こんにちは!新潟県で移住支援を行っている”ロカキャリ/きら星株式会社”です。
今回は、新潟県内各地で広域移住・地域マッチングを行うきら星株式会社の代表・伊藤綾が、新潟県加茂市にUターンし新たな一歩を踏み出した『株式会社LAMBDA・JAPAN』代表取締役のいかちゃん(五十嵐巽さん)と、嫁として加茂市で暮らし始めた取締役の福ちゃん(福田恭子さん)から話を聞かせていただきました。

新潟県加茂市で2024年に起業した彼らは今、少し変わった「日常を届ける体験ツアー」を企画しています。地方創生の世界では、よく「地域の魅力の磨き上げ」や「華やかなプロモーション」が叫ばれますが、彼らが掲げるのは驚くほどフラットな「盛らない、嘘をつけない旅」。
いかちゃん「東京で働いていた頃、多忙で体調を崩してしまいました。体重も激減し、心身ともにボロボロでした。」
キャリアだけを聞けば、東京で激務をくぐり抜けてきた人の苦労話を想像するかもしれません。しかし、新潟県加茂市(かもし)の、雄大な自然の中で、そんな過去を感じさせない大らかな笑顔が出迎えてくれました。
福ちゃんもまた仕事に夢中になり、心身ともに体調を崩した経験があります。お互いに「仕事へののめり込みすぎ」を経験したからこそ行き着いた「自分の責任で働く」という生き方。そして、隣り合う燕三条エリアとは劇的に異なる「加茂市ならではの時間軸」を背景に、彼らが仕掛ける神道体験プラットフォーム「INORI」や加茂市の魅力について語り合った内容をお届けします。
新しいキャリアへの一歩を、自分たちのゆかりの地・加茂市から
今回、加茂市での暮らしと事業をスタートさせたいかちゃんと福ちゃん。
いかちゃん:「実家にある畑が、誰も使わないまま眠っていたんです。それに加えて、地元の氏神様の会も高齢化が進んでいて。大それたことはできなくても、何か地域に主体的に関わりたいね、という話をしていました。『じゃあ、私がこの家に戻って継ごう』と決めたのが去年のことです」
現在はリフォームした2部屋を寝室と仕事部屋に充て、義理の両親と完全同居する暮らし。まだまだ手探りながらも、採れたての野菜をその場でフライパンに放り込むような、地に足のついた暮らしの解像度が少しずつ上がってきていると言います。
いかちゃんが、食べるものや健康に強い関心を持つようになったきっかけこそが、かつて東京での暮らしの中で経験した、身を削るようなハードワークでした。
いかちゃん:「体調を崩してから体が資本だなと強く感じて、お塩一つとっても天然のミネラルが入ったものを選んだり、有機JASの基準を調べたりするほど、食と健康の意識が変わりました。どうせなら100%自分で作りたいなと思うようになって、新潟に戻って、食にこだわるようになったのです。」
この新潟での再出発が、当時別のクリエイティブ会社にいた妻の福ちゃんとの再会、そして現在のLAMBDA・JAPANの創業へと繋がっていくことになります。
「自分の責任で働く」という共通の価値観
一見、仲睦まじいクリエイター夫婦に見える二人ですが、お互いの性格は驚くほど真逆なのだそう。
福ちゃん:「『ストレングスファインダー』をやっても、彼は”着想・学習欲・内省”という戦略タイプ、私は「社交性・ポジティブ・共感」という営業タイプ。完全に強みも弱みも真逆なんです」
しかし、だからこそ会社を立ち上げても役割が衝突せず、パズルのように噛み合う。指示待ちではなく「何をするにも自分の責任」だからこそ圧倒的なパワーが出る。一度「会社のために自分を100%犠牲にして倒れた」という共通の経験をしているからこそ、根底にある一番大切な価値観が完全に一致しています。
そんな二人が、一歩を踏み出した事業が、旅行業の登録(新潟県知事登録旅行業 第2-470号)を伴う本格的な「着地型観光(DMC)」への挑戦でした。
プレス機の音と、木の10年。川1本で変わる「ものづくりのDNA」
LAMBDA・JAPANが提供するのは、いわゆる観光地を効率よく巡るだけの、よくあるパッケージツアーではありません。彼らが手がけるのは、その土地に流れるありのままの文化や精神性を届ける「体験」です。
今回、LAMBDA・JAPANと当社きら星で、加茂市の移住体験ツアーを共に組成し、実行する中で、加茂市に流れるローカルの「時間軸」について考察を深めていきました。それが、隣り合う燕三条地域と加茂市の気質の違いです。

燕市や三条市は、全国的に有名な金属加工の街。プレスの「ガッシャン、ガッシャン!」という激しい音が鳴り響くなかで、職人たちは短い言葉で強い指示を出し合います。命の危険と隣り合わせの現場だからこそ、男らしく、主張が強く、立ち位置を明確にする商売人気質が育まれます。
しかし、そこから加茂市に入ると、街を行き交う人々は驚くほどおっとりとしていて、ゆったりとした時間が流れています。その理由について、お二人は加茂のバックボーンである「木工(建具や桐簞笥)」の文化を挙げてくれました。
福ちゃん:「加茂の伝統的工芸品の加茂桐簞笥の職人さんとお話ししていると感じますが、桐箪笥を作るための準備として、木を干してアクを抜くだけで5〜6年を費やします。タンスとして使える状態になるまでに、トータルで10年もの歳月がかかるんです。それを見ていると、今日明日で完成しないものと向き合っているんだから、『そりゃあ、人間の気質も大らかになるよな』って思いました」
金属のスピード感で生きる燕三条と、木の10年という長い時間軸で生きる加茂。 川筋が1本違うだけで、ここまで人柄やコミュニティの空気が変わるおもしろさが、この地域にはあります。
外の人から見た「加茂の人(カモ人)」は、自分から「俺がこれをやった!」と大声で主張することはしません。一見すると寡黙で、下手に回るスローな印象を受けます。しかし、こちらが相手へのリスペクトを忘れずに「あなたたちのことをもっと知りたいです」と手を差し出すと、すっと心を開き、がっちりと握り返してくれる。つっつけばつっつくほど、深いエピソードと街への愛(加茂愛)がぽろぽろと溢れ出てくる、芯の強さがあるのです。
”盛らない”観光体験から、移住ツアーを紡ぐ
ーー今回、共同事業として一緒に移住体験のツアーを作ってきたわけですが、通常の観光ツアーと違った点はありますか?
福ちゃん:「分かりやすい観光というか、テーマ性というよりかは、あの地域に流れる日常を届ける。その文化や風土をいかに届けられるかということは、やっぱり普通の観光と違う目線なのかもしれないですね。盛れないし、盛って話せないし、だって住んだらわかっちゃうから(笑)。だからこそミスマッチが起きないようにフラットに伝えたい。移住ツアーには、人の人生の転換点に携わる面白さがありました。」
まちのコミュニティセンター(コミセン)を回れば、当たり前のように市民のためのお風呂が併設されており、新しくできる複合施設にもやっぱりお風呂が作られる。「このまちの人は本当にお風呂が好きなんだな」と思わずクスッとしてしまうような、穏やかな日常。その日常の中に、熱い想いを持った面白いプレイヤーたちが点在しているのが、加茂の素顔でした。

写真は、加茂市の商工会青年部(YEG)の仲間たちで「本間養魚場」を継いで運営をしているSeeds of lifeへ訪問し、話を聞かせてもらいながら、イワナ・ヤマメの釣りなども楽しみました。楽しさや暮らしのリアルを伝えるためにも、スーパーに立ち寄ったり、市民に愛される温泉もツアーに盛り込むなど、工程にも工夫をしていただきました。
飾らない加茂市の様子や、2泊3日で行った加茂市七谷地域を深ぼるツアー内容については、こちらのリール動画でもお楽しみいただけます。
青海神社を起点に、加茂の文化を「体験」として巡る
この、つっつくほど溢れ出る加茂の「本物の文化や精神性」を、訪日旅行者や感度の高い旅人に届けるため、LAMBDA・JAPANは神道体験プラットフォーム「INORI」を立ち上げました。彼らの拠点と同じ加茂市に鎮座する「青海神社」を精神的な起点に置き、地域事業者と連携した10本のオリジナル体験プログラムを展開しています。(画像:INORI 公式サイトより引用)
ラインナップは非常に多角的です。神職による昇殿参拝や神道講話といった「祈り体験」から始まり、100年企業の工場で行う組子細工体験、日本一の産地で職人の工房を巡る桐簞笥かんな掛け体験、紙漉き和紙づくりといった「文化体験」。さらには、日本一を獲得した農家の家でのおむすび・収穫体験といった「食体験」まで、加茂という町が育んできた多様な文化へとグラデーションのように広がっています。
訪日旅行者の「本物の日本文化に触れたい」という需要が高まる一方で、地方にはそれに応えるコンテンツが圧倒的に不足しています。お土産の購入だけで終わる短い滞在では、地域経済への波及も限られてしまう。
だからこそ、LAMBDA・JAPANは「1本のストーリーとしての体験」を造成しました。 旅行者が体験として訪れる機会をつくることで、神社には文化を共に問う参拝者が生まれ、職人には技の価値を直接伝えられる相手ができる。担い手にとっての「文化の継承」は、こうした訪問者との継続的な出会いの中から生まれる——彼らはそう信じています。
これまでの自分たちの猛烈なワークスタイルを経て、加茂の「10年の時間軸」に心地よく着地したいかちゃんと福ちゃん。リスペクトの手を差し伸べ合いながら、地域の職人や神職たちと「波長(λ)」を合わせ、共鳴し合える事業を紡ぎ出す二人の姿を見ながら、数字だけでは測れないローカルの持つ可能性と、私たちが目指すべき誠実な地域マッチングの未来を再確認することができました。
あなたらしい暮らしのために
今回ご紹介したいかちゃん・福ちゃん夫妻のお話、いかがでしたでしょうか?
加茂市のように、訪れてみて初めてわかる地域の魅力はたくさんあります。もしこの記事を読んで、「こんな暮らし方もいいな」「自分に合う地域を探してみたい」と感じた方は、ぜひお気軽にご相談ください。
新潟での暮らしや移住についてのご質問、ご相談を受け付けています。あなたらしい暮らしの一歩を、一緒に見つけていきましょう。





