中国より伝来し、 数多の戦国武将たちの戦陣食としても携帯されたと言われる味噌。
原料・気候・風土に合わせてさまざまな特色を持ち、日本人の食生活に欠かせない必需品である味噌を、明治8 年の創業以来140 年余り、七代に渡って伝統の味を引き継ぐ老舗蔵が『井上味噌醤油株式会社』。

代表である七代目蔵元・井上雅史さん(50)は、工業デザインを学んだ後にモンゴルへ留学した経験のある変わり種。モンゴルで自然とともに暮らす大切さを痛感し、家業の味噌製造もあくまで手造りでという祖先からの教えを守っています。
また、1 児の父でもある井上さん。「子どもたちこそ安心できる伝統の味で育てたい」と食育にも力を入れており、豊かな鳴門の自然と支えてくれる地域への感謝を胸に、美味しくて安全な味噌を家庭に届けるべく、伝統の技に磨きをかけています。

きっかけはモンゴル留学をしていた25 歳のとき。 実家から送られてきた味噌を口にし、その美味しさを守りたいと気持ちが芽生えたんだとか。
「当蔵では、主に4つの味噌を昔ながらの方法で造っています。 いずれも加熱処理をしていない生味噌なので発酵菌が生きている状態です。 醸造期間は半月から5 年以上のものまで様々です。
熟成期間によって色や香り、味わいも全然違います。 短期醸造の白味噌は麹の風味や甘味を感じられ、5 年以上醸造の御膳ねさしは味噌の完熟の世界で、コクと酸味が強くなっています。種類ごとにお味噌汁や調理の下味など違った味わい方ができます」。

井上味噌醤油の強みは原材料として100%国産の「米・大豆・塩」にこだわりながら全て手仕事で行っているということ。 中でも「もろぶた」と呼ばれる古くからの道具を使って手造りする“もろぶた糀” は約40 時間をかけて大切に麹菌を生育しています。

2013 年に「和食」が「日本人の伝統的食文化」としてユネスコ無形文化遺産に登録され、世界各国で和食(日本食)ブームが加速。海外の日本食レストラン数は2015 年(約8.9 万店)から2021 年(15.9 万店)にかけて約1.8 倍に増加するなど海外、特に欧米の富裕層を中心に伝統食品の味噌をベースとする日本食を食する機会が増加。味噌の国際的価値が高まる中、「手仕事の味噌造りには日本人が自然と向き合ってきた知恵がたくさん詰まっています。
例えば雑味の原因となる結露を抑えるために木製の道具を使ったり、木樽を使い続けることで木樽に宿った菌類が新しい味噌の醗酵を助長し、旨味や香りの奥深さを醸します。
そういった発酵を追求する技術には先人たちが試行錯誤を積み重ねてきた歴史があってこそなので、いつまでも現役の技として伝えたいんです」。
「木桶仕込み味噌輸出促進コンソーシアム」に井上味噌醤油の常盤味噌も代表として選出されました。これら一つひとつの丁寧な手仕事によって完成した生味噌はどれも雑味が少ないのが特徴。味は言わずもがな、その手間暇かける伝統の技に国内外から高い評価を得ています。ミシュランの星付きホテルや、パラスホテル(フランス独自の審査基準で5 つ星よりも上にランク付けされる、ホテル格付けの最上位となる称号)のシェフたちを唸らせています。

「手仕事の味噌造りには日本人が自然と向き合ってきた知恵がたくさん詰まっています。
例えば雑味の原因となる結露を抑えるために木製の道具を使ったり、木樽を使い続けることで木樽に宿った菌類が新しい味噌の醗酵を助長し、旨味や香りの奥深さを醸します。そういった発酵を追求する技術には先人たちが試行錯誤を積み重ねてきた歴史があってこそなので、いつまでも現役の技として伝えたいんです」。

 

現在、井上味噌醤油では1994 年の阪神淡路大震災によって倒壊してしまった醸造蔵を再建している最中。木樽を醸造蔵に置いてかつての醸造環境を取り戻したいと、国内でも有数の実力を誇る宮大工や左官職人に協力を仰ぎ、令和5 年の完成を目指しています。

「この醸造蔵を再建することで当蔵に伝わる味噌造りが今後も続けられます。今回の取り組みを復興の記念としまして、新商品の“有機味噌” を作ろうと計画中です。木樽も一から新調するので、木樽が育つまで数年間は味にバラツキが出ると思いますが、それも歴史と思って楽しんでいただきたいです」。

海外での高い評価、国内最高峰の技術を使って再現する昔ながらの醸造蔵や有機味噌への挑戦と日本の味噌文化を牽引する井上味噌醤油。今後もグローバルな展開を考えているのかと思いきや意外にもその目は地元に向いていました。
「味噌は日本の日常の食文化の根幹だと思います。数ある日本食の中でもご飯と味噌汁ほど根付いているものはないです。その大事な食品をすばらしい鳴門の風土を持って醸すことが私たちの仕事だと思っています。価値ある商品をお届けし続けるため少し高めの値段ですが、守り紡いでいる伝統や仕事への誇りなどが味に現れていると信じています。地元の方にその良さを認めていただいて、当蔵の味噌を選んでもらえたら嬉しい限りですね」。

 

 

【企業情報】
企業名:井上味噌醤油株式会社
住 所:鳴門市撫養町岡崎二等道路西113
設 立:1875 年
業 種:味噌の製造、販売

【お問合せ】
TEL:088-686-3251
MAIL:inoue@tokiwamiso.jp
URL:https://tokiwamiso.com/

—————————————————————————————————————————————————-

徳島県鳴門市役所では、事業拡大・雇用拡充・生産性向上・業務効率化等を図り自社を成長させたい地元企業をインタビューし、地元企業の認知度向上と、市内外企業とのつながり創出する事業を行っています。この動画は、市職員が直接地元企業を訪れ、撮影・編集を行ったものです。 特設サイトでは、ほかにも熱い思いをもつ鳴門市の企業のインタビュー掲載していますので、ぜひご覧ください。

【NARUTO.biz】

—————————————————————————————————————————————————