和歌山県北山村。地図で探すと、少し不思議なことに気づきます。和歌山県の色で塗られているのに、県の本体からぽつんと離れ、三重県と奈良県にすっぽり囲まれている。日本で唯一の「飛び地の村」です。
理由は、村を流れる北山川にあります。面積の93%を山林が占めるこの村では、伐り出された「北山材」が筏に組まれ、川を下って新宮へ運ばれていきました。
伏見城や大阪城の築城にも使われたと伝わります。1871年の廃藩置県のとき、村の人々は地理ではなく、木材が流れていく先を選び、和歌山県への編入を願い出ました。それが認められ、以来150年以上、北山村は飛び地であり続けています。平成の大合併でも、単独の道を選びました。
その筏は、いまも村に残っています。1979年に観光筏下りとして蘇り、5月から9月、全長30メートルの筏を筏師が人力で操る。従事するのは16人ほどで、オフシーズンは畑や山に戻ります。ひとつの生業で完結しない働き方が、この村ではごく自然なことです。
飲めば鬼も逃げ出す、という柑橘
もうひとつ、北山村にしかないものがあります。「じゃばら」という柑橘です。
江戸時代からこの村に自生していた、世界でここだけの品種。あまりに酸味が強く、飲めば鬼も逃げ出す、つまり邪気を払うということから、その名がついたと伝えられます。秋祭りや正月の郷土料理に、村の人が当たり前のように使ってきた味でした。
転機は1977年。村がじゃばらの栽培に本格的に取り組みはじめます。さらに2001年、インターネットの普及と、花粉症のアレルギー症状を抑える効果があるという学会発表が重なり、この小さな村の柑橘に全国から注目が集まりました。ゆずの6倍以上ともいわれるナリルチンという成分が、じゃばらには含まれています。
村の総出でつくられてきたじゃばら事業は、長く村営事業として続きました。それが民営化され、2019年に生まれたのが株式会社じゃばらいず北山です。
「ふるさとを幸せに、ふるさとから幸せを」
じゃばらの企画、製造、販売、配送。2023年には村内に新しい加工工場を建て、自社製品だけでなく他社ブランドの製造も手がけるようになりました。取り扱う商品は30種類を超えます。ジュース、ポン酢、菓子、化粧品。新商品の企画会議には、職種にかかわらず全員が参加します。
栽培へのこだわりもあります。収穫前の3か月間は農薬を散布しない。毎年、第三者機関による残留農薬検査を受ける。「じゃばらってこんなに美味しいんだ、と驚いてもらえる商品をつくりたい」という言葉が、そのまま製造工程に落ちています。
いまでは、じゃばら以外にも仕事は広がっています。ふるさと納税の支援事業を通じて、村の、そして地域の産品をどう届けるかを考える。柑橘の会社であると同時に、地域の産品をブランディングする会社でもある。人口が少ない村で、それでも経済を回していくための現実的な選択です。
20人の職場と、鳥の声で始まる朝
北山七色工場で働くスタッフは、約20人。そのうち3割が北山村に住んでいます。都会から転職してきた人も少なくありません。前職とはまったく違う業界から来た人が多いので、教え方も自然と丁寧になります。
村での暮らしは、想像よりも静かで、想像よりも人との距離が近いはずです。朝は鳥のさえずりで目が覚める。仕事のあとには温泉に行ける。道の駅おくとろに併設されたおくとろ温泉の露天風呂からは、北山川のダム湖が見下ろせます。
ジムの施設でサークル活動をしたり、村祭りに一緒に出たり。コンビニは村に1軒だけですが、その代わりに手に入るものがあります。
便利さと引き換えに何を得るのか。それは実際に来てみないと分からない部分が大きいと思います。
飛び地であることを選んだ村で、世界にひとつだけの柑橘を扱う会社があります。もし少しでも気になったら、まずは話を聞きに来てください。村のこと、じゃばらのこと、ここでの働き方のこと。お伝えできることはたくさんあります。
現在、じゃばらいず北山では、求人応募の前に体験ができる「しごと暮らし体験」を実施中です。ご興味をお持ちの方はぜひご参加を検討ください。
