豊かな自然に囲まれ、のびのびと自分のペースで過ごす時間は格別ですよね。週末や長期休みを利用し、お一人で、あるいはご友人同士やご家族で、キャンプやアウトドアを楽しむ方も多いのではないでしょうか。都心からのアクセスも良好な福島県田村市都路町にある「里山の見える丘公園キャンプ場」は、知る人ぞ知る手作りキャンプ場。場内整備に加え、五右衛門風呂や天文台、子どもも楽しめる遊具スペースといった施設も、オーナーの坪井久夫さんがほぼお一人で作られました。営農の合間を縫ってご自宅の山を拓き作ったキャンプ場には、どのような魅力や思いが詰まっているのでしょう?詳しくご紹介します!

「里山の見える丘公園キャンプ場」概要

【住所】福島県田村市都路町古道稲葉下
【営業期間】通年
チェックイン13:00、チェックアウト10:00。坪井さんは非常駐ですが、利用中どこかのタイミングで顔合わせをします。
【利用料金】無料
五右衛門風呂は一人あたり¥500。燃料価格高騰により、今後は光熱費利用料の設定も検討中。
【サイト数】4区画
今後、キャンプ場奥に2〜3区画増設予定。

【駐車場】あり
【その他施設】炊事場、水洗洋式トイレ、洗面台、五右衛門風呂、室内バーベキューもできる「いこいの場」、子ども向け遊具、ジップライン、天文台など。全て坪井さんの手作り。

【予約方法】公式Xアカウント(旧Twitter)または電話予約
利用は要予約。坪井さんご自身が運用する公式Xアカウントをフォローしメッセージから予約するか、電話で予約します。(電話番号は記事末尾に記載) 「来たい」と思う方が気兼ねなく楽しめるよう、予約は基本的に1日1組のみ。ご友人同士での2組以上のご利用もご相談ください。
【情報発信】公式Xアカウント中心
主に公式Xアカウントで情報発信をしています。キャンプ場の紹介動画がYouTubeにアップされており、こちらを見て問い合わせをする方も増えています。

実際に利用した方からのご感想

坪井さん:常連さんの利用が多く、好きな方は月に2〜3回来ます。お友達と一緒に楽しむ方もいますが、「ガヤガヤするより静かなところが良い」「サバイバルをしたい」という、ソロキャンパーが多いです。常駐していないので直接感想をお伺いできる機会ばかりではありませんが、場内の「いこいの場」に自由日記を置いていて、ここに皆さん感想を書いてくれます。それを読むと、マイナス7℃〜8℃の寒さでさえ、楽しんでいることがよく分かります。「いこいの場」には薪ストーブを置き、焼肉なんかもできるようにして、私も皆さんと食事をご一緒することがあります。食事ができると話が弾むし、よそのキャンプ場の話を聞くこともできて面白いです。

自由日記は利用した方からの充実した感想で溢れる。坪井さんも様々な感想に触発され、ご自身はキャンパーではないがテントを新調したそう

坪井さん:五右衛門風呂は人気です。レンガ作りとドラム缶の2つがあり、どちらもいただいたものです。火を絶やさなければ2〜3日連続で入り続けることができるので、好きな時に好きなだけ入浴できるところに魅力を感じている人が多いよう。シャワーを付けており石油も使うので、お風呂の利用料はいただいています。キャンプ場は冬でも毎週末利用予約がありますが、都路は寒いので水の管理が大変ですね。ジップラインはなぜか女性に人気です。ロープの遊具はなかなかこの辺には無いものらしく、楽しんでくれています。

ドラム缶風呂。窓からは都路の里山がよく見える。夜は電気を消しキャンドルを灯して入浴を楽しむ利用者さんも

どうしてこのようなキャンプ場を作ったのでしょう?オーナーの坪井さんにお話を伺いました

私の本業は農業で、キャンプ場は商売として営んでいるわけではありません。来たいと思う方に楽しんでもらうのが1番なので、そこまでアクティブに宣伝もしていません。今から6〜7年ほど前、「人が集まる場所を作りたい」「みんなとふれあいたい」と思い、自宅の山を整備してキャンプ場を始めました。このあたりは年配の方がほとんどで、これからの農業のことを考えると、若い方がキャンプきっかけに都路を訪れ、後継者になってくれたらいいなと考えたことも、始めた理由の1つです。キャンプ場の名前の由来は、横浜の友人のところに何度も足を運ぶ中で「港の見える丘公園」を訪れていたことからです。さすがに海は見えないので、「里山の見える丘公園キャンプ場」と命名しました。昼間は農業、終わって夕方から山に来るため、整備には非常に時間がかかりました。2年かけて木を伐採し、根っこを剥がし、整地する作業を全て一人で行いました。その後「いこいの場」や天文台といった建物を順次建てました。

私は都路で生まれ育ちました。2014年4月1日付で原発事故による避難指示が解除となった際、一番に都路に戻ってきて、仕事の立て直しや報道機関の取材に、約3年ほどがむしゃらに対応しました。当時は大変とは感じなかったけれど、都路への帰還はみんなからの反対を押し切ってきた側面もあり、その分がんばらなければと思っていました。帰還についてはどうするのが正しいかは分かりませんでしたが、誰かが戻れば後にもつながる、みんなにも戻ってきてほしいと思い、先頭を切りました。「どうせお金をもらっているんだろう」といった誹謗中傷が遠回りに聞こえてくることもあり、辛い思いもたくさんしましたが、それでも今思うと、やっぱり戻ってきてよかったです。都路は帰還率が高く、私自身は一番に戻ってきたからこそ、国や報道関係の方など、それまでは無かった「人とのつながり」ができました。

キャンプ場近くに立つ電波塔も、「人とのつながり」の賜物。坪井さんは都路に戻る際、生活復興を念頭に「電波が通じにくい地域がある」と帰還手続き中に知り合った関係者へ直接打診。このことがきっかけとなり電波塔が建てられた

帰還後に線量計の申し込みをしましたが、そのことで放射線の研究者の方々とつながりました。その方々は「物理学の研究は国からお金をもらってやっている。だからこそ今還元したい、福島のためにできることをやりたい」と話し、実際熱意を持って行動していました。「放射線についてよく分かっている方々が、誠心誠意やってくれている」と、よくよく実感することができました。つながりは大事ですね、どんな人とつながるかで、予想していなかった広がりが生まれ、自分の人生が変わっていく経験をしました。震災は無くていいけど、あったからできたつながりもあると思っています。

ふれあいの拠点でもあるキャンプ場で、お互いに顔の見える関係づくりを

キャンプ場は地域の方と集まり交流する場にもなっています。年に1回のお花見や、11月には160人ほどの方が集まりイルミネーション点灯式を行いました。場内の看板やイルミネーションは、地域の方の手作りです。天文台に掲げている「あぶロマ星空観測基地」の看板は、キャンプ場に来るまでに通る国道399号線の「あぶくまロマンチック街道」にちなみ、街道事務局の方が描いてくれました。公園入口の看板は都路中学校の3年生が、キャンプ場入口の看板は福島大学と桜美林大学の学生が、それぞれ描いてくれたものです。イルミネーションは7年ほど前から、地域の方と一緒に立てています。一人でやるよりもいろいろな方が関われるやり方をするほうが、地域のつながりができると感じています。

坪井さん手作りの天文台と「あぶロマ星空観測基地」看板。肉眼で星の観測ができる望遠鏡も利用できる

道路沿いに立つ都路中学校3年生の手作り看板。キャンプ場に辿り着くための大事な道標

昼間は家族経営で農業をしており、私はお米と大玉トマト、妻がそれ以外の野菜と花卉をやっています。面積で言えば5町5反(5.5ヘクタール)、東京ドーム1個と少し分ぐらいです。野菜は震災後から始めましたが、みんな「仕事がない」と言っていた時期だったので、自分のところに来て野菜を作ってもらう、そうした雇用を生んでもいいなと思いながらやってきました。今はJAやこれまでお知り合いになって注文してくださる方向けに出荷しています。妻とは作業内容が違うので生活時間もずれており、一緒にご飯を食べられるのは夕飯だけですね。

注文くださる方への野菜出荷は、それぞれちょっとしたきっかけからそういう流れになりましたが、全て私から顔の見える関係の方々にお送りしています。昔、電話予約でお米の販売を試みたことがありましたが、冷害でお米の味が落ちた際、注文が無いことが相次ぎました。その時から「顔の見える関係の中でやりたいな」と思い、今では知っている方だけに出荷するようにしています。

昨年、東京からの移住体験ツアーでキャンプ場を回ってくれた方が、「お米がおいしい」と定期的に注文してくれています。おいしいと言ってもらえるのは嬉しいですよ。その方は5キロ単位の注文なので、送料も含めると東京で買ってもらう方が安く済みますが、「坪井さんのお米が食べたいんだ」と値段に関係なく買ってくれています。ほかにも、「食べて応援したい」「その時採れる野菜なら何でもいいから送ってほしい」と言って買ってくれる首都圏の方がいらっしゃいます。届いた野菜に虫がついていたと連絡をもらいますが、それは「虫がつくくらいおいしい野菜なんですね」という、安心感からのコメントなんです。

やりたいことは山ほどある!商売ではないからこそ生まれる意欲や価値を大事に

キャンプ場に露天風呂を作りたいんですよね。野外ステージも作って、歌手の方を呼んでのコンサート開催や、カラオケ大会もしたいです。都会はなかなか大声を出せる環境がないから、思いきり声を出したいという話を聞いたことがあるんです。「この辺りは隣の人に気兼ねなくいられて良い」という感想を話してくれたキャンパーさんもいます。あとはテニスコートがあるのですが、ボールが農地に飛んでしまうので、今後はバドミントンコートにしようと思います。

いまキャンプ場対面の山に、遊歩道を作っているんです。遊歩道途中の池には魚を放し、利用者さんに自由に獲ってもらって、ご自身のサイトで調理できるようにする予定です。花もいいですよ。春先は福寿草がたくさん咲き、梅や桜も多く植わっています。キャンプ場入口の看板から場内まで、ずーっと燕子花が咲くんです。5月には天然記念物のモリアオガエル、7月にはホタルも見られます。子ども向けにミニ昆虫館を作りたいですね。

サイトから見える春先の里山。水仙が顔を出し、木々がピンク色に色づいている

やりたいことをどんどんやっていますが、商売にしないからできると思います。全て持ち出しでやっていて、その分気楽に好きにやっています。「儲けよう、儲けないといけない」となると大変です。商売ではないからこそ「来たい人が来て、楽しんでいってくれたら良い」という点に徹することができるし、お金に換えられないものにつながる可能性もあります。

ご家族連れや自然豊かな場所への移住を考えている方も、ぜひ遊びに来てください!

今のところ、ご家族連れでキャンプ場を利用されるのは年に2組くらいです。利用数は多くないですが、楽しく過ごしていただけると思います。場内には廃園になった常葉町の幼稚園から譲ってもらった遊具を設置しているので、お子さんはのびのび遊べます。キャンプに限らず、おにぎりを持ってきてもらって、日帰りお花見やピクニックもおすすめです。来てくれる全ての方に良いようにするにはなかなか大変ですが、このキャンプ場らしさを楽しんでほしいです。

シーソーやブランコといった遊具を5つほど設置

そして都会の方には、実際にキャンプ場や都路まで足を運んでもらい、「いい場所だから移住したいな」「農業の後継者になりたいな」と思ってもらえたら、という野望があります。震災の時、関東の方々にたくさん応援してもらいましたが、その時関わってくださった皆さんと、桜の木を60本ほど植樹したんです。枝垂れ桜なので花をつけるのはもう少し先になると思いますが、皆さんに1本ずつ名前をつけてもらっています。こうした「人とのつながり」で営んでいるキャンプ場に、ぜひ遊びに来てもらいたいと思います。

里山の見える丘公園キャンプ場

住所:福島県田村市都路町古道稲葉下
営業期間:通年(チェックイン13:00、チェックアウト10:00。連絡すればある程度自由)
利用料金:無料(五右衛門風呂は一人あたり¥500)
駐車場:あり
予約方法:①公式Xアカウントをフォローしメッセージから予約 ②電話 080-1833-1791(坪井さんのお仕事の関係で通じにくいことがあります)

 


この記事を読んで田村市での生活に興味を持った方、移住を検討している方は、お気軽にたむら移住相談室へご相談ください。

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