新型コロナウイルス流行の中、日本国内ではテレワーク(リモートワーク)が急速に広まっています。もちろん全ての職種でというわけではないものの、いわゆるオフィスワークを主にする企業では規模の大小に関わらず、今までほとんど取り入れてこなかったところも、かなり進めているようです。一度その便利さに気づくと、これはもう戻れません。特に外出や出張、遠方からの来訪を前提とするイベントなど、人の移動と対面を当たり前に考えてきた場面で、その利用はコロナショックの後も後戻りしないでしょう。中長期的に見ると新幹線や飛行機などの中長距離移動手段のみならず、都会の公共交通機関の需要にまで少しづつ影響してくるかもしれません。この状況を「パンドラの箱が開いた」と表現する人もいるほどです。その利便性や効率性が明らかになった、Web会議という選択肢。逆にデメリットは無いのでしょうか?長年、遠隔人材でチームを作りながら地方の仕事をしてきた自分としては、実は一つ非常に大きな落とし穴があることを痛感してきました。

その最大のデメリットは、相手の「オーラ」が感じられないこと。

以前、地方の仕事でライターやカメラマンさんを募集するために、Web会議で面談したことがありました。
その時の経験で、Web会議で話したときの印象と、その後二次面談で実際にお会いした時の印象が、想像以上に違うことがあったのです。
最初と二回目では話した内容も違うからかと思ったんですが、何度か同じことを感じる中でふと気づいたのが、Webでは相手の「オーラ」をつかみきれていなかったのではという点でした。

人は現実に対面したとき、外見や会話だけでなく、小さな仕草や、それに伴うかすかな音や雰囲気、また体温のようなもの(これらを総じて、「オーラ」と呼んでいます)など、膨大な情報を得ています。それに比べて現時点でのWeb会議の仕組みでは、視聴に足る必要最低限の動画と、話が判別できるレベルの音声に頼っています。なので、当然といえば当然なのですが、やはり対面との差はまだまだ想像以上に大きいのです。

もちろん普段から付き合いの深い人とのコミュニケーションは、それほど問題はありません。その表情や声などの限られた情報から、その人の「オーラ」的な周辺情報を想像で補完できるからでしょう。なので同僚や何度も会ったことのある人との会議は、Webでもそれほど大きな問題は起こりません。

一方で、初対面の(というか、リアルには会っていない)人や、あまり親交を深められていない人との会議は、要注意です。
自分の経験上、そういう人となんとなくWeb会議をしても、あとあとあまり「思い出せない」ことが多いのです。
またそこまででなくても、やはり「立体的」な印象がなさすぎて偏った視点からの評価に陥りがちもなります。
これは特に注意が必要な点です。Web会議で印象が薄くても、実際に会えばその殆どが”数倍”の厚みがあるものなのです。

Web会議ツールを使った遠隔営業も、かなり広がっています。そのほうが、営業の頻度や回数自体は効率的にこなせます。でももしかしたら、実際に相手に与える印象の深さや話したことへの理解度などは、かなり差がある可能性もあります。そうなってくると、話す内容や売り込む商品などにもよりますが、遠隔営業の方が一概に「効率的」とは言いづらいかもしれません。

そのデメリットをどう回避するか?

だからといって、やっぱり「足が命」だと言って、営業マンが改めて「ヒラメ筋」を鍛え直すべきかというと、それもまた違うでしょう。Web会議の弱点をちゃんと把握して、以下の3つを心がけると良いと思います。

①気持ちを「アゲ」て会話する

オーラが伝わらない欠損をカバーするには、やはり少し「アゲ」て望むしかありません。といっても、大声で話したり、誇張して伝えるというわけではありません。端的に言えば「気持ちを込める」という意味です。かしこまったりするよりも、むしろ少し懐に飛び込むような気持ちのほうが良い気がします。自分の気持ちをしっかり意識して伝えようとしたり、相手の気持ちをしっかりと受け取る気持ちを意識をすると、Web会議の欠点を少しカバーできる気がします。特に初めて話す相手には、心がけたいポイントです。

②会議終了後にフォローする

結果的に相手に印象が薄い会議をしてしまった場合、前述の通り、想像以上にその印象が忘却の彼方に消え去ってしまうのがWeb会議の特徴です。そこでその最悪の事態を回避するには、会議後にお礼と一緒に、どんな議論をして次のアクションをどうするかの「まとめ」を送っておくのがおすすめです。議事録というほどの詳細さは不要です。相手の記憶を蘇らせるきっかけになれば十分。これも経験上、かなりの効果があります。

③リアルの対面を適度に織り交ぜる

当たり前すぎるかもしれませんが、同じ人と継続的にやり取りする場合はやはり何度かに一度は「対面する機会」を織り交ぜるべきでしょう。逆にいうと、それが非常に重要な時間になるはずです。特に膝を詰めて考えをぶつけ合ったり、仕事の節目に何かを決定するなどの機会は、わざわざ対面でやることに十分意義が見いだせるはずです。仕事のフェーズや目的によって、Web会議とリアルの対面をうまく組み合わせることで、その真の効率が高まります。

いかがでしょうか? 私達にとって、突然訪れた大きな仕事の進め方の変化。その中心となるテレワークやWeb会議という手法は、臆することなく、その本質を見極めて自分の仕事のうまく取り込んでいくべきだと思います。

文:ネイティブ倉重

【著者】ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重 宜弘(くらしげ よしひろ)
愛知県出身。早稲田大学 第一文学部 社会学専修 卒業。金融系シンクタンクを経て、2000年よりデジタルマーケティング専門ベンチャーに創業期から参画。大手企業のデジタルマーケティングや、ブランディング戦略、サイトやコンテンツの企画・プロデュースに数多く携わる。関連会社役員・事業部長を歴任し、2012年より地域の観光振興やブランディングを目的としたメディア開発などを多数経験。2016年3月にネイティブ株式会社を起業して独立。2018年7月創設の一般社団法人 全国道の駅支援機構の理事長を兼務。