リアル店舗でも、ECでも、もっともっとお客様の視点で考え抜く

ーお客様は神様、とは違うんですか?

私がこの仕事を始めたときには、淡路島にはすでにいい商品がたくさんあったので、それをどう魅せるかが課題でした。神様のようにお客様を持ち上げるのではなく、商品が伝えたいことを「お客様に適切に伝える」ことに主眼があります。

どんなにいいものでも伝わらなければ意味がない。そのためには些細なことも徹底するようにしました。私たちのライバルは、他の地域の玉ねぎではなくて、たとえば東京のオーガニックレストランだったりするわけです。フォトジェニックな盛りつけ方といった流行りの部分も取り入れましたし、基本となる店舗での接客も相当厳しく見直しました。

「すみません」と呼ばれたら「少々お待ちください」ではなく「次にお伺いしますね!」。混雑でお客様を待たせてしまったら「お待たせして申し訳ございません」ではなく「お待ちいただいてありがとうございました」のような部分からです。商品を提供するまでの時間も、サービスの大切な一部だと思っています。

新商品の撤退基準は「飽きたら」!?

ー逆に失敗した事例も聞いてみたいです。

「鳴門金時カレー」というのを作ったんですよ。たまたま私が店にいたら、ふらっと通りかかった小さな子が「何でこのお店には鳴門金時カレーがないんだー!」と叫んで走っていった。ほんまに、あいつ何言ってんねんと思ったんですけど、帰って調べてみると意外にまだ他社で商品化されてない。神のお告げだ!と思って自信持って作ったら、全然売れなかった(笑)。

神のお告げにより誕生した「鳴門金時カレー」

ーでも、まだ売ってるんですね(笑)。

少年のニーズは満たせたはずで、まだ行けると思ってます(笑)。まあこれは笑い話ですけど、その一方、撤退の判断はすごくシビアにやっていて、それは「飽きたら」です。いやいやそれはシビアじゃないだろうと思われるかもしれないんですが、私はこの一言にすべてが詰まってると思っています。普通、商品は作ったら完成だと思うんですが、私は出してからが勝負だと考えていて。自分が商品に飽きて改善の情熱がなくなり、お客様視点を商品に反映できなくなったら、その商品は死ぬ。

だから、お客様にも必ず、「新しい料理はどうでしたか」と聞くようにしています。大抵の場合は「良かったです」と言ってくれるんですけどね。

ー嬉しいじゃないですか!

いや、それじゃ全然だめ。日本人は大したことない料理だと思ってもみんな「良かったです」と言う。だから、良かったですと言われたときこそ、「すみません。もっと良くしたいんで、何か1個だけでもありませんか」と言うと、「実はちょっと辛くて…」などと指摘してくれる。一歩踏み込むのは、特に大事にしているポイントです。そこまでやってはじめて、お客様の本音が見えてくる。

「顧客志向」一点に集中して、徹底的にこだわる

商売人気質だとよく言われますし、顧客志向にこだわりすぎてスタッフを怒ることも時にはあります。たぶん、社内では怖い人だって思われてるかもしれませんね。でもそれで売上が上がって、お客様に喜んでいただいて、そのうえで私たちの給料もちゃんと上がって、そのサイクルがあればいいじゃないですか。実際に私自身も東京から淡路島に戻ってきて、手取り17万円の平社員からここまで頑張ってきました。それは、もちろん自分が頑張ったのもありますが、社内のメンバーであったり、農家さんであったり、漁師さんであったり、パートナー企業さんであったり、何より商品を買っていただいたお客様のおかげでもあります。

全員が幸せになるためには、やっぱりきちんといい商品をちゃんと売ることが重要。だから、私は顧客目線に徹底的にこだわりたい、そう思っています。


どうしたら手に取ってもらえるか、どうしたらおいしいと感じてもらえるのか、どうしたら食を通じて最高の体験を提供できるのか。淡路島の食の仕掛け人である金山氏は、「メニューの並び順」や「おすすめの仕方」など、そんな細かいところまで!とこちらが驚くくらいのこだわりをインタビュー終了後も情熱的に語り続けてくれました。

商品の持つ良さの中から、顧客にとって正しい付加価値を持った情報を見極めて伝えることの重要性が、「顧客志向」の姿勢に凝縮されています。それはまさにマーケティングの本質と言えるでしょう。あわじ島バーガーが大ヒットに育った裏側には、どのビジネスにも通ずる、シンプルで徹底したテクニックがありました。

飲食×観光のビジネス革新に情熱を燃やす金山氏は2017年に独立、新たにコンサル事業を立ち上げました。その活動も今後ネイティブで取り上げていく予定です。金山氏の今後の活躍に要注目です。

取材・文・撮影:編集部
写真提供:株式会社うずのくに南あわじ

●株式会社うずのくに南あわじ 会社概要

  • 所在地:兵庫県南あわじ市福良丙947-22
  • 設 立:2004年7月
  • 資本金:3,000万円
  • 売 上:14億5,000万(2016年度)
  • 社員数・スタッフ数:83名(正社員29名、パート32名、アルバイト22名)
  • 給与水準:300万円〜700万円台 (19歳 高卒2年目〜55歳)