作り手の思い

厳しい基準の甲斐あってか、そのブランド力を着実に伸ばしている「今治タオル」。
限られたタオルにしかつけることが許されていないその商標を、敢えてつけない「今治タオル」の製造者がいる。

IKEUCHI ORGANIC株式会社。
冒頭の発言の主、池内計司さんが代表を勤めるタオルメーカーだ。
彼らの作るタオルは100%オーガニック。タオルを織る電力にまでこだわり、風力で発電していることから「風で織るタオル」の相性で呼ばれることもしばしば。

なぜIKEUCHI ORGANICは、厳しい基準をクリアしながら商標をつけないのか。

「これからは「個」で売らないといけないんですよ。30社あったら30のコンセプトがないと。」

現在、今治タオル工業組合に加盟しているタオル製造者は108社。加盟製造者が作るタオルは全て「今治タオル」の名で売られている。

「会社によって異なる特徴があるのです。「今治タオル」で大きく括れば良かったというのは終わり。お客さんが特徴や個性が違うタオルを買って、イメージと違うと思ってしまったら、残念なことになってしまうでしょう?」

地域ブランドとして売れていくことは、個々のブランディングや販売促進の負担が少なくなる反面、こういったマイナスに働く面もある。
そんなマイナスの面を出さないため、今治のタオル会社はその品質を保ちながらも、ここで戦える競い合える関係にならないといけないと池内さんは語る。

「そうしないと、『今治タオル株式会社』があるんですか?って言われてしまうんです。」

今治タオルの中でも、その製造者ごとの『個性』を出し、それが認知される必要があるのだ。

売り手の思い

そんな、IKEUCHI ORGANICのタオル。
売り手はこの商標の付いていないタオルになにを思い、どう売っているのか。

「伊織も『伊織でタオルを買いたい』と思ってもらえるようなタオル取扱店を目指しているので、個のブランド力で勝負という点では、相似点がありますよね。」
そう語るのは今治タオル取扱店伊織の代表取締役社長、村上雄二さん。

IKEUCHI ORGANICのタオルの魅力をこう説明する。

「IKEUCHI ORGANICのタオルは良い意味でとんがっているんです。個性があるという意味です。これだけたくさんの今治タオルがあるわけですから、個性がないと抜きんでることはできません。」

具体的には、どう「とんがって」いるのか?

「IKEUCHI ORGANICのタオルは、タオルの持つ背景、ストーリーがしっかりしているんですよね。その甲斐あってか、男性の購入者の割合が他のタオルに比べて多いです。男の人はこういうストーリー性のあるものを好まれるんですかね。あとは、指名買いをされるお客様がたくさんいますね。『IKEUCHI ORGANICのタオルはありますか?』って。こう聞いてくるお客さんがいるのは、IKEUCHI ORGANICくらいですよ。」

IKEUCHI ORGANICのタオルが欲しい。そんなこだわりを持った客が購入するタオル。

その強みは、やはり今治タオルの商標ではなく、IKEUCHI ORGANICの個のブランド力が背景にありそうだ。

「IKEUCHI ORGANICは伝えるのが上手なんですよね。しっかりお客様に伝わっているから、買われる方が多いし、個のブランド力もある。」

大切なのは、地域ブランドではなく、個々のブランド。地域特産物として盛り上がりがあることは悪いことではないが、波に乗るだけ乗って、その陰に隠れて、個々の会社として盛り上がっていけないのでは、未来は切りひらけない。

なにもこれは、今治タオルだけに限った話ではない。地域ブランド力に隠された甘い罠。
そこに引っかかって身動きが取れなくなってしまわないために…。
これから、IKEUCHI ORGANICのように、真の意味で成功する地域特産物製造者が台頭する時代がくることを切に願う。

取材・文・撮影:編集部
写真提供:株式会社伊織

●IKEUCHI ORGANIC 株式会社

住所(本社)
〒794-0084 愛媛県今治市延喜甲762番地
     (東京オフィス)
〒107-0062 東京都港区南青山6-2-13 2F
創業
1953年(昭和28年)2月11日
設立
1969年(昭和44年)2月12日
代表
池内 計司
代表取締役社長
阿部 哲也

●株式会社 伊織

住所
〒790-0862 愛媛県松山市湯渡町10-25
設立
平成27年8月
代表取締役社長
村上 雄二

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