この春新たに始まった連載企画「Nativ.Life インタビュー」。移住や二拠点居住などの暮らしの場所を自ら選ぶ様々な生き方を実際に選んだ人たちから、これからの時代の新しい生き方やライフシフトの形を探るヒントをお届けします。
第2回は、多くの人にとって魅力的に映る地域「沖縄」に移住した”ゆきこ”さん。
ゆきこさんはもともと都内のベンチャー企業に勤めていたときにコロナ禍になったのをきっかけに、沖縄に移住。今は浦添市で暮らしています。そしてなんと、フルリモート勤務形態のまま千葉県の企業に転職するという”荒技”まで成し遂げています。
その軽やかで力強い動き方からは、従来の地方移住というキーワードからくるイメージとは全く違う感覚すら感じます。ゆきこさんは、いったいどんな考え方で、どうやって今のくらしを手に入れたんでしょうか?今回は、前回のインタビューに答えたNativ.media編集長の倉重(しげ)さんが、ゆきこさんのこれまでのストーリーを根掘り葉掘り聞いてみました。
フルリモートの中で決めた、”今なら沖縄”もありかも!
しげ: ゆきこさん、今日はありがとうございます!「Nativ.Lifeインタビュー」シリーズ、第2弾としてゆきこさんの沖縄での暮らしについて、ぜひ深掘りさせてください!
ゆきこ: こちらこそ、ありがとうございます!よろしくお願いします。
しげ: ゆきこさんは今、沖縄の浦添市で暮らして、千葉の会社にフルリモートで勤務されているんですよね。新規事業開発室とHRグループを兼務されていて、まさに今どきの新しい働き方を体現されているなと。どんな感じで暮らしてますか?
ゆきこ: はい、おかげさまで絶好調ですよ!私は人生、常に絶好調です(笑)
しげ: 素晴らしい!まずは、ゆきこさんが沖縄に移住するきっかけから伺ってもいいですか?初めて沖縄に行ったのは中学校の修学旅行だとお聞きしましたが 、そこからどうやって「住むなら沖縄かな」ってなったんでしょう?
ゆきこ: きっかけは、やっぱりコロナ禍で会社がフルリモートになったことですね 。実は当時、青山の会社に徒歩通勤できる範囲に住んでいたんですけど、家で仕事をする想定の部屋じゃなかったので、リモートワークの環境としては良くなかったんです 。
しげ: なるほど。当時借りていた部屋が、リモートワークには不向きだったと。
ゆきこ: そうなんです。それで引っ越しを考え始めたんですけど、東京周辺で家賃を下げて広い家っていうのもピンとこなくて。ディズニーが大好きだから浦安?とか一瞬思ったんですけど、毎週行くものでもないし(笑)
しげ: 確かに、年間パスポートがあっても毎週は大変ですもんね(笑)
ゆきこ: 当然出身の関西に帰るのも考えました。でも、地元も周辺都市も好きだけど、これまたピンとこなくて…。よく考えたら「どこでも住めるいい時代になったんだ」と思えてきて、「じゃあ沖縄に行くか!」ってなったんです 。自分の中で唯一、「住んでみたいかも」って思えていた場所が沖縄だったんですよね 。
しげ: 「沖縄に行くか!」って、そのフットワークの軽さがすごいですね(笑)。以前から沖縄に特別な思いがあったんですか?
ゆきこ: 修学旅行のときに地元の学生と交流する機会があって、そのとき同じ班になった子とずっと繋がってたんです。大学生になってその子に会いに沖縄に行ったり、彼女が就職で本州に来てからはよく遊んだりしていて、「いつか沖縄に移住してたらおもろいな~」って冗談交じりに言ってたんですよ。そのときの会話をふと思い出しました。
しげ: まさにそのタイミングだったんですね!でも、以前は移住って、もっとハードルが高いイメージでしたよね。給料が下がるとか、地方の仕事はなかなかないとか… 。
ゆきこ: 私もそう思い込んでた部分がありました 。でも、妥協なくフルリモートでビジネスを続ける会社にいさせてもらっていたおかげで、「これまでのキャリアや収入を大きく変えることなく移住が叶うんだ」って思ったら、あんまりリスクないなって 。 それこそ観光で好きなのと住むのとはちがうってことも重々理解もしていたので、「もし嫌だったら帰れるしな」って思えたのは大きかったです。結局気に入って、すっかり住み着いてますけどね。
しげ: 確かに、収入が変わらないから、嫌だったら帰ってこようって思えるのは大きいですよね。
ゆきこ: そうなんです。それが結構背中を押された部分ですね 。暮らしと向き合ったことで、人生の一部である仕事についても考える機会になりました。バリバリ働きたいタイプではあるので、その上で自分の大事な価値観と発揮したいバリューを考えたときに惹かれたのがいまの会社です。実は当時フルリモートで採用をしていなかったのですが、複数回の会話を重ねてジョインさせてもらいました。
しげ: それはすごい!ゆきこさんのその行動力が、自分が求める条件の移住を可能にしたんですね。
ゆきこさんの沖縄移住は、コロナ禍でフルリモートが普及したことが大きな転機となりました。以前は「移住=キャリアや収入の犠牲」というイメージがあったものの、柔軟な働き方が可能になったことで、そのハードルが劇的に下がったと同時に、フルリモート勤務の中でも転職を実現させた主体的な姿勢が、この「身軽な移住」を可能にしました。沖縄を「好きで住みたい場所」として選び、もし合わなければ帰ればいいという気軽さで踏み出したことも、自分らしい生活を実現するきっかけになったようです。
意外と”都会”で”心地よい”沖縄での暮らし
しげ: 実際に沖縄で暮らし始めてみて、どんなことを感じましたか? 行く前と違って「意外」なこととかありますか?
ゆきこ: 住んで感じたのは、思っていたより”都会”だなってことですね 。那覇市内には百貨店や免税店もあって、東京に住んでいた頃から好きなアイテムやブランドの買い物にも困ってないです 。
しげ: なるほど!沖縄をそういう角度で見るのって新鮮ですね。
ゆきこ: 海外ブランドが東京、大阪の次に沖縄に店舗を出すケースも結構ありますね 。ただ物流費の影響なのか、日用品や食品の物価はあまり安くないかもしれません。居酒屋や飲食店も、観光客向けのお店が多いので、やはりお高い傾向がありますね 。
しげ: 気候はどうですか?ゆきこさんは寒いのが苦手だとお聞きしましたが 。
ゆきこ: 過ごしやすいです。沖縄って、夏でも猛暑日(35度以上)ほど気温が上がることがあまりないんですよ。高くても32〜33度くらいで、風もあるので、日差しさえ避ければ意外と涼しいくらいです 。
しげ: それは意外!今や沖縄の方が涼しいんですね…。
ゆきこ: あと、沖縄に住みやすいなって思うのは、冬でも気温が高いことより、年間や昼夜の温度差が小さいことですね 。1日の温度差が最大5度くらいで、年間でも最大15度くらいに感じます。この温度差が小さいのが住みやすさのポイントだと思います 。冬の乾燥も少ないから、東京だと膝とかカサカサになってたのがなくなりました(笑)
しげ: 湿度も心地いいですよね。沖縄の空も好きだとお聞きしました。
ゆきこ: はい、空がめっちゃ好きで。ベランダに椅子出してパソコン作業することもありますし、夕暮れの空を眺めるのが癒しの時間です 。海も綺麗ですけど、空が全然違うんですよ 。
しげ: 人とのつながりについてはどうですか?
ゆきこ: 沖縄の人って、初対面は適度な距離感があって丁寧だと感じますね 。新しく知り合った人とも、親しくはなっても「なれなれしく」なりすぎないというか。そういう距離感は自分としては肌に合う気がします。それと同時に、誰と話してもやっぱり地元への愛情はすごく強いのは感じます 。
しげ: ゆきこさんの「居場所」になっている場所もあるとか?
ゆきこ: はい、近所にある70代のママが一人で営む小料理屋さんです 。普段、飲み屋で知らない人と話すのはすごく苦手なんですけど、このお店だけはカウンター席で居合わせた人たちと話しながら一緒に飲みます (笑)私の「沖縄の実家」って呼んでるんです。まさに実家になんとなく帰るような、甘えたい気分のときに行きます。
しげ: それは素敵な居場所ですね!沖縄の文化で印象的なことはありますか?
ゆきこ: 沖縄の方って明るく前向きな雰囲気の人が多いイメージがあるじゃないですか。でも、それってさまざまな背景があるからこそ、明るくたくましく、支え合って生きている努力の結晶なんだなって、沖縄で出会った人たちと接して思いました 。
しげ: 音楽も生活に根付いていますよね。
ゆきこ: そうですね。本当に日常に音楽があって好きな人も多いと感じます。すぐ踊りますし(笑)
沖縄での生活は、ゆきこさんにとって意外な発見もあるようです。那覇市内では想像以上に都会的で不便はなく、気候面では年間を通じて温度差が小さいことが快適だとのこと。また沖縄の方との距離感や、対面的な文化なども、ゆきこさんには心地良い様子が伺えます。近所にある小料理屋は「沖縄の実家」とまで呼べる心の拠り所となっていて、地域との深いつながりを感じる場所となっています。
「自分基準」を「自力」で満たす幸せ
しげ: 沖縄への移住で、気づいたことはありますか?
ゆきこ: そうですね…。自分の経験を振り返ると、やっぱり今なら、移住って「そんなに構えなくても、案外挑戦しやすい」ようになってきたんだなと思います 。少し思い切って踏み出してみると、実はそんなにだいそれたことじゃなかったです。
しげ: なるほど。改めてお聞きしたいんですが、ゆきこさんにとっての「幸せ」って、どんな状態のことなんでしょう?
ゆきこ: 「自分の価値基準の中で、自力で自分を満たせること」ですね 。価値基準が自分の中にあるものであることと、それを満たせるかが他者に依存せずに自分でどうにかできること、この2つが大事だと思っています 。
しげ: 「自分基準」で「自力」で満たす…なるほど。沖縄への移住は、その「自分基準」を確かめるきっかけにもなったんでしょうか?
ゆきこ: そうですね。振り返ればやっぱり心のどこかで、「逃げ出したい」気持ちもあったと思うんですよね。あの未曾有の事態のコロナ禍の閉塞感とか、世間の基準に無意識に囚われていた雑音や縛りから解き放たれて、自分自身が何がいいのか、どうしたいのかがクリアに見えてきた感覚がありました 。
しげ: 既成概念からご自身をうまく解放されたんですね。
ゆきこ: そうかもしれません。自分の基準に従って、自分自身でそれを満たせる状態が、今はすごく幸せなのかなって思ってます 。私の人生のテーマは「心の豊かさ」なんです。自分自身の「心が豊か」な状態であることが、なにより大切なことかなと 。転勤で縁もゆかりもないところへの引っ越しを何度か経験していたからか、沖縄に引っ越したのって本当に大したことではなかったです。でも自分で選択して行動したことは、なんだか自信につながった気がします。
しげ: その感覚が、今の仕事にも繋がっているんですね。移住って「なんとかなる」って言われがちですけど、ゆきこさんは「なんとかなる」じゃなくて「なんとかする」って言ってやってきた感じですよね。
ゆきこ: 大したことだと思っていなかったと言いつつ、移住って実際そんなに甘くはないと思います。でも主体的に行動さえすれば、色々あっても案外なんとかできる 。現職への転職も、振り返ってみれば「自分がどうありたいか」を起点として動いた結果でしたし 。
しげ: その主体性が本当に素晴らしいですね!
ゆきこ: ありがとうございます。生活水準を下げたくないし、ある程度都会的な暮らしも捨てたくない。でも沖縄に暮らして、周囲の人達との心地いい関係も続けたい。並べてみるとわがままかもしれませんけど(笑)でも、色々なきっかけと、出会いが重なって、それが実現できているのはありがたいし、嬉しいですね!
ゆきこさんの移住は、単なる生活環境の変化に留まらず、自身の「幸せ」に対する深い哲学へと繋がっているようです。彼女にとっての幸せは、「自分の価値基準の中で、自力で自分を満たせること」。世間の基準や他者の評価に囚われず、自分自身の心の豊かさを追求する姿勢が、彼女の生き方の核となっています。その能動的な意志こそが、沖縄での充実した生活を築く原動力となっているのでしょう。
編集後記
今回のゆきこさんのインタビューは、本当に多くの気づきとヒントがありました。
「自分の価値基準で、自力で自分を満たせる」という言葉は、まさに私たち誰しもの「幸せ」のヒントになるんじゃないでしょうか。既成概念に囚われず、自分の感覚に素直になることは簡単ではありません。でもそれを実践することで得られる内面的な充実感は計り知れません。
ゆきこさんのように、コロナ禍という社会の変化を逆手に取って、キャリアも生活水準も維持したまま、自身の「心の豊かさ」を追求する姿勢は、多くの人のヒントになるはず。移住が必ずしも「田舎暮らし」や「のんびりした生活」を意味するわけではなく、一定の都会的な利便性を享受しつつ、自分自身の価値観に忠実に暮らせる環境を得られるという新たな可能性を示してくれた気がします。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
では、また次回のNativ.Life Interviewでお会いしましょう。
文責:ネイティブ.メディア編集部