「地方へ移住したい。」

そう思ったとき、多くの人が気になるのは、住まい、仕事、そして地域とのつながりではないでしょうか。

北海道下川町には、その3つを一緒に考えてつくられた住まいがあります。

それが、一の橋バイオビレッジ住宅です。

ここは単なる住宅地ではありません。人口減少という地域課題に向き合い、「この地域で暮らし続けるにはどうすればいいか」を住民と行政が長い時間をかけて考え、生まれたコミュニティです。

森林資源を活かしたエネルギー、快適な住環境、新たな雇用、そして人とのつながり。一の橋バイオビレッジは、下川町らしい持続可能な暮らしを体現する場所として、多くの自治体や研究者からも注目されています。

林業のまちから、未来の暮らしをつくるまちへ

下川町は北海道北部に位置し、町の約9割を森林が占める人口約2,700人の町です。

古くから林業で栄え、森を「伐る」のではなく、「育て、使い、また育てる」という循環型森林経営を続けてきました。

その考え方は森林だけにとどまらず、エネルギー、産業、地域づくりへと広がり、2018年には「SDGs未来都市」にも選定されています。

そんな下川町の考え方を象徴する場所が、一の橋地区です。

一の橋地区は、下川町の中心市街地から東へ約12km離れた場所にある小さな集落です。町の中心部とは少し距離がありますが、車で行き来できる距離にあり、周囲を豊かな森林に囲まれた、静かで自然に近い環境が広がっています。

かつては林業で栄え、多くの人が暮らしていた一の橋地区。人口減少や高齢化などによって地域の存続が危ぶまれる中、森林資源や地域の特性を活かしながら、新しい暮らしの形をつくる取り組みが進められてきました。

その象徴となっているのが「一の橋バイオビレッジ」です。エネルギー、住まい、産業、地域の交流を組み合わせ、持続可能な地域づくりを目指しています。

消滅の危機から始まった、一の橋地区の挑戦

一の橋地区は、かつて営林署や鉄道があり、林業で栄えた集落でした。

最盛期には2,000人を超える人々が暮らしていましたが、営林署の統合や鉄道の廃止、林業の衰退などにより人口は減少。2009年には95人まで減り、高齢化率も50%を超えるなど、地域の維持が難しい状況となりました。

「このままでは地域がなくなってしまう。」

そんな危機感から、住民と行政が話し合いを重ね、「地域を残すためには何が必要か」を考えました。

そして2010年、一の橋地区の集落再生に向けた取り組みが本格化。住宅だけでなく、エネルギーや生活、交流などを一体的に考える「一の橋バイオビレッジ構想」が生まれました。

その後、木質バイオマスボイラーによる熱供給施設や集住化住宅、住民センターなどが整備され、2013年にはエネルギー自給型の集住化エリアが完成。

一の橋バイオビレッジは、「住宅を建てる」のではなく、「地域で暮らし続けるための仕組みをつくる」という発想から生まれたのです。

“住む”だけではない。”暮らす”ための住宅

一の橋バイオビレッジ住宅の大きな特徴は、住宅そのものだけでなく、そこで暮らす人の日常まで考えて設計されていることです。

住宅は平屋建てで、1LDKから3LDKまでの間取りを用意。全26戸が整備され、単身者から夫婦、子育て世帯まで、それぞれのライフスタイルに合わせて暮らせる住環境となっています。

住戸だけを見ると一般的な住宅のようにも見えますが、建物の中に入ると、その特徴がよく分かります。

住宅同士をつなぐように屋内廊下が設けられており、雪や寒さの厳しい冬でも外に出ずに移動できるつくりになっています。

北海道の冬は、雪かきや道路の凍結など、日常生活にも大きな負担がかかります。

だからこそ、外の天候に左右されにくい動線を住宅の中につくることは、単なる便利さだけではなく、冬を安心して暮らすための大切な工夫です。

また、住宅内は段差をなくしたバリアフリー設計。

高齢になっても暮らし続けやすいことはもちろん、小さな子どもがいる家庭にとっても安心できる住まいです。

そして北海道で暮らすうえで欠かせないのが、冬の暖かさ。

高断熱・高気密の住宅性能に加えて、後述する木質バイオマスによる地域熱供給を組み合わせることで、厳しい冬でも快適に過ごせる住環境を実現しています。

町内の森林資源からつくられた木材チップを燃料としてボイラーを稼働させ、住宅に暖房・給湯の熱を供給しています。

ここで使われている木材チップには、森林整備などの際に発生する間伐材や林地残材が活用されています。林地残材とは、木を伐採・搬出したあとに森林内に残される木材などのこと。これまで十分に活用されてこなかった木材をチップに加工し、地域のエネルギーとして利用しています。

つまり、町の森で生まれた「使われずに残っていた木」が、地域の暮らしを暖めるエネルギーに変わっているのです。

北海道への移住を考えるとき、多くの人が気になるのが、冬の生活費ではないでしょうか。

特に下川町は、冬には厳しい寒さになる地域。暖房は北海道で暮らすうえで欠かせないものだからこそ、暖房・給湯にどれくらい費用がかかるのかは、住まい選びの大きなポイントになります。

一の橋バイオビレッジ住宅では、一般的な住宅のように使用量によって料金が大きく変動するのではなく、暖房・給湯料が定額制となっています。

たとえば、1LDKの場合、暖房・給湯料は夏期が月額5,000円、冬期が月額8,000円の定額です。

そのため、冬に暖房をたくさん使ったからといって、使用量に比例して暖房・給湯料が大きく跳ね上がる心配がありません。

厳しい冬でも、毎月の暖房・給湯にかかる費用をある程度見通しながら暮らせる。

これは、北海道で暮らすうえで大きな安心材料です。

地域の森で生まれた未利用の木材が、チップとなり、エネルギーとなって住民の毎日の暖房や給湯を支えている。

それが、一の橋バイオビレッジならではの住環境です。

「北海道の冬は暖房費が心配」という人にとっても、自然豊かな環境で暮らしながら、暖房・給湯にかかる費用を抑えやすいことは、一の橋バイオビレッジ住宅の大きな魅力の一つと言えるでしょう。

地域熱供給システムバイオマスボイラー

エネルギーが、雇用を生み、地域を元気にする

バイオビレッジが目指したのは、省エネルギーの住宅地ではありません。

地域のエネルギーを活かし、新たな仕事を生み出すことでした。

地域熱供給システムの熱を利用したしいたけ栽培施設では、一年を通して安定した生産が行われています。現在では年間約113トンを生産し、北海道北部の量販店などにも出荷される、地域を代表する産業の一つとなっています。

そして近年、一の橋地区では夏秋イチゴの栽培も始まっています。

下川町と戸田建設株式会社が連携し、夏秋イチゴを新たな「下川ブランド」として育てる取り組みが進められており、一の橋には栽培ハウス4棟が整備されています。

さらに、ハウスの加温には一の橋の地域熱供給システムから供給される熱が活用されています。森林資源から生まれた木質バイオマスの熱を、住宅の暖房や給湯だけでなく、農業にも活用する。エネルギーを地域の中で循環させながら、新しい産業を生み出す取り組みです。

こうした取り組みは、単に農産物をつくるだけではありません。地域雇用の拡大や農福連携などにもつながり、一の橋で「暮らす場所」が「働く場所」にもなっています。

地方移住で不安に感じる「仕事」の面でも、一の橋地区は、林業やしいたけ栽培に加えて、新たな農業にも挑戦しながら、仕事の選択肢と地域の可能性を広げています。

人が行き交うことで、地域はもっと豊かになる

一の橋地区では、地域おこし協力隊や移住者、新たな事業に挑戦する人たちが地域に関わりながら、新しい風を吹き込んできました。

昔から暮らす人と、新しく移り住んだ人が自然につながり、それぞれの経験やアイデアが地域の活力につながっています。

イチゴ栽培ハウス

下川町で、自分らしい暮らしを始めませんか

現在の下川町には、林業だけでなく、福祉・医療・教育・建設・製造・サービス業など、多様な仕事があります。

町では「しもかわ人材バンク」を通じて求人情報を発信しており、移住前から仕事探しや相談も可能です。

また、「しもかわちょっと暮らし体験」では、住まいや仕事、地域の雰囲気を実際に体感しながら、自分に合った暮らしをイメージできます。

一の橋バイオビレッジ住宅は、単なる住まいではありません。

暖かく暮らせる住まいがあり、暮らしを支える場所があり、地域の資源からエネルギーが生まれ、そこから新しい仕事も生まれている。

そして、そこに暮らす人と、新しく地域に入ってくる人がつながっていく。

地域の課題を未来への可能性へと変えた、下川町の挑戦そのものです。

もしあなたが、「自然豊かな場所で暮らしたい」「仕事も暮らしも大切にしたい」と考えているなら、一の橋バイオビレッジは、その第一歩になるかもしれません。

まずは一度、下川町を訪れてみませんか。

写真や情報だけでは分からない、森に囲まれた町の空気や、冬の暮らし、人との距離感。

実際に訪れることで、ここで暮らす自分の姿が、少し具体的に見えてくるはずです。

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