──創業するときに「場所にこだわる」という視点は珍しいですね。

私は1人で創業したので、サポーターの力が絶対に必要でした。だから、サポーターが集まりたくなる場所・サポーターがまた来たくなる空間作りは強く意識しましたね。オフィスの床一面に人工芝を敷き詰めて、電球もおしゃれな感じにして、お酒もたくさん置いて。イメージは、お祭り活性化するアイデアを生み出すための、秘密基地です。

場所はJRと地下鉄の両方が通っているという理由で高田馬場にしました。早稲田大学が近いから、毎晩陽気に酔っ払った早稲田生がたくさんいる。結果的に毎日がお祭りみたいな場所だったなあと思っています。これも何かお祭りの縁かもしれません(笑)。

「インパクト・共感・ビジネスモデル」の3つを揃える

──スモールスタートしてみて、実際に事業はどうでしたか?

私も起業した直後は、小さくスタートして徐々に実績を出していこうと思っていました。実は、創業して2年間は社員が私1人だけだったんです。でも、あの頃は辛くてずっともがいていました。

1人でお祭りの現場に行き、1人でコンサルティングして、1人で成果を出す。確かに小さい結果は出るし、多少は困っているお祭りの力になれていたと思うのですが、日本全体で見ると全然インパクトがない。こんなに頑張っているのに、「祭りで日本を盛り上げる」というビジョンに、全く近づけなかったんです。全国に30万以上のお祭りがあるという途方もない事実を目の前にして、本当にもどかしい思いでした。

そこで一念発起して、資金調達を目標にビジネスコンテストに挑戦してみることにしたんです。ありがたいことに多くの賞をいただくことができて、その中でさまざまな方と出会い、こうして創業2年で資金調達をして新しい一歩を踏み出すことができました。

──ビジネスコンテストのピッチでは何が評価されたと思いますか?

うちは地方創生文脈で取り上げられることも多いですが、私の根幹にあるのは、ただ純粋にお祭りが好きという思いなんです。ピッチでたくさんの人に共感してもらえたのは、みんな私と同じように心のどこかでお祭りが好きだからだと思っています。その原体験は、幼少期の地元のお祭りかもしれないし、高校の文化祭かもしれない。あの時の興奮、非日常感、活気、喜び、そういったものが地域の少子高齢化などによって失われるのは寂しいと思っている人がたくさんいる。しかも、それはおじいちゃんおばあちゃんだけじゃなくて、若者もそうなんだ、ということを発見して、伝えられたのがポイントだったと思っています。

あとは、モノ消費からコト消費へと遷移する文脈であったり、フォトジェニックなものが求められる流行であったりといったものに、うまくお祭りがマッチしたのもよかった。先行者がいないので、県や市町村からのお祭りプロデュースなどの依頼もあり、実績が積みやすいのもよかったですね。また、「オマツリジャパン」という社名は、一度聞いたら忘れないとよく言われます。このインパクトも強い武器です。

共感、ビジネスモデル、インパクト。どれか一つ欠けてもうまくいかなかったのではないでしょうか。