東京オリンピック開催時にフランス発のSAKEとして世界への発信を

―フランスでの蔵造りの話は既に具体的に進んでいるのですか?

はい。2019年中にはファーストヴィンテージをスタートさせて、2020年の東京オリンピックに向けて発信していきたいし、お酒と食事を提供する直営店も出店予定です。日本酒を売るためだけではなく、「日本酒を楽しむ」体験も含めて提供したいんです。外国人向けにフランスで造った”SAKE”を出して、そのSAKEを通じてインバウンド・アウトバウンドともに活性化させていきたい。

酒蔵を造る場所ももう決まっているんですよ。カマルグ(Camargue)っていう南フランス・プロヴァンスにあるエリアです。WAKAZEで現在販売中のORBIA(オルビア)という日本酒を造っている蔵がある、山形県の庄内と同じように美しい田園地帯です。フランスの米の98%はそこで作っているそうで、ヨーロッパ中に輸出されているような高級米も採れるんです。そのカマルグで新しい米を作って、米作りから酒造りまで一気通貫でやりたいと思っています。

今、フランス貿易投資庁-ビジネスフランス(=フランス経済の国際化を促進する政府機関)にサポートしてもらっているんですが、昨年7月にも今井と一緒に現地を視察してきたところです。

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カマルグの美しい田園風景

フランスは日本と違って醸造免許が要らないからクイックに造れるのがいいところ。蔵を造る場所と米と水と機材があって、酒造りできる人間がいたらすぐ造れちゃう。日本でやるより断然楽。というより日本の場合、ワインとビールに関しては4か月で免許が下りるけど、現状、日本酒の免許を取ることはできない。だから、日本酒業界に新風が吹かないんです。そうした状況を打破するためにも、外からでも新しい人を入れて新陳代謝をよくしていかないとダメだと思っています。

サッカーも本田圭佑がずっと日本代表じゃダメで、久保だとかのニュースターが出てくることが必要ですよね。日本酒業界においてもそうした改革が起きるよう、まずは僕たちが海外で活躍してノウハウを蓄えて、新たに日本酒を造りたいという人たちをサポートできるようアソシエーションを立ち上げていきたいんです。

未来の起業家誕生の一翼を担いたい

―そうした制度が充実していると、新たに日本酒を造りたいという人も増えそうですね。

事実、世界でも新しい蔵がいくつか立ち上がりつつあって、フランスではうちも含めると近々、5蔵ほど立ち上がるそうです。アメリカやスペインもこれに同じなのですが、その一方でどういう風に蔵造りを進めたらいいかを解説しているサイトもなく、みんなノウハウを知りたがっている。そうした障壁を取り除いて、酒造りしたいという人たちを支えられるようなプラットフォームを創りたいですね。

その暁には、日本の酒造業界は従来のやり方を変えることを考え始めてくれるはず。そのときに僕らは、海外で活躍したウミガメとして日本に戻って卵を産み落とすように、新しい蔵が生まれる環境を整えていきたい。

同時に、WAKAZEの本社を置いている山形県鶴岡市にもしっかり貢献していきたい。今でも、学生向けのイベントなど直接日本酒のPRにならないところからのオファーであっても積極的に受けています。それによって、鶴岡や東北で起業する人が増えてくれたらなという想いがあるからです。WAKAZEの本社がある庄内産業振興センター(山形県鶴岡市)にも、僕がいる間はいろんな起業家志望の人が相談にきてくれるし、鶴岡は起業のホットスポットになりつつある。この輪をさらに広げて鶴岡を起業の聖地にしたい。そこで活躍する人が増えれば、きっと地元の人もみんなハッピーになれると思うんです。

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ORBIAを手にする稲川さん

取材・文・撮影:松本玲子
写真提供:株式会社WAKAZE

●稲川琢磨

和歌山県新宮市生まれ、東京都豊島区育ち。慶應義塾大学理工学研究科で修士課程修了、在学中にはフランス政府の奨学金給費生として2年間パリのEcole Central Parisに留学。前職ではボストンコンサルティング・グループにて経営戦略コンサルタント。2016年に独立・起業しWAKAZEを設立。

●株式会社WAKAZE

  • 代表取締役:稲川琢磨
  • 所在地:山形県鶴岡市末広町5番22号 マリカ西館2階201号室
  • 設立:2016年1月
  • 資本金:900万円

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