2025年6月13日(金) に田村市へ移住後、林業への道へ進んだお二人からお話を伺うオンラインイベントを開催しました。
田村市にて特殊伐採をしている桑原直人さん(フォレストクリエイト合同会社)と、独立一年目の髙橋成紀さん(ふくろう林業)をゲストにお招きし、林業との出会いや田村市での暮らしなど、林業のリアルな話と本音について語っていただきました。

ゲスト:
・桑原直人さん(フォレストクリエイト合同会社)
林業の担い手育成を目的とした助成制度「緑の雇用」を活用し、20歳から林業に従事し、今年で20年目に突入。2015年に独立し、現在は森林を所有する個人からの委託業務を中心に、調査業務から、伐木、搬出、丸太運材、特殊伐採も行っている。現在、自身が子ども時代に遊び育った裏山を購入し、一部を住宅用地として自宅を建て、家族4人で自然と共生した生活を送っている。
・髙橋成紀さん(ふくろう林業)
山形県出身。林業に携わりたいと思い奈良県で地域おこし協力隊をしていたが、より現場に近い領域で働きたいと思い転職を検討。田村市主催の林業体験ツアーに参加したことをきっかけに、2023年に田村市へ移住・林業就業。1年後に独立し、現在はふくろう林業として林業に従事。
①それぞれの「林業との出会い」
──林業に出会ったきっかけを教えてください。
髙橋さん:友人から「叔父が田村市で伐採の仕事をしているから手伝いに行かないか」と誘われたことです。その後、田村市の林業体験ツアーに参加し、そこで桑原さんと出会い「フォレストクリエイト」へ。のちに独立しました。
──体験ツアーはどうやって見つけましたか?
髙橋さん:インスタの広告を友人が見つけてくれて。奈良県で地域おこし協力隊として林業をしていましたが、プロとしてやってみたかったんです。実際に林業家さんから話を聞き、製材所見学やツリークライミング、ロープワークも体験できて、とても楽しかったです。
──どうして林業を選んだのですか?
桑原さん:実家の電器店を継ぐつもりで専門学校に通いましたが、図面通りにミリ単位で作業するのが自分には合わなくて。山の中で働けたら最高だなと思い、ハローワークで「森」と検索して森林組合の求人を見つけたのが始まりです。
髙橋さん:実際に林業を手伝い、「こういう仕事があるのか、面白いな」と感じたので。フォレストクリエイトで働いている時、桑原さんは何が良くて何がいけないかをきちんと説明してくれました。
──独立の理由は?
髙橋さん:独立した人の話を聞く機会が多く、「この人たちが見ている世界はどんな世界だろう」という好奇心と勢いからです。実際に独立したら、楽しいけど、厳しい。それをひっくるめて楽しんでいます。
②林業の現場まるわかり
──現場ではどのような作業をしているのですか?
桑原さん:「特殊伐採」です。狭い場所で木を倒さず、ロープに吊られながら作業します。状況によりますが一日で1~3本程度が限界です。一日に100本ほど切る素材生産とは全く別の業種ですね。朝のミーティングではゴールから逆算して作業を説明し、リスク管理を徹底します。
髙橋さん:うちの「ふくろう林業」では、朝7:40に現場集合、打ち合わせをしてから8:00に作業開始です。複数回の休憩や昼休みを挟んで17:00には終了。安全管理とチームでの連携がとても重要です。
【質問】仕事は個人から受注ですか?
桑原さん:8割が個人のお客様からの依頼です。切った葉や枝を残さない、現場をきれいにするなどの丁寧な仕事を心掛け、口コミが広がり、10年かけてここまで来ました。
髙橋さん:うちもほとんど個人様からの仕事です。まだ独立して間もないので、主に下請けの仕事です。
【質問】顧客の取り合いになることはないですか?
髙橋さん:私は特殊伐採の業者からの下請けとして行っているので、そこまで感じません。見積もりを出してそれで選んでもらってます。
──金額は相場が決まっているのですか?
桑原さん:田村市の特殊伐採業者はそこまで多くないので競争が発生せず、特殊伐採できる人が単価を決めています。
③楽しさと苦しさと理想と
──特殊伐採の魅力は何ですか?
髙橋さん:最初から最後まで自分で責任を持って作業できる達成感です。また、普段見られない街の姿を見下ろしながらの作業は格別です。
桑原さん:特殊伐採は人の生活圏に発生した困った木を切る「今、必要な仕事」です。「植林」はしないため、新たに発生することはありません。だからこそ、引退した時に、少しの間でも特殊伐採に携われたという思い出に浸れると思います。
──なぜ森林組合から特殊伐採に?
桑原さん:自分で仕事を作らなくてはと思い特殊伐採へ。田村市は個人所有の山も多いので個人にアプローチしました。特殊伐採はきちんと依頼人とコミュニケーションを取り、個人の困りごとを解決するというやりがいがあります。
──女性でも特殊伐採してる人はいますか?
髙橋さん:力に頼る場面はそこまで多くないので、女性でも活躍できます。
④林業とこれからの自分
──今後挑戦したいことは?
髙橋さん:アーボリストとしてどんどん尖っていきたいですね。貪欲に知識を得て、学ぶことをやめずに今に集中していきたいと思います。
桑原さん:現状維持です。起業してからいろいろな人に助けてもらったので、求めてくれる方々に真摯に応えていきたい。それと、寿命が長い森林を管理できる人材を育てていきたいです。
⑤田村市での暮らし
──田村市での生活はいかがですか?
髙橋さん:いま住んでいる場所は車で5分ほどの距離にスーパーや薬局もあって便利です。映画館などは違う街に行きますが、それ以外は特に不便を感じません。山形出身の私からしたら雪も少なく、暮らしやすいです。
桑原さん:田村市は低山地帯であり標高600mくらいまで人家があるため、インフラが整っていて林業をやりやすいですね。
【質問】繁忙期や雪の影響はありますか?
桑原さん:ありません。通年で忙しく、雪でも作業に大きな影響は出ません。
【質問】初心者はどのように学べばいいですか?
桑原さん:まずは山に入って、自分の地域の森林を見てみることをおすすめします。「緑の雇用」制度※1を活用すれば、チェーンソーや安全管理の基礎から学べますよ。
※1未経験者の方でも林業に就き、必要な技術を学んでもらうため、林業経営体に採用された人に対し、講習や研修を行うことでキャリアアップを支援するという制度のこと。
引用元:緑の雇用 RINGYOU.NET
https://www.ringyou.net/
まずは林業体験から始めてみよう!

最後に、お二人から林業や移住に興味がある方へのメッセージをいただきました。
桑原さん:山は「不変」です。好きな山や木を見つけて、迷ったときや苦しいときに会いに行ってみてください。心が浄化されますよ。
髙橋さん:林業は自分の目で見ないと分からない世界です。ぜひツリークライミングなどのイベントやツアーに参加し、実際に体験して見てください。そういうところが、いい入り口になるのではないかと思います。
田村市では就林にご興味がある方に向けた林業体験ツアーを開催しております。
●田村の森できこりになる。2025「山を知る、暮らしを考える」林業体験ツアー
(開催日:2025年7月19日(土)~21日(月・祝))
●「Tamura Forest College」(通年受付)
ご興味がありましたら、ぜひ一度お問い合わせください。
今回もたくさんの方にご参加いただきました。参加者からは、
・特殊伐採と林業の違いについて解像度が上がりました
・現役のお二人から率直な話が聞けて参考になりました
・実際の林業イベントにも参加してみたくなりました
との感想をいただきました。
たむら移住相談室では今後も、田舎での暮らしを満喫されている方や活躍する地域プレーヤーをゲストにお迎えしてオンラインイベントを行います。ぜひ今後の情報もチェックしてみてください。
たむらぐらし