ファブレス型の生産体制を全国に分散させ、増やしていく

スタートアップや、地域事業立ち上げの際は資金が潤沢にない場合がほとんどです。この場合のビジネスの基本は、初期投資や固定費を押さえつつ、高付加価値のサービスを提供するビジネスモデルで当面の利益を生み出すことがポイントになります。小さくスタートしやすいのは、飲食店やコンサルティングといった業態になりがちです。一方製造業は、機械設備の導入などで初期投資が莫大になる上に、一般的に小ロットの生産が難しく、販売チャネルを持たない場合には大きな在庫を抱えるリスクを持ってしまいます。

日本酒応援団は、この製造業に参入する際の課題を、「ファブレス」という方法でうまく解決しているビジネスモデルと表現できるかもしれません。ファブレスとは、従来の製造業と異なり「工場を持たない」メーカーのことを指します。製造そのものは他社と協業して行い、自社は企画やマーケティング・販売などに集中するビジネスモデルのことです。日本酒応援団の場合は、ファブレスにおける”工場”の部分が「使用されていない、眠った酒蔵」にあたります。日本酒応援団にとっては、ファブレスのビジネスモデルを取ることで、初期コストを抑え、創業1年目から本格派の日本酒を仕込むことができるのです。

もちろん、ここで下請けに安く出すだけといった態度であれば、地域の酒蔵が疲弊するだけの悲しい事業になっていたでしょう。しかし日本酒応援団の場合は、主に遊休資産を活用して、日本酒そのものの生産量を増やすので、地域の酒蔵にとっては純粋に生産量が上がる施策となります。さらに、日本酒応援団のスタッフが酒造りの現場にしっかりコミットするので、人手不足の解消という側面もあります。

最初はたった1箇所の酒蔵からスタートしたプロジェクトですが、2年目には島根県掛合に加え石川県能登、3年目に埼玉県上尾、大分県国東と4箇所、今年度から更に新潟県長岡と岡山県鴨方も加わり6箇所と急拡大を遂げており、次年度以降の引き合いも増えているようです。ひとつの酒蔵に依存するのではなく、全国にある複数の酒蔵と提携できるのも、ファブレスによるフットワークの軽さが関係しているといえそうです。