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「2020年が、まさかこんな年になるとは。」
世界の中の人がそう思っていると言っても過言ではないだろう。
まだまだ収まるどころかここ数日の様相は、まさに”第3波”という渦中。だが11月にも半ばになりいよいよ年末が見えてくると、余計にそういう思いがこみ上げてくる。まだまだ油断は禁物なのはもちろんだが、とはいえ3月頃の気持ちと比べれば、我々はある程度冷静になっていると言えるだろう。
あの時は誰しもが「どうしたらいいか」も「何を考えたらいいのか」さえわからなかった。みんな慌てていたし、恐怖を感じていた。
でも、今は、決してそれだけではないはずだ。
この記事の目次
見えてきた”光明”
当時の心境と今のそれとは、個人的にも、世の中全体の雰囲気としても、随分変わってきたことは明らかだ。
そういう中で、非常に興味深いTV番組が、つい先日NHKで放映されていた。それは、『NHKスペシャル 新型コロナ全論文解読〜AIで迫る いま知りたいこと〜』と題されたものだった。
この番組が大変秀逸で、まさに「いま知りたいこと」を、AIを駆使しながら説得力の高い情報を提供していた。
興味がある方は是非とも見逃し視聴サービス「NHKプラス」、あるいは近日中に公開されるだろう「NHKオンデマンド」で見てもらいたい。
内容としては、コロナ渦中に発表された新型コロナに関する論文を20万本以上AIに読み込ませ、その関連性や相関、影響力などを分析することで、コロナ禍の現状や解明されつつあるそのメカニズムや今後対策などを、大局的につかもうという、挑戦的なものだ。
特に印象的だった主な項目を箇条書きにすると、以下のようなものが上げられる。
①この冬、日本でも感染者は急増する可能性がある
・乾燥や低温は、付着したウイルスの生存時間を大幅に伸ばし、感染拡大の要因となる。
・ゆえに、春〜夏の対策とは別のケアが必要。
・ビタミンDが、免疫力向上に貢献する可能性があり注目されている。
②日本やアジアでの感染/死亡者数が欧米より極端に少ない要因がわかってきた
・「交差免疫」(過去の近い種類のウイルスの感染で獲得できた免疫)が、新型コロナにも抑制力をもつ可能性がある。
・過去に季節性コロナ(流行性感冒)にかかった経験がある人は、重症化率が大幅に低いという研究論文も。
・日本人の75%が、その交差免疫をもっている可能性があるという研究論文も。
③マスクは重症化の低減にも効果があるかもしれない
・マスクをした医療事業者が、していない場合よりも無症状で済む確率が大幅に上がったとの調査研究がある。
・マスクをしていることで微量感染を繰り返し、無症状のまま免疫力を獲得できる可能性があるという論文も。
④トップ研究者による見解でも、収束予測時期はかなりばらつきがある
・早い予測で2021年夏頃、21年内、22年と予測する研究者もいる。
・中には23年以降という予測もあり、収束するのではなく季節性のものに移行していくという見方もある。
・鍵はやはり、ワクチンや治療薬がいつ出回るか、またそれがどのくらい効果を発揮するかにある。
⑤新型コロナは風邪とは違い、やはり怖いウイルスである
・その特徴は、これまでのコロナウイルスと違い、脳を含めて全身のあらゆる箇所に感染する能力をもつ。
・そのため、症状も人によって異なり、既往症がある人が感染すると危険性が高まる。
・症状が長く続く人は、80%くらいが女性で、平均44歳という調査もある。
⑥「加湿」と「紫外線」が高いウイルス低減効果をもたらす可能性がある
・喉の中でウイルスを体外に出そうとする自己防衛機能である「繊毛」が、湿度40~60%で最も活性化する。
・加湿により飛沫が飛びにくくなるのも一因になる。
・マスクは加湿と保温という意味でも効果がある可能性がある。
・波長が222nmの特殊な紫外線が、人体に害が少なくウイルスには効果的だという研究もあり、一部で製品化もされている。
以上はまだその多くが「研究中」で、確定した結論ではない。
しかし、この短期間でこれだけの研究や対策の模索が進んできていることには、正直大きな驚きも感じ、また頼もしくも思える。
“正しい恐れ方”は既に我々の手中に
中には、いわゆる昔から言われてきた「風邪対策」に近いものもある。しかしそれもまた、手洗い・マスクのように「やるべきことをしっかりやる」ことの重要性や、それ以前から受け継がれてきた先人の知恵がいかに信頼のおけるものかを改めて痛感する。昔からの言い伝えの正しさ・大切さを、最新の科学が証明したとも言える。
個人的には、ずっと疑問だった「日本やアジアと欧米は、なぜこれほどの差があるのか?」という疑問について、(まだ確定ではないが)上記②のような原因があるということが解き明かされつつあることが腑に落ちた。このことを含めて、長いトンネルの向こうの方には確かに光明が見えてきていると言っていいのでは無いだろうか。
この8ヶ月余りで新型ウイルスの実態がかなり解き明かされてきているし、着実に対処法が見いだされてきている。しかしやはり「ただの風邪」では無いことは確かだ。番組の中でも、感染した経験をもつ爆笑問題の田中さんが「本当につらく、奇妙な体験だった。伝染らないに越したことはない。」という主旨のことを語っていた。我慢強く地道にできる感染防止対策をしっかりとやりつつ、恐怖や猜疑心に支配されない姿勢の大切さを改めて痛感した。
私達はすでに「正しい恐れ方」自体は確立できているともいえる。その上で、もう少し続くだろうウィズコロナの期間を過ごし、アフターコロナの時代を見据えた準備をするだけだ。
人類の進化と”AI”の行方
しかしそれ以上に唸らされるのは、この人類の叡智の集積のパワーだ。
我々にとっては、これほどまでに同時に世界中が差し迫った危機に苛まれたという経験は初めてだ。命に直接関わる問題だけに、まさに全人類が「全集中」でこの敵に対処している。我々は本当にすごい時代の真っ只中を生きている。この経験は、他の様々な地球的課題を解決する糧になるのではという可能性すら感じる。
同時に、特に考えさせられたのが番組の中でも駆使されていた「AI」の存在だ。研究論文を20万件以上読み込ませるということで導き出された様々な「示唆」は、ある意味、人類を「信じ込ませ」て「導く」力は十二分に発揮できてしまっている。私自身も正にそのように「説得」されているのだ。
これには更に大きなインパクトを感じてしまう。例えば先日、住民投票で否決された「大阪都構想」の是非について、誰かがAIを使ってその将来性や有効度を分析した・・・などという発表をしたとしたら、その結果が変わっていてもおかしくない。つまりそういう未来が、もうすぐそこに来ているということでもある。
2045年頃だと言われている『シンギュラリティ(技術的特異点)』(AIが人間の知能を超えると言われる時期)まで、まだ25年もあると思いきや、AI大いに影響される時代はもう始まっている。これはこれで、ある意味「新型コロナ」よりも「恐ろしい」のかもしれない。そちらの「正しい恐れ方」は、まだ我々は議論もできていない。
劇的な変化が多層的に織りなす時代のなか、我々はできるだけ早めに「自分を見失わない生き方」を見つける必要がありそうだ。
文:ネイティブ倉重
【著者】ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重 宜弘(くらしげ よしひろ)
愛知県出身。早稲田大学 第一文学部 社会学専修 卒業。金融系シンクタンクを経て、2000年よりデジタルマーケティング専門ベンチャーに創業期から参画。大手企業のデジタルマーケティングや、ブランディング戦略、サイトやコンテンツの企画・プロデュースに数多く携わる。関連会社役員・事業部長を歴任し、2012年より地域の観光振興やブランディングを目的としたメディア開発などを多数経験。2016年3月にネイティブ株式会社を起業して独立。2018年7月創設の一般社団法人 全国道の駅支援機構の理事長を兼務。
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