ここ十数年間で知名度をあげた、「今治タオル」。優れた吸水性が売りの地域タオルブランドである「今治タオル」は、そのブランド力保持の為、独自の品質基準を設けている。基準を満たしたタオルは商標をつけて、販売することができる。この商標がついていることで、「今治タオル」として、ここ数年で一番、ブランドを有することに成功したタオル業者は多い。しかし、今治タオル業界を牽引するIKEUCHI ORGANICはあえて、この商標をつけずに販売する。製造者は何を思いタオルを作るのか。販売者はどのようにこの商品を売るのか。作り手と売り手の思いに迫ります。

記事のポイント

  • 地域ブランド力の甘い罠とは
  • 商標に頼らないブランド力確立のために
  • 作り手の想い、売り手の想い

概要/プロフィール

IKEUCHI ORGANIC 株式会社
全ての人を感じ、考えながら、安全と環境負荷に配慮し、オーガニックテキスタイルの企画・製造・販売を行う。(タオル、マフラー、ベッドリネン、インテリアファブリック、アパレル素材など)「今治タオル」のブランド力を持たずしても売れる商品作りに成功している今治のタオル製造者。

株式会社エイトワン
今治タオルを取り扱うタオル専門店「伊織」、ホテル「道後やや」、旅館「道後夢蔵」、愛媛みかんを使った商品を作っている「10FACTORY」等の特産品ブランド店運営。世界中に愛媛のファンを作るため、愛媛の特産物を売る多岐事業展開小売業者。

「今治タオル」基準

「『今治タオル』と言うと『今治タオル株式会社』が作ったタオルだと思ってる人がたくさんいるんですよね。」
そう語るのは今治タオル製造者の池内計司さん。

今治タオルとは、愛媛県今治市を中心に西条市、松山市などで生産された地域ブランドタオルの総称。この地域は日本最大のタオル産地で、国産タオルの6割弱のシェアを有する。
安価な中国産タオルが出回り、苦境に立たされている中、そのブランド力と高い品質で、独自のポジション確立に成功している特産品である。

しかし、今治市周辺で製造されているタオル全てが今治タオルを名乗れるわけではない。

  • 吸水性、脱毛率、パイル保持性といったタオル特性の基準
  • 光、洗濯、汗、摩擦への耐久を測る染色堅牢度
  • 引張強さ、破裂強さ、寸法変化率、メロー巻き部分の滑脱抵抗力といった物性
  • 有機物質である遊離ホルムアルデヒド

参考)

今治タオル工業組合より

この基準は決して安易に満たせるものではない。

吸水性を例にとって見てみる。

今治タオルの「5秒ルール」を試す事ができるブース
(伊織、道後湯之町店タオルとくらす研究室にて)

手前が一般的なタオル、奥が伊織の扱っている今治タオルだ。
今治タオルの認定基準は
5秒以内(「未洗濯」と「3回洗濯」の2回の検査に両方とも合格)
に吸水して沈むというもの。

実際、水に浮かべてみると、今治タオルはすぐに水を吸って沈みだすのに対し、一般的なタオルはなかなか沈まない。

これらの厳しい基準を満たして初めて、「今治タオルブランド 認定商品」を名乗ることができるのである。
そしてこの厳しい基準があるからこそ、今治タオルの高い品質が保たれているのである。