1年に15万個を売り上げる、淡路島産のたまねぎを使ったご当地バーガー「あわじ島バーガー」。累計80万本を突破した「たまねぎドレッシング」。これまであまり知名度のなかった商品が、数多くの競合の中から手に取り買ってもらえる大ヒット商品になった要因は、何があっても徹底しているひとつのマーケティング・テクニックにありました。
お話をうかがったのは、株式会社うずのくに南あわじの飲食事業部を率いる金山宏樹氏。今まで数々の施策を実行し、成果を出してきた食の仕掛け人です。
株式会社うずのくに南あわじ
南あわじ市が出資する第三セクター。
うずの丘大鳴門橋記念館及び館内レストランや物販店、道の駅うずしお、道の駅うずしおレストラン、そして「あわじ島バーガー 淡路島オニオンキッチン」等を運営。
近年売り上げを順調に伸ばしている。
金山 宏樹
2012年株式会社うずのくに南あわじ入社。EC事業部を経て2014年4月より飲食事業部 取締役。 名物「白い海鮮丼」を企画するなど多くの施策を打ち出し売上向上に貢献。
新メニュー考案のために東京すしアカデミーに入学し自ら寿司の技術を基礎から学ぶなど凄まじいエネルギー量の持ち主。
※肩書き等は取材時(2017年4月)の情報です。2017年7月より飲食×観光のビジネス革新を全国に広げるため独立しプロデュース・コンサルティング事業を立ち上げ。
あわじ島バーガーは、こんなにおいしいのに
2013年に全国1位*に輝いた、あわじ島オニオンビーフバーガー
*日本最大規模のご当地バーガーの祭典、とっとりバーガーフェスタ2013
ー2011年に全国ご当地グランプリ3位を獲得し、そのおいしさにも太鼓判が押されたあわじ島バーガー。しかし当時は、淡路島の名物と呼ぶには知名度が低い状態だったと聞きました。
淡路島産の玉ねぎがガツンとくる、本当においしいバーガーだったので何で人気が出ないか不思議だったんです。それで、ふと看板を見てみたらキャッチコピーに「全国ご当地グランプリのバーガー」と大きく書いてあった。これでは、お客様は何のことか全くわからない。当たり前ですよね。グランプリ名まで覚えている方はほとんどいらっしゃらないですから。
そこで、単純に「全国3位」の部分をドーンと大きくしてみたんです。そうしたら、話題が集まり始めた。何も難しいことはしていない。そこからどんどんどん人気が出て、グランプリでも2012年には2位、2013年には1位を獲得できました。淡路島の外では基本的に販売していないのに、年間販売個数は約15万個。それだけの方が、淡路島に来て食べてくださってるというのは、本当にうれしいですね。
サクサクとしたカツの衣の中から出てくる、とろっと甘い淡路島産玉ねぎの上に、甘辛く炊いた淡路牛と淡路島産トマトソースがおいしくて、食べてもらえば良さがわかるはず。あとはどうやって知ってもらうかというところだけが課題だったんです。
2014年第2位のあわじ島オニオングラタンバーガー
まさにバーガー王国!
ーおいしいだけでは名物になりえないということですか?
厳しいですが、そうですね。名物っていうのは、地元の本当においしいものを使うことももちろんですが、ちゃんとお客様に刺さるポイントがあるかどうかが大事。マーケティングやプロモーションは、何がお客様にとって正しい付加価値を持った情報なのかを、きちんと見極めて伝えることが重要だったのに、当時はできてなかったんです。
地域のプレーヤーは、商品のことが好きすぎる
いつも商品開発の際には、お客様に「刺さる」ポイントがあるかを検証しています。うちはWebでECサイトもやっているので、相互にフィードバックしながらPDCAを回すようにしていますね。
ーこれまでにどんな工夫がありましたか?
たとえば、淡路島産玉ねぎのドレッシングは今では月3,000本くらい売れる人気1位の商品なんですが、この商品はあわじ島バーガーとは異なり、「人気1位」と書くだけではあまり売上が伸びなかった。逆に「累計80万本」というのを大きく書いたら、すごい人気が伸びたんです。それも「800,000本!」のようにゼロを多く見せて(笑)。
圧倒的人気商品「玉ねぎドレッシング」
ほんとうに、ちょっとしたキャッチコピーひとつとっても、お客様目線かどうかで伝わり方が全く異なります。私たちのような地域のプレーヤーは、商品のことが好きすぎてそういった顧客志向をつい忘れがちなので、普段からしつこいくらいにこのことだけを考えています。