尿中から独自ロジックで栄養の過不足を算出し、定量評価する検査キットの開発を手がける株式会社ユーリア(https://yuurea.com/)。
代表の水野将吾さんが、キックボクサーやトレーナーとしての活動経験から「継続的なヘルスケアの仕組みとは何か」を考え、満を持して立ち上げたスタートアップだ。
キットを用いた尿検査の結果をスピーディにスマホアプリで見える化し、最終的には一人ひとりの検査結果をもとに、目的・効果別にパーソナライズされたサプリメントの開発・販売までを目指す。
「D-EGGS」では、広島県内企業の協力を得て分析に必要な尿サンプルの収集を行なった。データの連携・活用で、低コスト・簡便・迅速なヘルスケアの実現に向けた、株式会社ユーリアの取り組みを紹介する。
―「2分でわかる栄養価不足尿検査」について教えてください。
―水野 私自身、キックボクサーとして活動していた時期があり、ベストパフォーマンスのために、どのような体づくりをして自身の栄養状態を知り、それをどのように維持していくかは課題の一つでした。体づくりは、トレーナーの指示で計画通りに進んでいきますが、栄養面に関しては、食事や栄養補助食品などを使っても、日々定量的に把握するのが難しいと感じていました。実際には、体の栄養状態を測定するのは血液検査が有効ですが、毎回手間とコストがかかるうえに、結果が出るまでに時間がかかってしまう。
もっと手軽に、低コストで、スピーディに結果を知ることができれば、栄養の過不足が引き起こす様々な課題を解決できるのではないかと考えました。
そこで着目したのが、アミノ酸やビタミン・ミネラルなど多くの成分が含まれている私たちの「尿」。もちろん、尿検査自体はすでに家庭でも検査できるものがたくさんあります。我々のサービスは、尿検査の結果をスマホアプリですぐに確認できること、そして体力づくり、ダイエット、美容といったユーザーの目的に沿ってパーソナライズされたサプリメントの提供まで、継続的なヘルスケアを目標としています。
―どのような想いで「D-EGGSプロジェクト」に参加されましたか?
―水野 我々はシード期の企業であるため、まずはサービスを立ち上げられる環境を探していました。その中で、「ひろしまサンドボックス〜D-EGGSプロジェクト」を知り、資金面のサポート、そして県のバックアップ体制に魅力を感じました。
何かと厳しいスタートアップ時期に、資金面はもちろん、アクセラレーションプログラムならではのスピード感を持って、サービス開発に取り組めるチャンスだと。そして、広島を共創拠点とすることで、今後の本格的なサービス展開の足掛かりにしたいと思い、プロジェクトにチャレンジしました。
尿で栄養過不足を可視化するツールを開発し、低コスト・簡便・迅速なヘルスケアにつなげるというビジョンはあるものの、一からサービスを立ち上げるとなると時間、資金、ネットワークなど課題は山積みです。つい、システム開発やデータの活用法などアイデアをカタチにすることばかりに意識が向いてしまうのですが、毎月行われるメンターとの面談では、実際にどのようなルートでサービスを流通させていくのかといった、プロジェクト後のビジネス展開まで見据えたもので、大変心強かったですね。
―広島県内の企業との関わりについて教えてください。
―水野 この度、尿サンプルの収集にご協力いただいた株式会社リリーフの後藤英行さんは、広島で後藤鍼灸整骨院を運営している方です。実は、後藤さんとは私の起業準備期間中に福岡で知り合い、すでに私の想いを共有していたことから、「D-EGGS」への協力も快諾いただきました。後藤さんは、プロのスポーツ選手のトレーナー経験も豊富で、このプロジェクト期間には、尿サンプルの収集だけでなく、ヘルスケアの観点からも有意義な意見交換をさせていただきました。
また、栄養状態に応答する尿中の新規バイオマーカーを探索し、それを簡便な方法で検出するシステムの開発には、東京大学や広島市立大学との共同開発を行いました。
我々のようなスタートアップが協業先を自分たちで探すのは、本来とても苦労しますが、広島はDX先進県と言われるだけあって、デジタル技術を活用して新たな価値を築いていくことに人も企業も前のめりでしたね。「D-EGGS」での実証実験が終了した後も、広島でのビジネス展開に向けて積極的に動きたいと思います。
―あなたが目指すDXは、世の中にどんなインパクトをもたらすとお考えですか?
―水野 栄養状態は睡眠、運動、食事、飲酒などの生活習慣によって日々変化していくものです。例えば、ダイエットを目的として栄養状態を尿検査で調べ、その結果が出るまで日数がかればかかるだけ、目的達成が遠のきますよね。我々のサービスを活用することで、まさにリアルタイムで尿から現在の栄養状態がわかるというのは画期的なことだと思っています。
さらに最適なサプリメントの提供までを行う予定ですので、最短で栄養改善への道筋を示すことが可能です。尿から得る情報をデジタル技術で活用し、高齢化社会、健康、美容、スポーツなどの幅広い領域で、継続的なヘルスケアに貢献できればと考えています。
水野さんとはプログラミングスクールで知り合い意気投合。私は出身地である福岡から、妻の実家がある広島に移り住み、すでに治療院を開院していました。水野さんの「D-EGGS」参加を知り、サービス内容がヘルスケアに関することでしたので、検体採集の部分でお手伝いすることに。
尿検査から栄養状態を知る検査は、すでに世にあるものではありますが、そこにデジタル技術を活用することで、2分で結果を知ることができるのは、画期的なサービスです。
当院では、スポーツ選手のサポートをすることも多く、栄養状態を数値で把握できれば、パフォーマンス向上にも役立つと考えています。今後のビジネス展開に大いに期待しています。
取材:三桃みえこ 撮影:岸副正樹