AVA Travelのサイト https://travel.ava-intel.com/

ユーザーの性格や趣向データなどを基に、それぞれに合った選択肢の提案や、情報提供するアバターAIを開発するAVA Intelligence(アバ インテリジェンス)株式会社(https://www.ava-intel.com/)。

2019年8月、ユーザーの希望や条件を基にAIが適した旅行情報を提案するサービスを行うAVA Travel(アバトラベル)を立ち上げた。

旅行を計画するとき、「何が見たい」「何をしたい」「誰と行く」「予算」などさまざまな条件や希望を基に、たくさんの旅行情報・予約サイトで情報収集する。ただ、自身が求める情報を見つけることは容易ではない。

多くの情報を自動収集し、その中からユーザーが求める情報をAIが判断し提供するAVA Travel(アバトラベル)。ユーザーの旅行をより便利に、楽しいものへと進化させるAVA Intelligence株式会社の取り組みを紹介する。

AVA Intelligence株式会社 代表取締役 宮崎祐一さん

―AVA Travelを立ち上げた理由と強みを教えてください。

宮崎 以前、私が旅行を計画したときに、いろんなサイトや個人のブログを見たりして、手間と時間を要した体験から、もっとスムーズにできるやり方があればいいのにと考えたのがきっかけでした。

旅行代理店はオフラインとオンラインの2パターンあります。オフラインは、旅行したいけどどうしようという人が窓口に出向き、提案されたプランが希望に沿っていれば予約するシステムです。一方、オンラインは、ユーザー自身が行き先を決め、その上で宿泊施設も予約しなければなりません。

AVA Travelは、2つのパターンの便利なところを合わせたようなものです。ユーザーが旅行代理店に足を運ばなくても、希望や条件をサイトに送ると、それに応じた旅行先、観光スポット、宿泊施設、食事処などをおすすめ順で受け取れ、最終的にサイトの中で宿泊施設の予約までできるのが強みです。こうした行き先が決まっていない人に特化したオンラインの旅行代理店は、これまでありませんでした。

ユーザーの希望に沿った観光スポットを提案

どのような想いで「D-EGGSプロジェクト」に参加されましたか?

宮崎 東京で事業を展開しているなかで、どこか地方で深掘りした旅行プランを提案できないかと思っていました。ちょうどその時、「ひろしまサンドボックス~D-EGGSプロジェクト」に携わっている企業から応募の誘いを受け、ぜひともトライしてみたいと応募しました。応募を決めてからは、広島県の何処で、誰と、どのように活動していくかなど、いろいろ考えました。

尾道市を選んだのは、なぜですか?

宮崎 これまで広島県には行ったことがなく、観光スポットといっても宮島の厳島神社と原爆ドームぐらいしか思い浮かびませんでした。そのなかで、尾道市は、たくさんの古刹が集まる坂の町やしまなみ海道一帯には観光資源がたくさんあり、興味を持ちました。採択される前に、尾道市街や瀬戸田町を訪問。情緒に富んだ景観や海に感動しました。尾道市役所の方からは、これから観光に力を入れていくという話を伺い、ここでならやりがいがあると強く思いました。

美しい景観の瀬戸田水道

実証実験の準備は、どのように進められていますか?

宮崎 尾道市街のシェアオフィスに利用登録し、瀬戸田町では宿泊施設に滞在して活動しています。「D-EGGSプロジェクト」にエントリー中、2020年のワークショップの発表会に参加して知り合った、瀬戸田で宿泊施設SoilSetodaを運営している小林さんに協力してもらえることになりました。

採択されてからの2回の訪問では、そこに居なければ手に入らないマニアックな観光情報を集めるために、それぞれ2~3週間滞在。これまでに集めたおすすめスポットを実際に巡り、AIが提案する上で必要な文化・歴史・芸術など共通性のあるデータを集めたり、写真を撮ったりしました。

それらを基に開発し、完成したものを小林さんに見てもらい、小林さんから教えていただいた情報がどれくらい提案に反映されているかなどをヒアリング。多くのディープな情報が整理されていると高く評価していただきました。加えて20代から30代向けの情報がもっとあればいいとのアドバイスも。今後は、のんびりしたいけどアクティブにも楽しみたいというような、相反する条件が重なってもヒットできるように、精度をもっと高めていきたいと思います。

小林さんから、提案の出来をヒアリングする宮崎さん

あなた方の取り組みは、社会にどのようなインパクトをもたらしますか?

宮崎 このたびのプロジェクトを機に、東京出身だからこそ気付く深掘りした尾道観光のポイントを私たちが全国に発信し、発信をみて実際に訪れた観光客に対して現地で小林さんが盛り上げてくれるのがありがたいですね。地元にとっても、見逃されがちな町の魅力を再発見するきっかけになると思います。

今後の課題は、ディープな情報をどのように更新し続けられるかです。旅行者から情報を上げてもらう仕組みや、施設を運営しているからこそ発信できる情報の窓口になるようなプラットホームにしていけたらと考えています。プロジェクトの成果発表までに、開発したものが実際に町の観光にどれほど寄与したのかを表せるように、アンケートで数値化を図りながら改善点をカバーし、完成度を上げていきたいです。


株式会社しおまち企画 取締役 小林亮大さん

コーヒーの焙煎・販売、物販、カフェ、宿泊施設の企画・運営に携わりながら、地元商店街のホームページを作成したり、お店のロゴを制作したり、企業と商店会のタイアップイベントが円滑に行われるように仲介したりと地域活性化の手助けをしています。

東京出身の私が瀬戸田町に目を付けたのは、新たな宿泊施設の誕生を機に賑わいを創出していこうという機運が高まっていて、地元の人たちと一緒に地域を面白くしていきたいとの想いがあったから。宮崎さんには、施設の運営者目線やアプリ業者目線での改善点のアドバイスや、地元の人しか知らない情報提供など協力を惜しみません。宮崎さんの挑戦が観光地としてのポテンシャルを上げていくことなり、観光客の増加につながるのではと期待しています。

 

取材:舟木正明 撮影:岸副正樹