世界で唯一のフルフラット寝湯付き客室

「青凪をホテルとしてリニューアルするにあたり、限られた予算をどこに振り向けるか悩みました。15年以上経過した建物ですので、修繕だけでもかなりの予算が消化されてしまいます。全体に投資すると広く浅くで特徴が出ません。安藤忠雄さん設計の建物、全室100平米を超える客室など売りになる要素はありますが、もう少し何か話題になるものはないか。そこで考えたのが、広い客室を活かした『フルフラット寝湯付き半露天風呂』でした。」

青凪で新設した露天風呂は、2メートル四方とかなり広い浴槽の半分がフルフラットの寝湯となっている。その水深はわずか5センチ。従来の寝湯とは全く異なる形状だ。

「温泉好きは長くお湯に浸かっていたいものです。しかし、ずっと入っているとのぼせてしまうし、外は寒すぎる。全国の寝湯をめぐりながら考えついたのがこのフルフラット寝湯でした。深さ5センチは浅すぎると思うかも知れませんが、お湯に浸かった後の湯冷ましにはこれくらいが実はちょうど良いのです。床暖房の上で寝ているような快適さ。寝転んでも耳に水が入らない深さです。ゲストからは思わず声が出たというようなコメントを頂いています」

温故知新が目指しているデスティネーション化=ユニークさの追求のためには、地域の特徴だけに限定せずとも、様々なアプローチがあるものだと感心させられる。

地域が活性化する場としての宿

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青凪のプール「THE BLUE」

一方、外部とのつながりにおいては、地域の人々がホテルの価値を醸成する存在となっている。

「地元の方々とは良い関係が築けています。ホテルは地域の集客装置であり、地の食材をはじめ、地域の取引先からモノやサービスを購入する立場にあります。雇用も生まれますし、宿は昔から、地域の皆様と仲良くなりやすい業態なのです。閑散時期に懇親会を開くなど、積極的にコミュニケーションを図るような取り組みも行っています。ホテルの存在を通じて地域の人々同士が新しく連携することもありますし、宿をステージとしたイベントやアート展示などの企画も進んでいます」

日本の都市部や海外から宿泊客が目指してやってくる目的地として、さらには地域の人々が集う目的地として、人や地域経済のハブとして存在感を示す。温故知新のリゾートづくりは、地方ビジネスに挑む人々の道標の一つになるのではないだろうか。

取材・文:高柳圭
写真提供:株式会社 温故知新

●温故知新

  • 代表取締役:松山知樹
  • 所在地:東京都新宿区新宿5-15-14 INBOUND LEAGUE 601号室
  • 設立:2011年2月1日
  • 資本金:2,400万円

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