田村市都路町にある都路行政局。
その一角に、毎週水曜日だけ開かれる小さな交流スペースがあります。
名前は「ちょこっと」。
名前の通り、用事のついでにちょこっと立ち寄って、コーヒーを飲んで、誰かと少し話して帰る。そんな気軽な場所です。地域の方はもちろん、行政局に手続きで来た方、打ち合わせで訪れた方、都路町に住んでいない方も立ち寄ることがあります。
かしこまった集まりではなく、誰かに会いに行くというほど大げさでもない。でも、そこに行くと誰かがいて、少し話せる。「ちょこっと」は、そんな日常の中の小さな居場所です。
今回は、都路町の集落支援員として活動する青木菜々さんにお話を伺いました。

ふらっと入れる、ちょうどいい場所
地域には、集会所などで開かれるサロンや集まりがあります。けれど、地区ごとの集まりは、どうしても参加する顔ぶれが決まりやすいもの。初めての人にとっては、少し入りにくく感じることもあるかもしれません。
「ちょこっと」は、そうした地区の枠にとらわれず、誰でも立ち寄れる場所として開かれています。
場所が都路行政局の中にあることも、気軽さにつながっています。行政局での用事を終えたあと、少し座ってお茶を飲んでいく。会議や打ち合わせで来た方に、声をかけてコーヒーを飲んでもらう。わざわざ予定を立てなくても、日常の流れの中で立ち寄れるのが「ちょこっと」の良さです。
靴を脱がずにそのまま入れることも、意外と大切なポイント。玄関で靴を脱いで、あらためて中に入るとなると、少しだけ気持ちのハードルが上がります。でも、ここではそのまま入って、そのまま座れる。
ほんの小さなことですが、その小さな入りやすさが、安心して立ち寄れる雰囲気をつくっています。

ただのお茶飲み場ではなく、地域のことが聞ける場所
「ちょこっと」には、地域の方が自然と集まります。その場で交わされる何気ない会話の中には、地図やインターネットだけでは分からない、地域の記憶や暮らしの情報がたくさんあります。
そんな「ちょこっと」で、青木さんが印象的なエピソードを教えてくれました。
ある日、市外の方が、都路町にいる知り合いを探して都路行政局を訪れたことがあったそうです。ただ、行政局ではすぐに分からず、ちょうどその日開かれていた「ちょこっと」を案内することに。
その場にいた住民の方たちが話を聞くと、「もしかすると、あの人かもしれない」と少しずつつながっていき、探していた方へたどり着くきっかけになったといいます。
地域で暮らしてきた人たちの中にある、名前や場所、人とのつながり。「ちょこっと」は、そんな地域の記憶が自然と集まる場所でもあります。
誰かの名前。
昔住んでいた場所。
近所の人とのつながり。
そうした情報は、資料として残っているものばかりではありません。地域で暮らしてきた人たちの中に、自然と蓄積されているものです。
「ちょこっと」は、その記憶がふと集まる場所でもあります。移住を考えている方にとっても、こうした地域の声は心強い情報になります。
気になる家の近くにはどんな人が住んでいるのか。
そのあたりはどんな雰囲気なのか。
実際に暮らしている人は、どんなふうに感じているのか。
制度や物件情報だけでは分からない、暮らしの手触りのようなものが、ここでは聞けることがあります。行政局の中にあるため、手続きや制度のことを聞きたい時にも相談しやすい距離感です。
子どもたちとのつながりも、ちょこっとずつ
「ちょこっと」は、行政局の中で人を待っているだけの場所ではありません。月に1回ほど、小学校へ出向く「出張ちょこっと」も行っています。昼休みの時間に小学校へ行き、子どもたちと遊んだり、話をしたりする活動です。昔に比べると、地域の大人と子どもたちが自然に触れ合う機会は少なくなっています。
先生や保護者以外の大人と話すこと。
自分の話を聞いてもらうこと。
地域の人に名前を覚えてもらうこと。
どれも、特別なようでいて、暮らしの中ではとても大切なことです。子どもたちは、学校での出来事や自分の話をたくさん聞いてほしそうに話してくれるそうです。
また、都路こども園の子どもたちが散歩の途中で近くを通ることもあり、地域の方の膝の上に自然と乗ってくることもあるのだとか。その光景を想像すると、少し笑ってしまいます。けれど同時に、子どもたちが安心して近づける大人が地域にいることの大切さも感じます。地域の人たちに見守られながら、子どもたちが育っていく。子どもたちの声が、地域の中にある。「ちょこっと」は、そんな多世代のつながりも少しずつ育てています。

手話教室、野菜販売など、季節の行事の開催も。
「ちょこっと」では、日常的なお茶飲みだけでなく、有志による教室や季節のイベントも開かれています。
たとえば、手話教室。老人ホームでボランティアとして手話を教えているご夫婦が、「ちょこっと」でも教えてくれるようになりました。きちんと申し込んで、最初から最後まで参加しなければならない講座ではありません。途中から来てもよく、誰が参加しても大丈夫。そんな自由さがあります。

そのほかにも、地元の方が作った野菜を販売したり、旧正月の時期には甘酒を振る舞ったり、団子さしを行ったりしています。団子さしに使う木は、住民の方が山から切ってきてくれたもの。都路こども園の子どもたちと一緒に飾ったこともありました。

団子さしの様子
地域のつながりの変化。元気な時に会えるように
青木さんが交流の場の必要性を感じている背景には、地域のつながり方の変化があります。
かつては、近所の家に自然と人が集まったり、地区ごとの行事に子どもも大人も参加したりすることが、今よりも身近にありました。でも、暮らし方が変わり、学校や地域の行事の形も変わる中で、住民同士が顔を合わせる機会は少しずつ減っています。顔を合わせる機会が減ると、同じ地域に住んでいても、話すきっかけがなくなっていきます。そして久しぶりに人が集まるのが、お葬式の時になってしまったりする。青木さんは、そうした状況に寂しさを感じているといいます。
元気な時に会って、話して、笑える場所があること。
「ちょこっと」は、そんな日常のつながりをつくる場所として、今も地域の中で開かれています。
青木さん自身も、集落支援員として活動する前は、地域の人と関わる機会が多かったわけではありませんでした。職場と家を往復する日々の中では、同じ地域に暮らしていても、顔と名前が一致する人は限られていたといいます。
けれど「ちょこっと」を通して、顔を知っている人、名前を呼べる人が増えていきました。地域のことを教えてもらいながら、自分自身も地域の中に少しずつ入っていく。「ちょこっと」は、訪れる人だけでなく、青木さんにとっても地域を知る場所になっています。
移住を考える方にも、まずは“ちょこっと”来てほしい
移住を考える時、家や仕事、制度の情報はもちろん大切です。でも、実際に暮らすとなると、それだけでは分からないことがたくさんあります。
近所にはどんな人がいるのか。
子育てはどんな雰囲気なのか。
農業を始めた人はいるのか。
困った時に、誰に聞けるのか。
知らない土地に入っていく時、知っている人がひとりいるだけで、少し安心できるものです。「ちょこっと」は、そんな最初のひとりに出会える場所かもしれません。
毎週水曜日、都路行政局の中で開かれている交流スペース「ちょこっと」。
地域の方も、都路町が気になっている方も、行政局に用事がある方も、まずはお茶を飲みに立ち寄ってみてください。
大きな用事がなくても大丈夫です。
ちょこっと座って、ちょこっと話してみる。
そこから、都路町の人や暮らしが、少しずつ見えてくるはずです。

交流スペース「ちょこっと」
場所:都路行政局1階(福島県田村市都路町古道字本町33-4)
開催日:毎週水曜日 10:00〜15:00(年末年始、祝日を除く)
この記事を読んで田村市での生活に興味を持った方、移住を検討している方は、お気軽にたむら移住相談室へご相談ください。
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