2020年、大三島にオープンした「しまなみ海道WAKKA」は、島の魅力を最大限に楽しめるよう、宿泊、カフェ、20種類以上の体験やアクティビティが揃うサイクリング複合施設。ここでは、多くのスタッフがイキイキと自分らしく働いています。ツアーを担当する古林大亮さんとカフェ部門のチーフとして働く入村美由紀さんに、WAKKAで働くまでの経緯、大三島の魅力とWAKKAでの働き方についてお聞きしました。

大三島、そしてWAKKAと出合うまでの経緯を教えてください。

大三島出身で2020年春のWAKKAオープンと同じタイミングで島にUターンした古林さんと、香川県出身で2020年の秋に大三島のワイナリーを訪れた際に偶然WAKKAを見つけたという入村さんは、ともにWAKKAで働く仲間です。

古林さんが幼少期から住んでいたのは、実はWAKKAの建物のご近所。この風光明媚な眺めに囲まれ、4歳から18歳までの時期を過ごしました。大学進学を機に大三島を離れた後、観光大国ニュージーランドへ行き観光に対する考え方に刺激を受けて帰国しました。2019年には瀬戸内国際芸術祭2019が開催される瀬戸内の島、直島のコーヒー&ハンドメイドショップのスタッフとして働いていた古林さん。「その年の秋祭りの時期に帰省したら、なんだか隣の敷地にお洒落な建物が建っていて…。何ができるんだろうと興味を持ったんです。来春にはオープンすると聞き面接を受けたところ、オープニングスタッフとして採用されました」と古林さん。オープンからしばらくはカフェ部門で経験を積んだ後、現在はツアー関係の仕事を中心に担当されています。

一方、入村さんは、お隣の香川県出身。2017年に「語学を1から学びたい」とフランスへ語学留学し、帰国後に直島の宿泊施設で働いた後、2020年に大三島を訪れ、ワイナリーでのアルバイトと並行してWAKKAでも仕事を始めたそう。「ワインが好きなので、ワインの仕事を探していたんです。大三島にあるワイナリーでの収穫ボランティアに参加した際、たまたまWAKKAの前を通りかかったんです。パッと見た感じでは何の施設かわからず、地元に戻ってから調べてカフェや宿泊ができる施設だということを知りました。アルバイトを募集していて、直島でやっていた業務と似ていたので、ここならお役に立てるかもと思ったのがWAKKAで働くようになった理由ですね」。好きなことを仕事にして各地で働いてきたお二人同様、WAKKAのスタッフは個性的な面々が揃っているのだそうです。

幼い頃から眺めてきた海を見ながら話す古林さん。

「実際に来ないとわからないことを知れるだけで楽しい」と笑う入村さん。

WAKKAでの現在の仕事内容とやりがいについてお聞きしました。

「島では身近なところで習えるので、小さい頃からカヌーは得意でした。大学時代には、高知・四万十川でカヤックガイドをしたんです。ニュージーランドでは農場の手伝いに始まり、宿泊施設の清掃からレセプション業務まで実際に働きながら学びました。帰国後は岡山のゲストハウスでイベントの企画・運営、そして直島ではDIYでのショップづくりから実際の運営まで経験しました。それが全部詰まっているのがWAKKAだったんです」と古林さん。バリスタとしてコーヒーを提供するほか、期間限定のドリンクメニューなどを考案する一方、島という立地を活かしてさまざまな企画を立案し、企画として練り上げて実際に案内することも担当。「WAKKAの社長は、何でもやってみようという気持ちが強いので、スタッフのやりたいこと、チャレンジしたいことに対してブレーキをかけられることがありません」。実際、この仕事に就いてから小型船舶と遊漁船の免許も取得したという古林さんは、「海遊びも釣りももともと趣味だったこと。その趣味が仕事につながったWAKKAでの業務は、僕にとってまさに理想的です」と笑顔で話してくれました。

カフェ部門のチーフとして、一般のお客様へのランチとカフェ営業、宿泊のお客様への夕食と朝食の提供を行う入村さんは、大三島のシェアハウス「上条の家」で暮らしながらWAKKAで勤務。「身軽なので自由にあちこちに行けるというのもあるかもしれませんが」と前置きした後、現在の暮らしを「移住という気負いは全くないんです」と説明してくれます。「ここでお役に立てることがまだあるのなら、その間は滞在しようかという気持ち。ただ行かなければわからないと思うことに、たくさん出会えるのは大きいですね。自分が好きなことで自分が役に立てるというのは、とてもバランスが取れている状態なんだと思います」とにこり。「もともとフットワークが軽くて、行ってから考えるタイプなんです。やりたいことを悶々と考えて、時間だけ過ぎて後悔するのは嫌なので。今はワインの勉強をしたいと思っているんですが、ここでは働きながらワインエキスパートの試験勉強をしたり、ワインの醸造所をすぐ近くで見ることができたりするので、満足度は高いですね」と日々を満喫している様子。休日には地元の高松に戻って飲みに出かけたり、原付バイクで他の島のカフェを訪ねたり、島での生活を思う存分楽しんでいるのが伝わってきました。

お二人が通りがかった際に気になったというのもわかる洗練された雰囲気のWAKKAの外観。

古林さんの考案で、月替わりで世界のドリンクを提供。11月まで提供されていたベトナムの塩コーヒーは、大三島に工場がある『伯方の塩』とWAKKAオリジナルブレンドのコラボで生まれたもの。

WAKKAでの今後の展望について。また移住を考えている人に向けたメッセージを。

「好きなことしか続けられないなと思ってWAKKAに飛び込みましたが、やっぱりこういう生活が好きな人たちが集まってくるので、お互いに良い刺激を与えられる仲間が多いことが魅力です」と話す古林さん。その話に入村さんも大きく頷きつつ「リゾートや観光地で働く場合、楽しくないと続かないんです」と続けます。「あちこちから、いろんな経験を持っている人が集まってきているのがWAKKA。得意なことがそれぞれ違うので、その力量を最大限に活かして、みんなで役割分担しながら運営できればいい」とお二人は話します。

今後の目標についてお聞きすると、古林さんは「島って、いろんなものがあるけれどまだまだ活用されていない場所なんですよね。だからまだまだやりようがあるし、何でもできる。せっかくWAKKAという何でもやらせてもらえるところにいるので、ツアー企画や運営でも、どんどん新しいことをやっていきたいと思っています」。いずれ自分の店舗を持つのが目標だという入村さんは現在の状態を「勉強させてもらっている」と言います。「大三島は観光地なので、お客様のほとんどは遠いところから来られています。構えが日常的ではないので利用しづらいと思われているのか、まだまだ地元の方には足を運んでもらえていないんです。それをどう払拭していくかを今後は考えていきたいですね」。

「何を不便と感じるかだと思うんですが、たまに島外に出ることで解消されることも多いです。何か不便なことがあっても、それはさておきこれをやってみよう、というような人にとっては、大三島はとても住みやすいと思うんですよね」と古林さん。「情報が入りやすいですし、行動力があれば飛び込みやすい場所だなと思います。仕事にしても誰かに聞けば、何か仕事は見つかります。やりたいことがあって、力が発揮できれば、充実できるはず。もしダメだったら別のことを考えればいいですし、とりあえずアタックしてみるのがいいと思います。人生って短いですよ」と、これから移住を考えている人に向けてエールを送ってくださいました。

古林さんは、ラテアートをWAKKAに勤務し始めてから覚えたそう。

「チーフという立場は責任もあるけれど好きなことで誰かの役に立てるという喜びもある」と話す入村さん。