そもそも「業界」って?
「自動車業界」「アパレル業界」「金融業界」「飲食業界」… などなど、確立したビジネスには必ず「業界」があります。当然のことながら、同じ「業界」に所属するのは、同じ事業を営む競合他社ばかりです。「業界団体」や「業界の慣習」など、ややもすると少しネガティブに使われる「業界」という言葉。深く考える機会は少ないですが、考えてみると不思議な言葉です。「業界」を英語に翻訳してみると「industry」と出てきますが、「industry」は明らかに「産業」のほうがしっくりきます。私自身の中では、「同じ”業種”が集まって”業界”を形成し、それが世の中に無くてはならない役割を果たして大規模になると”産業”になる…」というイメージを持っています。だとしたら、「業界」を形成するとことには、2つの大きな意味があると思っています。
1つは、同じ目的や志を持つ人達がたくさんいると意識することで、互いを意識し、情報を共有したり切磋琢磨する意識が芽生えることです。
これが過度な仲間意識や、馴れ合いにまで進んでしまうと、悪い意味での「業界の慣習」になってしまいます。でも、例えそういう業界でも、そこに行くまでには多くの共創関係を生み出しているはずです。
もう1つは、その「業界」自体が「マーケット」を形成し世にその存在を可視化させるということです。もっというと、「業界」自体が価格決定権を持って「食っていける世界」になることです。これも行き過ぎると「談合」などということになってしまう例もありますが、それは一部の特殊な既得権がある「業界」で起こることでしょう。新しい「業界」は、やはり自分たちの事業の「価値」を世に問い、貨幣価値に置き換えることで、経済に組み込まれていく必要があります。そうしないとそれを職業にする人が増えていきません。
この2つは、いま世の中に存在感のある「業界」どれもが経たプロセスかと思います。
地方創生を「業界」化する意味
では、地方創生を「業界」化するというのはどういう意図なのか。「地方創生」自体が「政策の呼称」であることは過去のこちらコラム【「地方創生」と「地域共創」。似て非なるその真意とは?】でも触れました。言ってみれば上意下達のこの言葉は、ともすると”ややネガティブ”にも捉えられがちです。国の大きな予算がついて、その用途について賛否があるのもその要因だと思います。しかし「地方はどこも厳しい状況だし、国の支援を待ってないで、地方(もしくは地域)からボトムアップで良くしていくべきだよね!」ということに異議がある人は少ないでしょう。「地方創生」を「業界化」するというには、「実際にそれを担うプレイヤー達の主体性が必須」です。あちこちの現場を回っているとそういう「主体性のある人達」がすでにあちこちに生まれていることに気づきます。ある意味「地方創生の業界化」は既に着々と進んでいるとも言えますが、それを更に加速したいという思いで「業界化」という言葉を使っています。
この「地方創生業界」は、冒頭に上げた「自動車業界」や「建築業界」などとはちょっと違う性質を持つのではないかと考えています。というのも下図のように、一般的な業界は、同じ製品やサービスのグループであり、各業界の発展を通して世の中に貢献するものです。一方で「地方創生業界」は、様々な業種やサービスを横串にまとめ、しかも直接「地域の発展」を目標にしています。だからこそ、様々な業種業態が連携し、協調しながら進めることが必須でもあるのです。
図:地方創生業界のイメージ
となると、なおさら地域内にとどまらない「情報共有」や「コラボレーション」が不可欠なはずです。そういう業界だからこそ、「業界新聞」的なメディアの必要性も高いのではないか…。それがこのメディアの発想です。「ネイティブ」メディアは、様々な事例を紹介するのと同時に、それらを連携するような役割も担っていきたいと考えています。今はまだその輪の外にいる人達にも、そういう連携が見えるようなものにできると理想的です。そのことで、その輪に入りたいと思えるような発信ができれば最高です。まだまだ模索状態ではありますが、そんな野望を胸にしながら、このメディアを発展させていければと思っています。
文:NATIV.倉重
【著者】ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重 宜弘(くらしげ よしひろ)
愛知県出身。早稲田大学 第一文学部 社会学専修 卒業。金融系シンクタンクを経て、2000年よりデジタルマーケティング専門ベンチャーに創業期から参画。大手企業のデジタルマーケティングや、ブランディング戦略、サイトやコンテンツの企画・プロデュースに数多く携わる。関連会社役員・事業部長を歴任し、2012年より地域の観光振興やブランディングを目的としたメディア開発などを多数経験。2016年3月にネイティブ株式会社を起業して独立。2018年7月創設の一般社団法人 全国道の駅支援機構の理事長を兼務。