日本一の農業産出額を誇る茨城県。その中でも鉾田市は、豊かな土壌と温暖な気候に恵まれた、まさに野菜の宝庫です。

今回は、この地で情熱を持って土と向き合う「おみ農園」の小見陽介さんを訪ねました。
彼の作る干し芋は、ただのスイーツではありません。そこには、地域の未来を見つめる、熱い想いが詰まっていました。

とろける甘さの秘密。おみ農園の「干し芋」ができるまで

おみ農園の代名詞ともいえるのが、黄金色に輝く「干し芋」。その作り方は、まさにさつまいもへの愛情そのものです。

秋に収穫されたさつまいもは、すぐには加工されません。1ヶ月から3ヶ月ほど貯蔵庫でじっくりと寝かせることで、でんぷんが糖へと変化し、甘みがぐっと増します。その後、丁寧に蒸し上げると、糖度はなんと80度に達することも。これは、一般的な炭酸飲料の約8倍という驚きの甘さです。

糖化を行ったさつまいもを、次に干し芋へと加工していきます。

「加工時に皮が残っていると、干し上がった時に見た目が沈んだ色になってしまうので、ここは思い切って剥いてもらっています」

小見さんから、干し芋へのこだわりをお聞きしました。

パートスタッフの手で一つひとつ丁寧に皮を剥かれ、美しい黄色い肌が現れたさつまいもは、ピアノ線を張った専用の機械で均等にスライスされます。それをすだれに並べ、農業用ハウスの中で3〜4日間、太陽の光を浴びながらゆっくりと乾燥させることで、甘みが凝縮された「おみ農園の干し芋」が完成するのです。

定番の平干しはもちろん、さつまいもを丸ごと干した贅沢な「丸干し」など、様々な種類があるのもおみ農園の魅力。「お客様の『こういうのがあったらいいな』という声に応えたい」という想いが、新しい商品開発へと繋がっています。

「美味しい」の一言のために。若き農家・小見陽介さんの情熱

「おみ農園」を率いる小見陽介さん。ラグビーや学業に励んだ学生時代は、農業とは無縁の道を考えていたと言います。

彼の人生を大きく変えたのは、高校3年生の時に経験した東日本大震災でした。

「当時、近所の学校に多くの方が避難していました。うちで薪にしていた木材や、作っていた干し芋を持って行って、焚き火をしたり、暖を取ってもらったりしたんです」

電気も水道も止まり、誰もが不安な夜を過ごす中、自分たちの作ったものが人の温もりとなり、笑顔を生む。その光景を目の当たりにし、「自分の家でやっている農業が、こんなにも地域貢献に繋がるんだ」と強く感じたと言います。

「自分も人生を懸けるなら、こういう職業につきたい」

その決意を胸に、大学の経営学部で学び、食品専門商社で商品開発や営業を経験。外の世界で知見を広げた後、満を持して地元に戻り、家業を継ぎました。彼の作る農作物には、経営的な視点と、地域への深い愛情が注がれているのです。

なぜ茨城・鉾田は美味しい野菜の宝庫なの?

小見さんは、茨城の農業の強みについてこう語ります。

「関東でも特に広い農地、冬でも野菜が作れる温暖な気候、そして霞ヶ浦や海に囲まれた豊富な水源。海から吹くミネラルを含んだ風が、土にも良い影響を与えてくれる。野菜作りに最適な条件が揃っている場所なんです」

おみ農園では、干し芋の原料となるさつまいもの他に、ミニトマトも栽培しています。これは、さつまいもの収穫がない時期でも、一年を通して農業を安定して経営するための知恵と工夫がそこにありました。

最後に:畑から、未来へ

「最終的に食べてくれる方に『美味しい』と言ってもらえるか、そこに尽きます。食べてもらいたいから作るし、それで感動してもらえることが一番大きなやりがいです」

体力的に厳しい仕事である一方、自分の努力次第で可能性を伸ばせるのが農業の面白さだと小見さんは語ります。

一度は地元を離れたからこそ、この地域の暮らしやすさ、素晴らしさを実感したという小見さん。彼の作る甘い干し芋には、故郷への感謝と、農業の未来を切り拓くという力強い決意が込められています。おみ農園の干し芋を一口味わえば、あなたもきっと、その情熱の物語を感じられるはずです。

 

インフォメーション:おみ農園

事業者名: おみ農園
主な生産物: さつまいも(干し芋)、ミニトマト
特徴: 栽培から加工まで一貫生産。さつまいもの甘みを最大限に引き出した干し芋が人気。平干し、丸干しなど、顧客のニーズに合わせた商品開発も手がける。商品は県内の直売所やオンラインショップ、東京のアンテナショップなどで購入可能。

WEBページ:https://www.ominouen.co.jp/