今回はふるさと納税の寄附金の使い道紹介 第2弾。使途の分類5つの中から「観光の振興」に関わる事業をピックアップします。
富良野の冬の魅力をより伝えていくため富良野に降る雪のブランド化を図る取り組み、furano bonchi powder project (富良野盆地パウダープロジェクト)です。一体どんなことを行っているのでしょうか?

富良野の雪質を定量的に示す「ふわサラ度」予測

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富良野スキー場

富良野盆地に降り積もる雪はふわふわ・サラサラで、世界的にも非常に優れた雪質だと言われています。水分量が少なく踏むとキュッキュと音がする、まるで片栗粉のような雪で、俗に「パウダースノー」と呼ばれます。
雪に馴染みのない方は驚くかもしれませんが、富良野に降る雪では雪玉を作ることが難しいのです。なぜなら軽くて乾燥した雪同士はくっ付いて固まってくれないから。
このふわサラな雪が積もる富良野スキー場は、スキーなどのウィンタースポーツをされる方にとってまさに天国。毎年国内外から多くの方が富良野を訪れます。

furano bonchi powder projectではこの富良野盆地に降るパウダースノーをbonchi powder(盆地パウダー)、略してbonpow(ボンパウ)としてブランド化。その中の取り組みとして今シーズンから始まったのが、雪質の良さをより分かりやすく伝える「ふわサラ度」予測の運用。数値が50以上の時に降ってくる雪が「パウダースノー」であると仮説を立て、実証実験を行っています。

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公式サイトトップ 左下の数値が先5日間の「ふわサラ度」予測

「ふわサラ度」はどうやって数値化している?

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北見工業大学准教授 白川龍生 先生

ご協力いただいているのは、北見工業大学准教授 白川 龍生(しらかわ たつお)先生。2022年12月〜2023年3月の間、富良野スキー場に観測エリアをつくり調査を開始しました。
まずはこのエリアに降る雪を細かく調査。白川先生は2週間に1回ほど富良野で雪質調査を行い、それ以外の時間は現地にいるプロジェクトメンバーがパウダースノーを感じた時に、雪の写真とともに白川先生に連絡をします。白川先生はその時の気象データから富良野の状況を確認し、結果的にこのエリアに降る雪のうち「パウダースノー」と呼んでいるのは3種類の雪質だと仮説を立てました。

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★印の雪がパウダースノー「bonchi powder」と呼ばれている雪(仮説)

そしてふわサラ度を計算するため、降雪量を降水量で割った値で雪の密度を表す方法の一つ、雪水比(ゆきみずひ)を使用。値が高いほど降水量あたりの降雪量が多い、すなわち空気が多く含まれる乾いた雪であることを示し、富良野は他に比べこの数値が高いことが分かりました。また、盆地ならではの低い気温により雪が溶けにくいことも雪質の良さの要因の一つだとしています。

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道内主要スキー場付近の雪水比と平均気温をプロットしたグラフ

数字を味方に、富良野の雪を分かりやすく伝える

furano bonchi powder projectの発足や「ふわサラ度」発案の背景を、プロジェクトメンバーの一人である、富良野市 経済部 商工観光課 笹田係長にお話を伺いました。

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経済部 商工観光課 笹田係長

ー 富良野の雪質の良さを定量的に表すというのは、どんな流れから発案されたのでしょうか?

「スタートは『みんな富良野の雪をパウダースノーって言うけど、他地域の雪と比べてどう違うのかフワッとしているよね』という議論でした。
その中で、旭川空港が就航率 99.1%(※)というプロモーションを実施していて、豪雪地帯にある空港なのに限りなく100%近く飛行機が離発着するという強みが分かりやすく表現されていて、数字で魅力や強みを表せるのは説得力があるという視点からbonchi powderの定量化がスタートしました。」

※2016年度実績


ー furano bonchi powder project 発足にはどんな経緯があったのでしょうか?

「このプロジェクトは、コロナ禍の2020年に立ち上がった富良野市と市内関係団体による富良野観光ウェブキャンペーン実行委員会という前身組織から始まっています。
観光客を市内に呼び込むための施策を考え実行する組織で、名前の通りインターネット(WEB)を活用して富良野の情報をプロモーションしたり、多くのお客さんを呼び込むためのコンテンツ開発を行っていました。
富良野駅前公園にある噴水公園のライトアップや、冬になまこ山という小高い山から花火を打ち上げたり、富良野スキー場の一角でテントサウナを設置したりと、色々なコンテンツを実施していました。
コロナが終息に近づき次の展開を模索していた時、何か形に残る冬のコンテンツが必要ではないかという話から派生し、富良野に降る雪のブランド化を目指すfurano bonchi powder projectとして新たに動き出しました。」

市民・観光客とともに予測精度を上げていきたい

ー 現時点で「ふわサラ度」予測は仮説段階とのことですが、今シーズンはどんなことに取り組まれるのでしょうか?

「予測数値の提供を開始したばかりですので、今シーズンは実際に体感としてどうなのか?という点をチェックする段階です。これには僕らプロジェクトメンバーだけではなく、スキーヤーや市民の方々からもリアクションをいただきたいと考えています。
例えばInstagramで #bonpow を付けて、『今日はふわサラ度40だったけどパウダースノーだと感じた!』であったり、『ふわサラ度70の日にスキー場で滑ってみたら、ベストコンディションだった!』など、数値と体感の差を発信していただきたいです。それによって予測の調整を行い、精度が高まっていくと思っています。」


ー 「ふわサラ度」予測のリリースをきっかけに、市内外の方にどんな変化をもたらしたいと考えていますか?

「まずはふわサラ度の認知を拡大して、北海道を長期で訪れる方がふわサラ度予測をきっかけに富良野の雪に興味を持ち、行ってみようという流れを作れたらと思います。
またプロジェクトが始まった当初から、観光との親和性が高い食べ物との連動も話題に上がっているので、ゆくゆくは食をキーにした誘客コンテンツも実施していきたいですね。

市民の方の中には雪をプラスに捉えられていない方もいると思います。そこでこのプロジェクトをきっかけに富良野の雪の希少性に気付いたり再認識していただき、富良野という土地に誇りを持っていただけたら嬉しいです。」

『2023-2024 WINTER SEASON KICKOFF EVENT』レポート

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富良野の平野部に初雪が降った11月11日(土)。『2023-2024 WINTER SEASON KICKOFF EVENT』が開催されました。
プロジェクトに関わる白川先生の特別講演を皮切りに、北海道大学助教 的場 澄人さん、プロスキーヤー 木村 公宣さん、フォトグラファー 佐藤 圭さん、元全日本ナショナルデモンストレーター 石黒 孝幸さんに白川先生を含めた、富良野に関わりの深い5名によるトークセッションが行われました。

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トークセッションの様子 (左から 白川龍生さん、的場澄人さん、木村公宣さん、佐藤圭さん、石黒孝幸さん)

トークセッションでは、富良野の雪・冬の魅力がそれぞれの視点から語られ、木村さんは「本州では除雪のことを『雪かき』というが、北海道、こと富良野では『雪はね』と言う。これは掻くことをせずともはねるだけで十分なほど軽い雪である証明では?」と話され、佐藤さんは「スキー場が街中から車で10分というのは、コンスタントに撮影をする自分にとって嬉しい立地。」とおっしゃるなど、外から見た富良野の魅力を聞き、来場された市民の方々は前のめりになってお話を聞いているようでした。
また会場では食べ物との連動第一弾として、富良野ワイン工場で作られたぶどう果汁のかき氷が無料提供され、富良野に降る雪のようなふわサラなかき氷に驚く方も見られました。

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ぶどう果汁を使ったかき氷 このかき氷のふわサラ度は『77』とのこと

イベントの最後、白川先生は「ふわサラ度予測の精度向上やbonchi powderのブランド化に、市民の方々と一緒に取り組んでいきたい、育てていきたい」と話され、プロジェクトの周知やウィンターシーズンのキックオフにふさわしいイベントとなりました。

▼【YouTube】イベントの全貌はこちら

富良野スキー場リフト券の返礼品

※この他、リフト券3枚・5枚・10枚セットもございます。