうすればやさしくなります”を合言葉とし、それをモットーに子どもたちへ愛情を注ぐことを大切にしているそうだ。月に4時間程の研修も行い、園全体で保育の向上に努めている。

「ここは自然にも恵まれているので、子どもたちは常に遊びながら学びがある環境です」

園の近くには「憩いの森」という自然豊かな公園がある。一年中草花や野鳥が見られ、100メートルの橋が架かる静かな池があるなど、ゆっくりと過ごせる場所だ。

「梅の実がなる時には、子どもたちとそれをとって梅ジュースや梅シロップなどを作ります。田んぼにオタマジャクシがいるのを見たり、夏に段ボールを持って行って芝生を滑ったり。年長になると意欲を掻き立てられるようなちょっとした崖があって、小さな傷を作りながらもそれをクリアする達成感など、園内だけでは決してできない経験も多いです」

ごく日常の中にその環境があるのはうらやましい限り。とはいえこの辺りは普通の住宅街でもあり、近くに星付きレストランがあるなど、充実した住環境。ここで育つ子どもたちだからこそ、生き生きしているのだろう。

たくさんの子どもたちを見てきたご夫妻に、小松での子育てについて感じることをお聞きすると「多様性ですかね」と園長が言った。そうよね、と副園長が隣で大きく頷づく。

落ち葉を拾って作った、子どもたちのかわいい作品が廊下に並ぶ

子どもたちにおける多様性とは

「僕たちは2人とも、中学から受験組なんです。小学生の年代はやはり親の意向が強いので、そういうものかと思っていましたが、今自分の子どもたちのことを考えると、正直のびのびと育って欲しい。受験以外に経験させてあげたいことが、たくさんありますから」

東京で子育てをしていたら、周りの環境にも影響され、恐らく塾に通わせ、中学受験をさせ…という自分たちと同じように育ててしまったかもしれない、とご夫妻は言う。しかし、小松ではごく自然に小学校の子どもたちがそのまま同じ中学校へ通う。その中で自分らしく勉強をし、進学をして地元の優良・有名企業に就職もできる。

小松市は2018年に公立の小松大学を開学した。石川県の南加賀地域では初めての4年制大学。地元で大学に通い、そして地元の多くの優良企業で就職して大人になっていくという過程が整っているのだ。

とはいえ、当然ながら園長夫妻のように、中学受験をするという選択肢もあり、市外へ出ていく子どもたちもいる。

「それぞれ誰もが、自分なりの幸せを追求できるまちだと思います」

ご夫妻のお子さんたちも、勉強以外に週5でスポーツをさせているという。「東京にいたら、それが週5で塾になっていたかもしれません。小松で子育てすることによって、子どもに色んな経験をさせてあげられるので、今だけでなくこれから先も含めて、人生が豊かになったのではないかなと思っています」と副園長は、母の顔で語った。

 

取材を終えて部屋を出ると、子どもたちの歌声が聞こえてきた。発表会に向けてちょうど練習しているところだそうで、澄み切った可愛い声が園に響く。その笑顔は、まるで小松の未来を示唆するかのように輝いていた。

 

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