仕事(ワーク)と旅(バケーション)をあわせた「ワーケーション」。筆者も全国出張が多く、それに加えて旅が大好きなので、自然とワーケーションのような働き方を7年ほど前から行なっています。今回は、「種子島&屋久島のワーケーションの魅力を伝えるライターを探している」と聞き、即刻、手をあげました。なぜなら、ずっと気になっていながらも未踏の島だったからです。
2泊3日という弾丸スケジュールだったのですが、種子島と屋久島は、それぞれに違う魅力がたっぷりつまっていて、ワーケーションをすると刺激的な土地だったのでレポートいたします。
ワーケーションのような働き方をしている人はまだまだ職種が限られています。私のようにライターという仕事ですと、必要なものはパソコンとネット環境だけともいえるので、まさにワーケーションにぴったり。普段の打ち合わせなども既に予定に入っている中ですが、島でワーケーションを楽しんでこようと思います!
まずは、1日目。鹿児島空港から種子島へ
少し早めに空港に到着したものの、風が強く種子島行きは欠航になる可能性があるかもという条件付きでの搭乗手続き。ぎりぎりまで飛ぶか分からない状況でしたが、そんなときでも「なるようになるさ」と楽観的にPCを広げ、早速仕事にとりかかります。鹿児島空港のWi-Fiは安定していて、さくさくと仕事が進みます。また、これから訪れる種子島の情報収集も。旅のわくわくが絶頂に高まったところに、種子島行きのアナウンスがあり、出発することに。
鹿児島空港から45分で、あっというまに種子島空港に到着。南国ムード漂う空港に降り立ち、レンタカーを借りて向かった先は、種子島といったらやっぱりここ。
世界一美しいロケット発射場「種子島宇宙センター」
種子島宇宙センターは、1968年に初めてロケットを打ち上げて以来、日本の打ち上げの中心的な役割を果たしています。総面積約970万平方メートルにもおよぶ日本最大のロケット発射場で、センター内には「大型ロケット発射場」、「衛星組立棟」、「衛星フェアリング組立棟」などの設備があります。センター内にある宇宙科学技術館では、ロケットはもちろん、人工衛星や国際宇宙ステーション計画など宇宙開発における様々な分野が、わかりやすく展示されています。
漫画『宇宙兄弟』が大好きな私は、大興奮!国際宇宙ステーション計画の一翼を担う「きぼう」日本実験棟の実物大模型の中で、まるで無重力状態にいるかのような写真を撮影することもできます。もちろん、私も撮っちゃいました。一人なのに(笑)
アポロ13号のフライト・ディレクター「ジーン・クランツ」が大切にしていた仕事への姿勢も掲げられていました。管制室のリーダーだったジーン・クランツは、アポロ13号で発生した事故により地球への帰還が危ぶまれた中、チームを指揮し、乗組員を無事に帰還させたことは、映画にも登場したのでご存知の方も多いかもしれません。
そんな彼が残したこの10箇条は、MOD (Mission Operations Directorate)とよばれる異常事態に対処する運用部門の部屋にも掲げられ、今でも大事にされています。
一つのロケットの中には何十万点もの部品があり、ロケット開発に関わる人も十数万人が関わる壮大なプロジェクト。そのなかの一つもミスを許されないというプロフェッショナルな集団に思いを馳せると、自然と自分自身の仕事に対する姿勢も問われる気がします。私ももっと心が震える仕事をしていこう、と決意を新たにする時間になりました。
「ファン!ファン!JAXA!」という、ネーミングからすでに面白そうな施設案内ツアーがあるのですが、現在は、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大防止のために中止でした。再開したら、子供と一緒に必ずまた訪れたい場所です。
さて、ここから本日の宿泊地に向けて、美しい風景を眺めながら種子島を北上していきます。立ち寄りたいスポットがたくさんあるものの、ワーケーションのときは無理は禁物。宿に帰って仕事をする体力も残しておきます。
今回、お世話になったのは、こちら。
海からわずか30秒!絶景ロケーションにある「ZEUS HOUSE」
サーフィンを目的に移住してきたという若い男性スタッフも多く、とてもフレンドリー。あたたかく迎えてくださいました。夕方にチェックインをして、夕食までは部屋で仕事。wi-fiは、重たいデータを送るときには少し時間がかかりましたが、ZOOMを使ってのWEBミーティングなどは問題なく利用できました。
1Fのカフェ&ラウンジは、朝食、夕食会場以外にも、日中はカフェ営業をされているので、海が見える素敵な空間。
夕食後、「ゆっくりしてくださいね」とスタッフさんのお言葉に甘え、22時の利用時間いっぱいまで仕事。ZEUS HOUSEは、道沿いにあるものの、まったくといっていいほど夜は車が通らないので、とっても静か。日中、宇宙センターでプロフェッショナルな仕事を垣間見て刺激を受けたのもあいまってはかどりました。
ぐっすりと休んで、朝、起きた時の爽快感!カーテンを開けると、こんな景色が目の前に広がります。
少し海岸沿いをお散歩。ZEUS HOUSEでは、このロケーションに泊まれるコンテナハウスを設置し、「ZEUSHOUSE BEACHPARK」を建設中。今後さらに楽しいスポットになりそうです。朝食を食べた後には、WEBで打合せ。Wi-Fiが必要且つ声が漏れないほうがいい仕事は、部屋でやるのが一番安心です。チェックアウトの10時ぎりぎりまで集中して終えたら、港のある西之表エリアまで、美しい景色を眺めながらのドライブです。
種子島在住の方におすすめスポットを伺うと、みなさん口を揃えて「鉄砲館」とおっしゃるので、ここもはずせません。2日目の旅は、ここからスタート。
種子島にまつわる歴史、文化、民族をまるっと学べる。種子島開発総合センター「鉄砲館」
1543年、種子島の門倉岬にポルトガル人を乗せた一隻の船が漂着し、その際に日本に初めて鉄砲が伝えられました。その鉄砲伝来の物語を、分かりやすくジオラマで表現している作品がありました。なんと映画会社、東宝さんの力作だけあって惹き込まれます。
当時、14代島主 種子島時堯は、初めて目にした鉄砲に驚き、大金をはたいて購入し、鍛治師に真似て作らせました。伝来から1年を待たずして国産化に成功。当時より最先端の鍛治技術をもち、「たたらの島」と呼ばれていた種子島だからこそ、火縄銃を作ることができたのです。鉄砲の出現によって戦の方法が一変し、全国統一へと進み長い戦国時代は終焉を迎えます。そんな歴史に名を刻む種子島時堯が、大きな決断をしたときが、なんと16歳!
現代と年齢の感覚が違うとはいえ、その年齢で大きな決断と、新しいものを取り入れる勇気に驚きました。ポルトガルの初伝銃や火縄銃、西洋銃など、明治頃までの古式銃が100丁も展示されていて、見応えがあります。
種子島の奥深さを味わい、またゆっくりきたいなぁと名残惜しさを感じつつ、今日は屋久島へ移動します。出航までの2時間ほど、仕事時間。そんなすきま時間で、仕事もできるおしゃれスポットを発見!
種子島の食、お土産、遊びを集めた拠点施設「CONNECT」
種子島の情報、食、物産、遊びが集まる地域交流拠点というだけあって、観光の方、移住希望者、種子島に住む人がうまく混ざり合っているなと感じました。私が訪れていたときも、小さなお子さんがいる家族、若い女性のお友達、旅行中のカップル。世代もミックスされていて、天井が高く広々とした空間のなか、おもいおもいに過ごしていました。
Wi-Fiも完備しているので、ランチも兼ねて仕事します。集中しすぎて、船に乗り遅れないようにアラームをかけて資料作成。高速船乗り場まで徒歩10分という立地なので、種子島に到着したときに訪れても、帰る前に訪れても楽しめる場所です。
2日目は高速船「トッピー」で屋久島へ
さぁ、時間になったら移動。高速船「トッピー」で屋久島へ向かいます。
約45分の船旅です。景色を眺めつつ、うとうとしていたらあっというまに屋久島へ到着。(船酔いをしないように、おもいきって休息タイム。)
15時30分に屋久島に到着して、この日はもう部屋で仕事に集中する日と決めていたので、Wi-Fiを完備していてずっと部屋にこもっても気持ちのいいホテルを選びました。それが、港から徒歩5分の立地にあるシーサイドホテル屋久島さん。
屋久島の海を一望できる「波音日和」は、仕事もはかどる空間
広い部屋で圧迫感がなく、部屋にいるだけでも非日常を味わえるのはワーケーションならでは。仕事に集中して、ふと目をあげると東シナ海が広がるオーシャンビュー。目の疲れも癒されます。机には、エスプレッソコーヒーマシンや鹿児島県の知覧茶があり、部屋を出なくても気分転換ができます。
ただ、一点だけ!注意してほしいのが、この仕事空間。
椅子がわりに、エキストラベッドにもなるソファベッドが置いてあります。これが気持ちよすぎて、「ちょっと休憩〜!」と横になったら、そのまま寝落ちしてしまう可能性大。(というか、私は予定外の睡眠をとってしまいました。)
睡魔に負けそうになったら、バルコニーにどうぞ。
取材当日は寒かったので長くいられなかったのですが、暖かい日は気持ちがよさそう。この日は、たっぷり時間をとって集中する必要性のある仕事(資料作成や原稿執筆など)をして過ごしました。疲れた身体を大浴場でじんわり癒し、たっぷり休息をとり、翌日は早起きしてまた仕事を頑張ることができました。
3日目。朝早く起きて白谷雲水峡へトレッキングに行く予定でしたが、屋久島でも珍しいくらいの雪が降り、登山道までの道が凍結していて断念。もっとも楽しみにしていた予定だったので、残念だったのですが、自然の前では為す術もありません。急遽、ホテルで借りることができるレンタカーを手配して、島内一周をすることに。
シーサイドホテル屋久島では、登山靴、レインウェア、リュック、ストックなどの登山用具をレンタルすることもでき、「やっぱり屋久島に来たからには山に行きたい」と気が変わっても対応できるのが嬉しいところ。「九州でもっとも高い山は、屋久島の宮之浦岳なんですよ」と聞き、近いうちに必ずリベンジにこようと誓いました。
屋久島の最北端!漁業と縁結びの神様「矢筈嶽神社」
屋久島はぐるりと回るだけなら、車で3時間ほど要します。まずは、北にある一湊(いっそう)集落にある矢筈嶽(やはずだけ)神社を目指しました。車を停めて海沿いを10分ほど歩き、赤い鳥居をくぐると、天然の洞窟の奥に祠(ほこら)がありました。
この荒々しい岩肌の洞窟の中に立つと、自然と背筋が伸びるような感覚になりました。お参りをして、後ろを振り返ると、そこには幻想的な世界が。
屋久島の山々と海、青空が見え、暗い洞窟に差し込む光とあいまって、私も地球の一部であることをはっきりと感じるような、そんな時間でした。
島内を一周するなかで美しい風景にたくさん出会ったのですが、もっとも私が心震えたところは、西部林道でした。ここは、大部分が世界自然遺産登録地域に含まれていて、約17kmにおよぶ道では、野生のヤクザルの群れやヤクシカに出会えます。
自然と共生する屋久島ならでは!人気のドライブコース「西部林道」
車が一台通れるくらいの道幅の林道をゆっくり走ると、わんさかお猿さんたちに出会います。車が通過することに慣れているのか、驚く様子もなく側道で(時々、道の真ん中で)毛づくろいをしたり、ひなたぼっこをしています。
ヤクザルは、ニホンザルと比べて小柄でとっても可愛らしく、その生息数は数千頭と推測されているそうです。窓をあけていると、かさかさと葉っぱがなる音がして見上げると、小さなヤクザルが木から木へと飛び移っていました。
この日だけで、なんとヤクザル59頭、ヤクシカ14頭に出会い、屋久島に住む人からも「そんなにたくさん見れましたか!」と驚かれました。
ひょんなところで、突如、遭遇するので運転には集中力を要します。ヤクシカのつぶらな瞳と目があったときには、どっきりしてしまいました。こんな近距離で見ることができるなんて、驚きの連続です。
くねくねの林道、且つ、日中でも生い茂る緑で暗くなっている道が多いので、明るい時間帯に行くことをおすすめします。運転をしながら、「もし今日、トレッキングに行っていたらこの林道をドライブして、この感動を味わうことはなかったんだなぁ」と、ふと思いました。
何かを選択することは、「何かをしないと選択する」ことでもあるなと感じたとき、これは人生も同じだなと腹落ちしました。ついつい、あれもこれもとやりたくなったり、自分の選択に迷ったりすることもあるけれど、自分の選択がよかったと思えるくらいまで楽しみ尽くすことを大事にしたいな、と。
そして、選択は何度でもできるということ。「また屋久島にこよう。次はたっぷり時間をとって、娘にもこの景色を見せてあげよう。そして、トレッキングもしよう」と心に決めると、「トレッキング行けなくて残念」という気持ちに引きづられることなく、今日という時間を味わうことを大事にすることができました。
屋久島のダイナミックな自然や温かい人たちとの交流、美味しいごはんを堪能し、屋久島空港へ。最終便のフライト時間までは、空港の待合室で仕事をして帰路へ。大自然からは、仕事の真髄だけでなく、人生にとって大事な学びを得たような1日でした。
今回のワーケーション体験を振り返って
<良かった点>
・大まかなスケジュールを組むときに、どこでどの仕事に取り組むのかをはっきりさせておいたことが、結果、仕事がはかどったように感じます。Wi-Fiがないとできない仕事/集中して取り組みたい仕事/細切れの時間のなかでできること、くらいの感覚で分けていました。
・よく遊び、よく働き、よく休む。ワーケーションの醍醐味をたっぷり味わえた2泊3日でした。島内ではWi-Fiが使える場所は少なかったので、Wi-Fiが使えて居心地のいい宿泊場所に泊まるのは、ワーケーションを成功させるコツだと思います。
<気をつけること>
・種子島と屋久島。それぞれに違った魅力のある島で到底、2泊3日では味わいきれなかったのが本当のところ。ぜひ、それぞれの島で2泊3日、もしくは1週間くらい島に滞在するようにたっぷり時間をとって行くべし。
・ご紹介した屋久島の「西部林道」では、電波が入らずトイレなどの休憩所もありません。事前に準備をしてから行くことをお勧めします。
種子島と屋久島に再訪できる日を、心から楽しみにしています。
ライター:長友まさ美
人生の物語に耳を傾け、その方の可能性や魅力を引き出すことが大好き。旅好き、人好き、美味しいものが大好き。愛しいものを伝え、人生に彩りを添えられることを願って発信中。暮らしを味わい、楽しみつくす日々を生きています。(Facebook: https://www.facebook.com/masami.nagatomo )