北陸、石川県にある小松市は東京・大阪・名古屋の3大都市圏からほぼ等距離に位置する、人口約10万人の地方都市。市内には日本海側最大の小松空港があり、国内線と国際線が就航している。さらに地上にはJR特急列車が停車する駅があり、2024年には北陸新幹線の駅も開業予定の、アクセス抜群の町だ。

市内はクルマで30分圏内の身近さに海、山などの自然はもちろん、ショッピングモールや学校、図書館、病院、子どもたちの遊ぶ施設も多い。全国的に見ても、安心・快適・利便など全ての指標のバランスがよい、優れたまちとして評価され「住み良さランキング」で全国8位を獲得(出典:東洋経済新報社「都市データパック2020年版」)。「多様な働き方が可能な都市」として第1位にも選ばれた(日本経済新聞と東京大学の2021年調査結果)。テレワークや二拠点生活にも適した、住みやすいまちと評価が高い。

小松駅からもクルマで10分程の場所に位置する木場潟公園

市街地からは美しい白山が望め、大日川での釣りやキャンプ場など自然を満喫できるスポットも多い。クルマで1時間も走れば日本の原風景ともいえる景色に出合える。石川県内で唯一、自然のままの姿を残す潟を取り巻く木場潟公園は、カヌー競技開催地としても有名でウォーキングやバードウォッチングを楽しむ人も多い。そんな自然豊かな小松の中でも、たった1つの場所に心動かされ移住してきたというカメラマンがいる。

理想の景色を探して

小松市の長谷町にある三山写真館。玄関のロゴも印象的

小松市からほど近い、加賀市の片山津出身である三山エリさんは、18歳から東京で暮らし、仕事をしてきた。「東京で結婚してカメラマンをしていましたが、やっぱり自分で写真館をやりたいな、と思ったのが最初の移住のきっかけです」

東京でのお仕事を、一部ではあるが拝見した。雰囲気ある著名人の近影や、広告系も多かったそうだが、どこかに三山さんらしさが垣間見える、そんな作品が多い。そうして仕事をするうちに「誰かの手元に残る写真を撮りたい」と写真館をオープンすることを決意。

「最初は東京から地元の石川県に帰ってきて、金沢で2017年に開業しました。でもビルの老朽化やスタッフが増えたことなど、色々ありまして改めてスタジオを建てようと。それで場所を探すのに、たくさん回りました」

初めは金沢市内で自然豊かなところを探していたそう。

「その時のお客様は、石川県の人が半分くらい、あとは東京や大阪など全国から。それこそ海外の方もいたので、正直“金沢で”という意識しかなかったんです。利便性というか知名度というか、単純に移転という意味でも。だけど自然豊かなところがよかったので、結構郊外まで行って探していました」

そんな時に思いがけず、金沢ではない場所で運命的な景色に出合う。

「行ってみたいなと思っていた、小松のコカチ珈琲さんに行ったら、そこの景色がもうわたしのイメージ通りで。見た瞬間、何これ、すごいなここ!ってなりまして、それから、絶対ここがいい!になりました」と笑った。

小松での写真館オープン

たまたまInstagramで見ていたカフェ。それが運命を決定するとは驚きである。小松でもほんの少し郊外にある、大杉谷川沿いにある店で、目の前にゆったりと流れる水は、目と鼻の先。まさにその隣の土地に、三山さんはスタジオを建てることになる。

スタジオの大きな窓から見えるゆったりと流れる川には、カルガモが気持ちよさそうに泳いでいた

こちらは衣装やメイクなど支度をするスペース。明るくて気持ちがいい空間

「ひとめぼれみたいな勢いはありましたが、もちろん改めて立地について調べました。正直小松とは考えてもいなかったけど、ここからはショッピングモールへもクルマで10分程ですし、実はわたし高校が小松だったこともあって土地勘もあるし、問題ないなと」

金沢から離れる時には、遠いね、小松でも郊外だよね、などと言われたそう。「今のスタジオの場所は確かに少し郊外かもしれませんが、わたし自身はそんなこと全然思っていなくて。“小松の10分”というのは感覚的にとっても近い。どこへでも行けます。移動することも苦ではないし」

お気に入りの場所で仕事をする幸福は、三山さんの笑顔から十分に伝わってくる。「愛犬のタケシもいるので、この環境は最高ですね。ここからも近い十二ヶ滝は、タケシも喜ぶのでよくお散歩に行きます」

小松駅からクルマで20分程の場所にある十二ヶ滝(じゅうにがたき)。三山写真館からはクルマで5分程

十二ヶ滝とは、郷谷川の流れが12の筋にわかれて落下している滝で、豪快な水音が心地よいところだ。4月から6月にかけては雪解けで増水するため、さらに迫力があって美しい場所。もしかしたら命の源でもある「水」が、三山さんにとって重要なものなのかもしれない。

写真館として大切にしていること

小松以外からのお客さんが多い三山写真館。そのほとんどがInstagramで知ってきてくれるという。そんな皆さんから、事前に小松のことを聞かれることもあるのではと尋ねると「そうなんです。ここに来るには、近くに空港もありますよと案内すると、意外と子連れは電車よりも飛行機が短時間で楽な場合もあるから喜ばれます。紹介する温泉やごはん屋さんなども自然と詳しくなりましたね」

そういうアクセスや土地の魅力に加え、前もっての相談が大切だとか。

「事前の打ち合わせはとても大切にしています。お子さんの記念写真であれば、名前の由来とか好きな食べ物とか、1時間くらいとことんヒアリングしてテーマを決めます」

その子に合わせて、撮影の前からセットを作ったりお花を発注したり、ヘアメイクさんと打ち合わせをしたりする。撮影日当日よりも、その準備が大事なのだ。実際の写真を拝見すると、その手作り感には目を見張るものがある。デジタルで出来るものでもアナログで完成させるそのセットは、まさにリアリティの芸術。広告系の仕事をしてきた三山さんのセンスが光る。

スタジオに飾られている過去の作品。それぞれの子どものキャラクターが生きている

愛犬タケシくんと笑顔の三山さん。小松のおいしい飲食店に行くことも楽しみのひとつだそう

三山写真館がきっかけで小松を訪れる人が増えたのは、素敵なことだ。生き生きとこの小松でカメラを構え、愛犬と夫と暮らす三山さん。結果的にたまたま小松に住むことになったとは思えないほど、ここでのお仕事を楽しんでいる。

 

■移住者が語る小松市の魅力が紹介されています。『Hello !こまつ』

■小松市の子育て支援を紹介した電子書籍「ハグくむ」はこちらから