観光以上、定住未満で地域と深い関わりを持つ人々を指す「関係人口」。人口減少が避けられない日本社会で、ある意味「人口のシェア」とも言えるこの動きや考え方は、地方創生文脈において欠かすことができないキーワードのひとつになりました。自己のライフ・シフトと絡めながら、その地域を元気にしてくれる可能性を秘めたこうした人々と、地域はどのように関わり、またそれを「創出」していくべきなのでしょうか。

この「関係人口」について、様々な角度からの考察や議論、事例を集めてみました。

関係人口創出への取り組みが、各地で加速しています。同時に、やはりどの自治体でも大きな悩みのタネのようです。各地の状況をいろいろと見ていると、あきらかに「これはやらないほうがいい」と思える悪手(あくしゅ)に陥っていると思えるものが散見されます。

大分県がおこなっている「大分で会いましょう。」という取り組みがあります。キーワードは、「せっかくだから 大切な話は、大分で」。2018年に始まったこの取り組みは、地域の関係人口を創出する試みとして注目されています。

「関係人口」という言葉は、その定義はまだ明確でなく、ややもすれば少しネガティブな印象もあるようです。新しい言葉は常にそういう宿命でもあります。差出編集長も、本書の中で「ブームで終わらせないためには、明確に定義づけないことも重要だ」とさえおっしゃっています。

ラグビーワールドカップの日本代表チームの活躍に触発され、その素晴らしさの要素を整理して考えてみたところ、地域社会の目指すべきエッセンスが見えてきました。ここでもやはり「関係人口」という考え方が重要になってきます。

全国で病児保育の課題解決事業を展開する認定NPO法人フローレンス代表理事で社会起業家の駒崎弘樹さんが、ご自身の経験からくる他拠点居住への課題意識をSNSに投稿され、多くの方の共感を集められました。その内容が大変すばらしいものだったので、編集部から御本人にお願いし、その文章を寄稿していただきました。

一口に「関係人口を創出せよ」と言われても、各自治体では相当悩んでいるのは想像に難くありません。むしろ「移住者を増やせ」と言われたほうが、何をやるべきかは具体的に思い浮かぶというもの。その難しさはどこから来るのでしょうか? そこには大きく3つの理由があると考えます。…

#01  誤解しがちな「関係人口」の意味とは?

〜マーケティングの観点から見たその本質〜

「関係人口」というキーワードには、少し誤解しやすいポイントがあります。それ故に、逆に注意深く探っていくとその本質が見えてきます。総務省が提示するその定義と意図から、マーケティング的観点を絡めてその意味を改めて整理してみました。