
大熊町への移住を考えたとき、まず気になるのが「住まい」のこと。大熊町では2026年になり、民間の新築アパートが建設されはじめるなど、新たな住宅供給の動きも出始めています。
現在の住宅事業はどうなっているのか。それなら大熊の住宅事情に詳しいプロに聞いてみようと、JR大野駅そばにある不動産会社「ニーズエステート」を訪問させていただき、専務の三瓶勇樹さんにお話を伺いました。
震災前から大熊にある「まちの不動産屋さん」
ニーズエステートは、震災前から大熊町で営業する不動産屋さんです。かつては国道6号線沿いに店舗があり、震災で一時避難したものの2021年から大川原地区に仮事務所を設け営業を再開しました。そして現在も町内のアパートなどの民間賃貸住宅の仲介や不動産コンサルティング事業を行っています。2025年3月にはJR大野駅から徒歩4分ほどの場所に本店を新築。環境にやさしい「ZEB」仕様の建物です。開放的な空間で、住宅のこと、土地のことなど不動産に関する相談をなんでも受け付けています。

大熊で進むファミリー向け新築アパートの建設
三瓶さんに最近の大熊の住宅事情について聞いてみると、単身者向けの住宅には空きがありますが、ファミリー層向けの住宅は不足気味。ただ、2026年になってファミリー層向けの新築アパートも建ち始めており、今後住宅が増えることが期待されるそうです。
三瓶さんは「2021年から大川原の仮事務所に務めていますが、ゆめの森の開校が大きな転機でした。子どもたちの数はどんどん増え、ファミリー層向けの賃貸住宅が不足するようになりました。公営住宅も人気でこちらにもなかなか入れません。ただ、2026年になって大野駅周辺に新築のアパートが立ち始めており、ファミリー層向けの住宅の供給も今後始まっていくと思います」と話します。

ニーズエステートでも建物の設計・施工を担うグループ会社と連携し、大野駅前に新築アパート管理物件を供給。間取りはファミリー層向けに2LDK。高気密・高断熱・省エネ性能を誇る「ZEH-M(ゼッチマンション)」という仕様です。建物に設置した太陽光発電を利用して電気を創り、光熱費をまかなう省エネ住宅です。三瓶さんは「建物の完成前からすでに多くの問い合わせをいただいています」と話します。
さらに、新築の戸建住宅についても徐々に建築が決まり始めています。町の分譲地の近くにはスーパーマーケットの出店も決まり、今後より利便性が高まることが期待されています。三瓶さんは「都会に比べれば土地も安いですし、大熊は気候が温暖で、冬でも雪が降ることは少ない。土砂災害、河川災害の心配も少ないですし、住むにはいい場所だと思います」と話します。
不動産業を通じて、町に新たな文化を
三瓶さんは浪江町の出身。もともとは心理カウンセラーになろうと大学に進学しましたが、不動産会社を経て、親族が立ち上げたニーズエステートに入りました。
震災後、大熊町から町外に避難した方の中には、土地や建物について悩みを抱えている方も多く、三瓶さんはその1つ1つのお悩みに丁寧に対応しています。「土地を手放したくないが、自分では管理が難しい」という方々については、地元の不動産会社として、不動産の活用方法について助言をしたり、相談に乗ったりしています。今後は「小規模不動産特定共同事業」等の取得も目指しており、資金を集めて不動産を運営していく仕組みも考えています。三瓶さんは「大熊の不動産会社として、土地を単なる不動産としてではなく、まちとの関わりしろを生み出せるものにしたい」と考えています。
ニーズエステートのビジョンは「CULTIVATE a local community.-地域を『耕す』-」。不動産業を通じて大熊に新たな文化を生み出していくことを目指しています。不動産以外でも三瓶さんは「大熊コットンプロジェクト」にも参加しており、町内で日本古来の綿「和綿」の栽培を栽培し、将来的な製品化を目指す取り組みに関わっています。

また、今後三瓶さんが検討しているのが、事務所前の敷地を活用した場づくりです。大野駅にもほど近い事務所の前からは、CREVAおおくまやクマSUNテラスが見渡せます。三瓶さんはこの場所の利活用を検討しており、完全予約制のプライベートサウナや、日替わりで多彩なキッチンカーが訪れるキッチンカーパークなどを構想しています。三瓶さんは「大野駅にも近く、駅前に賑わいが生まれます。今は町主導で様々な公共施設が建っていますが、民間ならではの面白い・楽しい動きを駅前に作っていきたいです」と笑顔で話していました。
