福島イノベーション・コースト構想推進機構が運営するFukushima Tech Create(FTC)は、福島県浜通り地域等の起業・創業にチャレンジする企業や個人を支援するプログラムです。動画「箭内夢菜のイチオシ夢×ふくしまイノベーション」では、福島県出身の俳優箭内夢菜さんらがFTCを解説し、2023年度の採択事業者を紹介しています。この記事では動画の見どころをお伝えします。
この記事の目次
福島イノベ構想・FTCとは?
福島イノベーション・コースト構想とは、福島県浜通り地域等の地域産業の回復と、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクトです。廃炉、ロボット・ドローン、エネルギー・環境・リサイクル、農林水産業、医療関連、航空宇宙を6つの重点分野と定め、世界のイノベーションの中心地となることを掲げています。
FTCはこの重点分野で新たな技術・サービスを創出し、起業・創業にチャレンジする企業や個人を支援するプログラムで、ビジネスパートナーとのマッチングや補助金を通して採択事業者をサポートしています。2020年度から毎年応募者を募っており、資金力や経営経験に不安を抱える事業者でも、チャレンジしやすい環境を整えています。
FTCについて詳しくはこちら
https://www.fipo.or.jp/ftc
動画では、箭内さんが2023年度にFTCに採択された4つの事業の代表者のもとを訪れました。
ロボットによる触診技術を開発「タグル株式会社」
箭内さんが最初に紹介するのは、南相馬市小高区のタグル株式会社です。代表取締役の遠藤洋道さんは、大阪大学との共同研究でサッカー選手の筋肉の疲労度や回復度を数値化する触診システムを開発しています。福島県いわき市を拠点に活動するプロサッカーチームいわきFCで実証実験を展開し、特許を取得しました。体重計や血圧計と同じように毎日計測することで選手の疲れやコンディションの変化を可視化し、けがの予防や練習強度の調整、試合での選手起用の調整に役立てられるそうです。
箭内さんもふくらはぎの筋肉で計測を体験してみると、長時間同じ姿勢でいたと思われる程度の疲労度が感知されました。「すごい!今朝は特急列車に乗って来たので、ずっと同じ姿勢でいました!」と、箭内さんも計測の正確さに驚いた様子です。
触診システムをテスト導入しているチームの選手は「自分たちの疲労度は主観でしか分からないので、数値として客観的に見られることで、怪我の予防やコンディションの調整ができるのはありがたい」と話しています。
宇宙で生活する未来を目指す「株式会社ElevationSpace」
続いて箭内さんが紹介するのは、南相馬市の小高パイオニアヴィレッジを拠点に宇宙スタートアップ事業に挑戦する株式会社ElevationSpaceです。代表取締役CEOの小林稜平さんは、誰もが宇宙で生活できる豊かな未来の実現を目指し、宇宙空間での研究開発や実証実験に役立つ人工衛星の開発に取り組んでいます。
小林さんが開発する人工衛星は、ロケットによって地上から打ち上げられた後、宇宙空間で実験や研究作業を無人で行い、成果物を乗せたカプセル部分のみを地球に帰還させます。宇宙生活の実現に向けた研究のみでなく、無重力環境を活かした高精度な材料製造や医薬品開発にも応用できる技術だそうです。
現在は東北大学大学院工学研究科と共同して研究開発を進め、2025年に初号機の打ち上げを目指しています。人が持続的に宇宙に住める未来が、すぐそこまで迫っているのかもしれません。
近代農業のニーズをかなえる「合同会社 良品店」
次に箭内さんが紹介するのは、富岡町で建築用パネルを製造する合同会社良品店です。代表社員の渡邉洋一さんが案内してくれたのは、開発中の営農型太陽光発電パネル木製架台。家屋のような形の木製架台の屋根部分には発電パネルが設置されており、下では農作物や花きの栽培が可能です。木製のやさしい風合いは、自然と景観に溶け込みます。電力コスト削減と景観保全、近代農業で需要が高まっている2つのニーズを叶える製品として、開発が進められています。
架台には福島県産木材を使用し、一般工務店でも施工できる工法を採用しているため、地域経済への貢献も期待されます。渡邉さんは、木造建築がもつ可能性を活かして未来の農業風景を変えていきたいと話しています。
漁業効率化のシステム開発を行う「株式会社MizLinx」
最後に箭内さんが紹介するのは、代表取締役CEOの野城菜帆さんが大学在学中に起業した株式会社MizLinx(ミズリンクス)です。東京都に本社を置き、福島県いわき市や静岡県、香川県の海を舞台に漁業を効率化する海洋観測システムを開発しています。
海面に設置された観測器「MizLinx Monitor」は、水中カメラによる動画撮影や、水温・溶存酸素・塩分濃度・pH値の計測を自動で行います。一人で持ち運べるほど軽くて小さく、扱いやすいことが特徴です。また、取得した観測データはリアルタイムでクラウドに保存され、PCやスマホからいつでも見ることができます。システムをテスト導入する養殖場の管理者も「データ記録の手間が省けます」と業務が効率化された実感を話しています。
MizLinxでは現在、いわき沖でウニが減少している原因を究明するためのモニタリングに取り組んでいます。これからも漁業課題の解決に取り組みつつ、海への深い探究心を満たしていきたいと、野城さんは熱く語ります。
そのほかの支援
FTCでは、資金調達や特許取得のためのセミナーや、パートナーの発掘や資金調達を呼びかけるピッチイベントや交流会を開催するなど、福島でのチャレンジを成功に導く働きかけを行っています。
2023年11月に開催された「イノベのたまご2023」は、新規起業家の発掘を目的としたビジネスアイデアコンテストです。福島美少女図鑑のメンバーが会場で見守る中、最優秀賞2名、優秀賞1名が選出されました。受賞者3名はシンガポールで開かれたピッチイベントにも参加。今後の飛躍が期待されています。
起業を目指す若年層ビジネスアイデア部門で最優秀賞を受賞した大向弘明さんは、「未経験者でもドローンアート制作ができるシステムを開発し、みんなで力を合わせて1つの作品をつくり上げたい」と話しました。
女性起業家ビジネスアイデア部門で最優秀賞を受賞した橋本綾子さんは、「ドローンやIoT機器を使ったスマート農業を実現し、福島を“今までとは一味違うおもしろい農業”ができる場所にしていきたい」とコメントしました。
FTCは小さなアイデアを大きく育てる
動画の最後では、出演者3名が感想を話しています。
遠藤栞さん(福島美少女図鑑)「いろいろな苦難があった福島だからこそ、熱い思いをもち、人と人が力を合わせられる可能性があると実感できました」
木村沙由里さん(福島美少女図鑑)「自分もひょっとしたら、世の中に役立つことができるのではと考える機会になりました」
箭内さん「一見突拍子もないアイデアが、新しい未来を切り開くのかもしれませんね。春にはFTCの来期分の募集が始まるそうなので、アイデアがある人はぜひ相談に行ってみましょう」
あなたのアイデアが、福島、そして世界の未来を変えるかもしれません。FTCについてより詳しく知りたい人は、ぜひ動画本編をご覧ください。
>https://www.youtube.com/watch?v=Z7f1DhvaDew
2025年1月23日(木)、24日(金)には、2024年度の採択事業者が登壇する「Fukushima Tech Create 2025 成果発表会」が開かれます。会場は南相馬市民文化会館で、オンライン配信も行います。興味のある人は、ぜひ申し込んでみてください。
詳しくはこちら
>https://www.fipo.or.jp/news/33957
2024年度の採択事業者を紹介する動画も近日公開予定です。
文:橋本華加
※本記事はふくしま12市町村移住ポータルサイト『未来ワークふくしま』からの転載です。