昨年に引き続き今年も鳥取へ移住してきた方々にインタビューし、多様な暮らし方や働き方、ライフスタイルなどについてご紹介していきます。

【人の数だけ移住のカタチがある】
今回は、東京からUターンして二拠点生活をしながら仕事やご家族との時間をおおらかに楽しむ尾坂亮さんにお話を伺いました。

プロフィールと移住の経緯

鳥取市出身の尾坂さん。2021年8月にご実家である「ヲサカ文具店」の一角に「ジューススタンド めじろ」をオープンさせたことが話題になりました。

文具店内に『ジューススタンド めじろ』を立ち上げた尾坂亮さん

一方東京では、現在中野周辺で飲食店を3店舗経営されています。

1つはマグロづくしの飲食店『マグロマート』。マグロ専門店であることから遠方からもマグロ好きの方が訪れる大人気店で、ご存知の方もいるのではないでしょうか。

2つ目はマグロマートとは全く違い、近所の方が気軽に来られるお店をという思いで作られた『東灯(とうとう)』。東中野という地域に根ざしたこちらも人気店です。

3つ目はユニークな店名のピザ屋さん『トトト』。生地には鳥取県産の「大山こむぎ」、トッピングにも鳥取の魚介や野菜が使用されているそうです。以前から鳥取でもピザ屋さんで事業展開する考えがあるということで、おいしいピザ作りにも余念がありません。

そのような中、もともと新型コロナウイルス感染症が流行する前から「鳥取で何かやりたい」という思いがあったという尾坂さん。同時にお子さんが生まれたことで子育て環境を考えて鳥取へのUターンを決断。2020年秋頃から鳥取と東京の二拠点生活がスタートしました。

二拠点生活について

現在奥様とお子さんは鳥取。尾坂さんは鳥取と東京を行き来する日々。

基本的に月の半分を鳥取、もう半分を東京で過ごし、月の前半後半で分けることもあれば、1週間ずつ行き来されることもあるといいます。

鳥取では住居を構え、東京では仕事場である事務所の一角に寝泊まりする二拠点生活。

二拠点生活になった理由についてはこのように話されます。

「はじめから二拠点生活をしようと思った訳ではなく、【今までの東京での仕事】、【これからの鳥取での家族との生活・やりたいこと】のどちらも考えると必然的に二拠点になりました」

今回お話を伺い、自分自身のやりたいこととご家族や職場など周りの人たちのことを考えた二拠点生活という選択は、本当に自然な流れだったのだと感じました。

また子育て環境を考えた地方への移住については、奥様も同じ意見だったそうです。
高知県出身の奥様も自然に近いところで子育てがしたいという思いから、鳥取へ来られました。

次に、尾坂さんが二拠点生活をする上で感じていらっしゃるメリットやデメリット、今後の課題について伺いました。

メリット

①常に新鮮な気持ちで仕事に取り組むことができる

仕事においてモチベーションを維持したり新しいことを始めたり、変えていこうとしたり…常にスイッチを入れ続けるのは難しいですが、鳥取⇄東京の移動で必然的に気持ちが切り替わり、意欲的にもなるそうです。

②メリハリのある生活

鳥取と東京、滞在期間が決まっているのでやるべきことが考えやすく、それぞれの時間を有効に活用し仕事やご家族との時間をより充実したものにされています。

③視野が広がる

鳥取に帰ってきたことで、東京にいた頃にはなかった視野の広がりを感じているとおっしゃいます。

スムージーやコールドプレスジュースを作る機材が並ぶ店内

例えば鳥取で始めたジューススタンドの機材などを東京の飲食店でも取り入れてみたり。
二拠点であることで仕事に良い相乗効果が発揮されています。

もちろん東京で培われてきたことが鳥取での事業展開に活かされることも。

「これまでも良い店には人が集まるところを見てきているので、中身のある店を作っていきたいという気持ちが常にあります」

尾坂さんの経験から語られる力強い言葉に、深く頷いてしまいました。

デメリット

①相手に自分の都合を押し付けてしまう

それぞれの滞在期間内で直接会うなどの仕事の対応をするので、滞在期間が短い分、予定を組むにも自分の都合を押し付けてしまうことが多く申し訳なさがあるとおっしゃいます。

②家族への負担

東京期間中は奥様とお子さんは2人になってしまうので、どうしても負担をかけてしまい解決策も今は見つからず…という状況なのだそうです。

特にお子さんが小さいと奥様に負担をかけてしまっていると感じますよね…
よく聞く話では、お子さんも成長し結婚生活も長くなるとお互いのちょうどいい距離感が生まれて、今デメリットに感じている点もこれから変化していくこともあるのかなと、同じく家族を思い、解決策や家族で前向きに捉える方法などつい考え込んでしまいます。

③完全リモートへの難しさ(番外編)

二拠点であることに関わらず、尾坂さんの仕事の特性上遠隔でのやりとりが難しいため、それぞれの仕事を中断してしまう場合があったり、その場以外で仕事が完結することの難しさがあるそうです。

二拠点生活をする上での仕事の課題

二拠点であることで尾坂さん自身が実感されている視野の広がりなどのメリットを、今後会社のメンバーの方々とも共有していきたい考えているそうです。

鳥取での過ごし方

家族(子育て)編

子育て環境を考えた末の鳥取への移住はやはりメリットが多いと語ります。

一つには尾坂さんのご両親が近くにいらっしゃるということ。

東京では奥様と2人で子育てをされていましたが、おじいちゃんおばあちゃんの存在はお子さんにとって自分たち以外の大好きな場所ができたという感じ。

夫婦の負担も分散されて、時にはお子さんを預けて夫婦2人で遊びに行ったりゆっくり会話をしたり。

「東京にいた頃にはできなかったことができるようになった!」

実はこれが結構大事なことだったと気づかされたといいます。

もう一つは鳥取がお子さんと遊ぶには最適な場所であるということ。

「鳥取の良いところは自転車で行ける街中の公園が面白いところです」

と話す尾坂さんとお子さんのお気に入りの場所は、鳥取市では言わずと知れた動物公園と駅南の交通公園。

交通公園の中には道路があり、現在3歳のお子さんの自転車の練習にはぴったり。
どちらもぱっと行ける距離感と気楽さがあり、お子さんもよく行きたがるそうです。

市街地にある鳥取市交通公園

またこれからの時期おすすめなのは、美萩野にあるあじさい公園。
たくさんのアジサイに囲まれた美しい風景が楽しめるのはもちろん、近所の方々が維持管理されている和やかな雰囲気がお好きなのだとか。

コロナ禍であることと小さな子どもを連れての遠出はなかなか気合いがいるので、こんな風に気軽に思いっきり遊べる場所があるというのは、「鳥取、最高じゃないか」と改めて思いました。

何よりもお子さん自身がのびのびと暮らし鳥取になじんでいる姿を見ると、今後も鳥取で過ごしていきたいと思われるそうです。

仕事編

鳥取での仕事も多岐にわたっています。

先にも書いたご実家である「ヲサカ文具店」内に併設したジューススタンド。
かわいいイラストの入ったカップに注がれた色鮮やかなジュース。

旬の果物や野菜を使ったオリジナルフレッシュジュース

取材中、にんじん・パプリカ・りんご・グレープフルーツをミックスしたジュースをいただきました!

目にもおいしいビタミンカラーのフレッシュジュース。
香りに癒され、自然の甘みとほどよい酸味が感じられるすっきりとした一杯♪

文具店内で味わえることもまた一興です。
この日もジュースができあがるまでの時間、文具や本を見ながら過ごすお客さまの姿がありました。

ジューススタンドから見た文具店内の様子

ご両親やご兄妹でお店に立たれる様子がまさにアットホーム!同時に新鮮さもあり、文具店×ジューススタンドの新空間が心地よかったです。

また地域の方々にとっても新しい憩いの場になっているようでした。

そんな尾坂さん、ジュースだけではなくオリジナル文具もプロデュースされています。

その名も“suna”.
鳥取の砂を使ったボールペンです。丸みのあるフォルムにざらっとした手触りの組み合わせがかっこいい一品。

オリジナル文具 “suna”

さいごに

取材直後の4月、鳥取の仕事仲間と共に、駅前の商店街に新たな飲食店『メキシカンタコスショップ メヒポ』がついにオープンしたようです。また鳥取駅周辺の風景が変わりそうですね!

東京だけでなく、鳥取でも複数店舗の経営は大変じゃないですか?とお聞きしたところ、尾坂さんならではの答えが返ってきました。

「特に鳥取では自分だけでやるのではなく、せっかくなら誰かと一緒に作っていくほうが面白いと思っているので、その点は今のところ大丈夫かなと」

自然体でありながら、会話の端々から感じる責任感や高い志。

尾坂さんのようにより自分らしい働き方を選び、ご家族やお仕事仲間と共に築いていく独自の新しいライフスタイルは、これから鳥取やその他の地域でもその人それぞれのカタチでどんどん広がっていくかもしれませんね。

「鳥取は観光名所ではない場所が面白い」と話す尾坂さんの言葉から、何気ない暮らしを楽しむヒントが見つかるのではないでしょうか。

この記事を書いた人

吉井秀三

鳥取市鹿野町在住。東京で20年間IT関係の会社を経て、鳥取にUターン。 鳥取の魅力的な働き方ができる会社や、面白い働き方をしている個人の情報を発信していきます。

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