2024年2月17日、福島県田村市都路町にて「手作りレトロ結婚式」が執り行われました。田村市に移住した新婚さんご夫妻を、地域みんなで作り上げる昔ながらの結婚式でお祝いしようという試みです。準備段階から地域のたくさんの方が関わり、当日は沿道にも150人以上の方が祝福に訪れ、大盛況となりました(当日の様子はこちら)。今回は結婚式の会場となった「よりあい処華」の今泉富代さんと、主役の佐々木馨さん・美歩さんご夫妻に、都路手作りレトロ結婚式を振り返っていただきました。

結婚式を企画したお一人、「よりあい処華」の今泉富代さんにお話を伺いました。

なぜ都路手作りレトロ結婚式を開催することになったのでしょうか?

今泉さん:隣の葛尾村で開催された昔ながらの結婚式のポスターを見て、「田村市や都路町でもやりたい」と思いました。近隣の協力者の方とも意見が一致し、頻繁に田村市役所やメインスタッフとミーティングを重ね、結婚式を開催しました。新郎新婦は早い時点で決定していたので、大枠はスムーズに決まりました。細かい役割や人は徐々に連絡を取り合い、地域の方々にご協力いただきました。

今泉さん:結婚式の司会役も、早い段階で新町の行政区長さんが候補に上がり、司会役のことをご相談したところあっさりと承諾していただきました。司会進行における原稿を作っていただいたり、花嫁行列の際に新郎親族が花嫁を迎え入れる「橋渡しの儀」に使用する橋を制作していただいたり、アイデアもたくさん出していただきました。式の前の晩は一睡もできなかったって言うから、責任感が強かったんでしょうね。

今泉さん:公民館や行政局もある中で、「昔ながらの」というテーマに合う古民家ということで「よりあい処華」(以下、華)を会場に開催することにしました。結婚式を家でやるということで、器やお膳、食事など、できるものは全て家で準備しました。着物は神奈川県茅ヶ崎の来恩寺さんからご支援いただきました。来恩寺さんは無報酬で学校に花を置いたり、震災をきっかけに地域に入って地域のお手伝いをしたりといった活動をされているそうです。着物も車で、届けていただきました。

千本杵で餅つき。結婚式での餅つきは、皆で取り組み、お米1粒ずつが1つにまとまることから「みなさんとのご縁をしっかり結ぶ」「家族・縁の融合」いった意味合いがある (※左から、田村市長、新郎友人、新郎、新婦)

式当⽇、執り行ってみていかがでしたか?

今泉さん:当日の準備は大変でした。どういう人に頼むかによっても準備の状況は変わってくるしね、やっぱり地域の人がこぞってやらないと。200人近くの一般のお客様が見物に来られ、振舞い(もてなし)のために八升のもち米を蒸しましたが足りないくらい。振舞い担当の人は時間に追われて大忙しでした。結婚式料理を作る台所担当の人は、式の様子は見られませんでしたが、ちらりと見て状況を把握しながら料理の準備をしました。結局忙しくて、食べたり喋ったりする暇がありませんでした。式の後、参列した皆さんが料理をきれいに食べておられて、作り手として嬉しかったです。ほかにも「こうなるだろうな」と想像を巡らせたり、花嫁さんのことばかり考えたり、お天気を考えたり…気ばかり焦っていました。

「都路村史」を参考に都路で古く昔から受け継がれる結婚式料理を再現

今泉さん:「やりたい」という思いで始め、いろいろと大変でしたが、再現できたことは夢のようで大満足でした。沿道で見物していたおばあちゃんが、花嫁行列を見られて大変喜んでいて、テレビの取材も受けていました。

⼦ども達や若い世代の方々、田村市への移住をお考えの⽅々に、どんなことをお伝えしたいですか?

今泉さん:手作り結婚式ということで、いろいろな方々のご協力で開催できました。こういった結婚式を次世代に繋げていきたいです。無理だわーと思わず、地域を巻き込めば現代でもできることですし、手作りならお金もあまりかけずにできます。実際にかかった費用を可視化し、やりたいと思う若い世代の方にも再現してほしいです。

今泉さん:華には器やお膳もあるし、そのまま貸し出しもできます。私たちもお手伝いできることがあれば、縁の下の力持ちとしてサポートしていきたいです。一度で終わらせず継続的に開催できれば、田村市の魅力の一つになると思います。手作り結婚式に限らず、やりたいと思うことをなんでも実現化してほしいです。

新郎の佐々木馨さん、新婦の美歩さんに、お話を伺いました。

なぜ都路手作りレトロ結婚式に参加されたのですか?

馨さん:田村市のご担当者から、地域振興や子どもへの文化継承、移住者を迎え入れる、住民参加で作り上げるといった企画趣旨をお聞きし、非常に素晴らしい取り組みだと共感したためです。自分たちの役回りを聞いてからは正直少し戸惑いましたが、取り組みが成功するならと思い、ご協力させていただきました。

美歩さん:主人から話を聞き、素直にとてもワクワクしたことが参加の最大の理由です。私たちは移住後に田村市で婚姻届を提出しました。(私の旧姓と同じ苗字の方に婚姻届を受け取っていただいたのも、良い思い出です!)私たち夫婦にとって田村市は大変思い入れのある地になったのですが、結婚式は両親の希望などもあり、主人の出身地である岩手県で挙げました。結婚式は人生で一度きりと思っていますし、「田村で何か記憶に残るようなことができなかった」と少し心残りがありました。だからお話を聞いた時、大好きな田村市でまた結婚式を挙げられるということがとても嬉しく、ぜひ協力させていただきたいと強く思い、参加させていただきました。

話し合いやリハーサルといった当日までの準備において、どのようなご感想を抱かれましたか?

馨さん:嬉しかったのは、地域住民の方が積極的に、期待して準備に取り組んだり、話し合ったりしていたこと。話し合いの回数を重ねるたびに、一人またひとりと協力者が増えていったことや、住民の方が楽しそうに話題にしていることも嬉しかったです。「手作り」と聞いていましたが、どんどん本格的な企画になっていったことには驚きました。また、地域の昔の風習や作法を聞かせていただけて学びになりました。この点は特に、準備期間から関わらせていただいたおかげと思っています。

美歩さん:一番嬉しかったことは、想像以上に、地域の方々が喜んで私たちのために色々考えて準備をしてくださったことです。事前に衣装合わせをした際も、本当のお母さんのように「こっちの衣装の色の方が似合う!」と言ってくださったり、たくさん写真も撮ってくださっていて、すごく嬉しかったです。まだ移住して年数が浅いのに、こんなに親身に本当の家族のように接してくださるって、なんて素敵なんだろうと感動しました!

主役として迎えた当日の結婚式、いかがでしたか?

馨さん:普段は正直言って人通りが少ない都路町古道の通りに、人だかりができていました。まさに地域のにぎわいを創出していたことが目に見えて分かり、いち協力者として非常に嬉しく、同時に誇らしかったです。

美歩さん:リハーサルの時に「当日はたくさん人が見に来るよ!」と教えていただきましたが、全く知らない夫婦の結婚式にそんなに人が来るかな?お世辞じゃないのかな?と、正直半信半疑でした。しかし当日、衣装を着て室内で待機していると、外にたくさんの人が集まっていました。カーテンを開けて外を見ると、すごく喜んでくださったり、写真を撮ってくださったりして驚きましたし、非日常的な感覚がありました。岩手で結婚式を挙げた際はコロナ禍明けということもあり、家族と数名の友人だけを招待した少人数の式だったので、こんなに多くの人に喜んでもらい、お祝いしてくれるという体験ができたことを誇りに思いました。「やっぱり素敵な地だな、移住してきてよかったな」と改めて強く思った1日でした。

⼦ども達や若い世代の方々、田村市への移住をお考えの⽅々に、どんなことをお伝えしたいですか?

馨さん:子ども達に対しては、三々九度を地元の小学生に務めていただき、直接行事に参加して体験してくれたことが、良い思い出になってくれたらいいなと感じます。よりたくさんの子ども達が、地元の大人たちと地域の行事に参加してくれたらと思います。参加せず見学をするだけでもいいから、大人たちが真剣に、かつ楽しんでいる姿を見て、地元の活気やにぎわい、文化、人を記憶してくれたら非常に嬉しいです。また更に、その次の世代に伝えていってくれたら、どれほど素晴らしいことだろうと思います。

都路小学校児童による三献の儀(三々九度)

馨さん:移住を考えている方には、“今の価値観からすると決して便利ではない田舎”の価値や、そうした田舎ならではの面白さに目を向けてくれるきっかけに、この手作りレトロ結婚式がなればと思います。その土地に来て、そこに暮らす人と関わることでやっと、田舎ならではの居心地の良さが体感できると思います。こんなに温かく迎え入れてくれる人たちがたくさんいることをぜひ知ってほしいです。

馨さん:どんなにお金があっても、誇れる知識・キャリア・資格があっても、地位や名声があっても、「お金を払ってサービスを受けられることが保証されていない」「地域の人との理解・協力なくしてはうまくいかない」、そうした「一人だけでは生きていけない社会」が、今も日本にはあります。逆に言えば、何も持っていなくても、一人の生の人間として向き合うことだけでうまく生きていける社会に面白みを見出したり、チャンスだと捉えたり、心地よさを感じられたりする人にとっては、天国なんだろうと思います。このままではいつか失われてしまうかもしれないその社会を、まだ体感できる時代であることは、ラッキーなのかもしれないと思いました。

花嫁行列では参加者同士が足並みを揃えゆっくりと歩みを進める。近隣の方へのお披露目でもあり、地域の人とのつながりや温かさを感じる時間となる

美歩さん:田村市に移住する時、夫婦共に転職もしたので不安がたくさんありましたが、田村市は田舎といっても生活で不自由することがなく、地域の方々も優しいです。自然豊かで住みやすい地域であることをもっと多くの方に知ってほしいです。

美歩さん:現在はペット3匹と暮らしながら、ペット保険のご相談やお役立ち情報を発信している会社で、SNS運営や企画・営業を担当しています。東京にオフィスがありますが、出社の必要がないためフルリモートで在宅勤務をしています。こうした仕事をしている立場として、また飼い主の1人として、ペット3匹にとってストレスが無い「環境」と、一緒にいる時間を大切にできる「生活」を、私自身とても重要視しています。ここでの生活は不便を感じませんし、休憩時間にはペットと家の近くの川沿いを散歩したり、3匹がストレスなく穏やかに過ごしたりする様子を見て、移住前以上にのびのびと生活ができていると感じます。

美歩さん:仕事では、ペットが暮らしやすいまち・スポットに関する情報発信や、災害時にペットと一緒に避難できる場所の情報提供もしています。そのことが田村市の役に立ったり、田村市がペットに優しいまちであると認識してもらって、ペット連れの移住者がたくさん来てくれたりしたら、私もとても嬉しいです。コミュニティサイトなどで、奥様がご主人のお仕事の都合で福島県や田村市に移住をする予定ながら、「なかなか仕事がないのでは?」と心配する声を見たことがあります。でも今の時代だからこそ、私のようにフルリモートという選択肢もあります。私たち夫婦はまだ子どもはいませんが、ペット3匹と一緒に、のどかで地域の人たちも温かいこの場所での暮らしを楽しんでいます。ぜひ安心して、田村市に来ていただきたいと思います。


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