川畑 寛晃(かわばた ひろあき)さん、久美子(くみこ)さん
[大阪府→[和歌山県 紀の川市]


―大阪府守口市出身の川畑寛晃さんは静岡県や千葉県で暮らした後、実家の事業を継ぐために一度は大阪へUターン。しかし、田舎の広い物件を求め、2019年に久美子さんとともに紀の川市へ移住。新型コロナウィルスの流行の影響を受けつつも、2023年10月に「プラモデルをつくりながら食事も楽しんでもらう」ことをコンセプトにした模型カフェ「iiba(イーバ)」を開業された。
川畑さん夫婦に紀の川市での暮らしや開業に至るまでのお話を伺いました。―

紀の川市での生活

「都会に近いのに、田舎暮らしも楽しめることが魅力。車で10分以内にスーパーや産直市場が、4つもあるので買い物にも困らない。ホームセンターも近くにあり、DIYもしやすい」と寛晃さん。また、模型づくりや、楽器、料理、釣りと多趣味な寛晃さん。特に市内を流れる紀の川ではブラックバス釣りができることから、趣味も楽しめる環境にも満足しているようだ。
野菜やフルーツなど食材にも恵まれている紀の川市。「お店のメニューでは『キャンプ飯』がおすすめ。材料となる地域の野菜が良いので、手間がかからず焼くだけでおいしい。お店で出すレモネードに使用するレモンも極力紀の川市産を使っている」と地域の食材の魅力やお店のこだわりについて教えてくれた。

紀の川市の生活について語る寛晃さん

こだわりのレモネード

おすすめのキャンプ飯

大阪で住んでいたマンションではたくさんの住人がいても、知っている人は同じフロアに住む数人のみだったそうだが、現在は、移住前より近所付き合いも増え、地域の多くの方と知り合いになることができたという。
「住み心地は良くて楽しい。現在、56歳だが、この辺りでは50歳代は『若手』で、『大阪から来た人』ということで、話をしたことがない人でも自分のことを知ってくれているなど、都会と比べ人と人との距離感が近く、親切にしてくれる」と嬉しそうに話してくれた。
「紀の川市は自然豊かで、空が広く見え、朝焼けや夕焼けが綺麗。星や月も良く見える。それを毎日見ることができるので、幸せな気分になる。都会では、ビルが多いので見える場所を探さないといけない。今は、広い空が見えないと寂しい気持ちになるが、大阪に住んでいた時はそんなことは感じなかった」と心境の変化を話してくれた。

理想の物件に出会った!

寛晃さんは、高校卒業後、静岡県の大学に進学。卒業後は千葉県内の会社に就職し、久美子さんと結婚、10年間を過ごした。その後、寛晃さんは、33歳のときに家業の電話工事業を継ぐため実家のある大阪へUターンする。その後、本業である電話工事業の傍ら別事業への転換を考えはじめ、模型カフェの前身となる『アナハイム・カフェ』(現在閉店)を始める。しかし、事務所とカフェがあった大阪市内では家賃の負担が大きかったため、家賃を気にしない場所で、住みながら営業できる物件に移りたいと考えるようになり、インターネットで様々な物件を見る中で「田舎で広い物件」がよいと思うようになったそうだ。
当初、大阪の南部など他の地域の物件も探していたが、高速道路を使って1時間で大阪市内に行くことができ、駐車場も広い理想の物件に出会い、2019年、寛晃さんが52歳の時に紀の川市に移住した。「周りに何もないところで、家が密集していないところが良かった。『ポツンと一軒家』のような家の方が好きなことできるし、飲食店をするので近所に迷惑がかからない物件を選んだ」と教えてくれた。新型コロナ流行の影響もあったものの移住後も電話工事業を続けながら、2023年10月にカフェiibaを無事開業。店名は「良い場」(いいば)から「iiba」と名付けた。

店名は「良い場」(いいば)から名付け、「iiba」

夫妻で作り上げたお店

カフェiibaでは、「プラモデルをつくりながら食事も楽しんでもらう」がコンセプトのお店。プラモデルは持ち込みが原則で、プラモデル作りに使う道具を借りることができるのも魅力の一つ。1980年代末に盛り上がりをみせたガンプラ世代の寛晃さんは、子どもの頃からプラモデルを作るのが好きだったというが、会社員時代、同僚がガンプラを作っていたことがきっかけで、自身のプラモデルづくりへの熱が再燃したそうで、いわゆる出戻りモデラーだ。模型カフェの構想を思いついたのも会社員時代で、会社のお客さんに自身が使っていたエアブラシ(空気でプラモデルに色を吹き付ける機械)を貸してほしいと頼まれ「これは商売として需要があるかも」と思い付いたそうだ。
紀の川市で購入した500坪の敷地には、4つの建物があり、その中の一つを夫婦でカフェとプラモデル作りの工房にリノベーションした。「妻がホームステージング(内装を家具や照明などのインテリアでコーディネートして魅力を高める)の仕事をしているので、妻の設計のもと、壁紙を自分達で貼ったりしながらブルックリンスタイルの店内を作りあげました」と寛晃さんは教えてくれた。敷地内には、キャンプコーナーや大人数でも利用できるバーベキューコーナーもあり、カフェやプラモデル作りだけでなく、アウトドアも楽しめるそうだ。

最近SNSを中心に人気のハンバーガー

大人数で使用できるバーベキュースペース

お客さんが作成したプラモデルも展示

エアブラシをはじめ、精巧なプラモデルづくりには欠かせない道具の数々

カフェを人と人との交流拠点にしていきたい

「模型づくりは年齢に関係なく趣味で人とつながることができる。カフェiibaをお店に来た人同士が仲良くなるような交流拠点にしていきたい」と寛晃さんは考えている。
「この場所で、地域の人と一緒にできるイベントをやりたい。例えば、フリーマーケット会場にするとか。地域の中に写真を趣味にしている方もいるので、写真の展示のギャラリースペースなどにも利用してもらえたら。広い駐車場スペースでバンドの演奏もできたら面白い」と寛晃さんは今後の展開を話してくれた。
また、寛晃さんによると、紀の川市は宿泊施設が少ないため、体験農業で来た人や模型の展示会イベントに来た人に、宿泊してもらえるような民泊施設の運営も考えており、現在DIYで改装中とのこと。「民泊が完成すれば、滞在しながら地域を知ってもらうお試し移住のような形でも使って欲しい。綺麗な夕焼けや朝焼けを見ながら地域の魅力をお伝えすることもできる。また、利用者に地域の先輩移住者を紹介することもできるので、交流を図ってもらえたら」と話す。
民泊の部屋をデザインした久美子さんも「民泊にする予定の部屋は、壁紙や窓サッシもユーチューブを見ながら自分達で作業しました。部屋の窓からは、春には桜も見えて綺麗ですよ」と教えてくれた。

民泊予定の部屋(春には桜が見えるそうだ)

民泊予定の部屋(壁紙もDIY)

地域の生の声を聴いてみては

最後に、寛晃さんに先輩移住者としてのアドバイスを尋ねた。
「紀の川市であれば移住者同士がつながる『紀北移住者の会』があり、その交流会に参加するなどして先輩移住者と話し地域の生の声を聴いてみてみるのもよいと思う。移住前も移住後もつながりを持つことができ、移住を一歩進めるきっかけにもなるので」と答えてくれた。
―やりたいことが次々と湧き出てきて、楽しそうな表情が印象的だった川畑さんご夫婦。ぼんやり移住を考えているのであれば、現地に足を運んでカフェiibaで地域のお話を聞いてみたり、移住希望者も参加できる「紀北移住者の会」の交流会に参加し、先輩移住者の生の声を聞いて地域を知ってみるのも良いのではないでしょうか。―
取材日:2024年1月9日
<ご紹介>
カフェiiba HP
https://camp-1117.business.site/
インスタグラム
https://www.instagram.com/iiba.kinokawa/
紀の川市HP 「暮らし・移住情報」メディア Good Life with Kinokawa
内移住者交流会紹介記事(※記事の最後に紀北移住者の会への連絡方法有)
https://kinokawa-life.jp/magazine/1193/