創るだけでなく、長く続き、育てていきたい。

村上さんから何度も繰り返された言葉があった。

「長く続けて、育てていきたい。」

事業や起業は始めるのは比較的簡単でも、続けていくこと、育て伸ばしていくことが難しいと言われる。村上さんは、これまでの数年間でそこに次の中長期の成長への経営課題を感じているのかもしれない。ファンとなった人に継続してファンであり続けてもらうには事業として小さくても長く続き何度も使ってもらえる関係であることが大切だと強く感じているのだろうか。
この日の取材で、兼ねてから出張の度に伺っていた大街道のカフェがなくなってとても残念だと伝えたところ、村上さんの顔も少し寂しそうな顔になったような気がした。それでもその店舗後にはエイトワンの次の新しいチャレンジが始まっている。

創るだけではなく、育てていく中には、あまり知られていない同社の活動もある。これまでいくつかの投資をしているのだという。それは地元の若い起業家への投資や少しベンチャーキャピタル的な投資。

宇和島鯛めし 丸水(がんすい)松山店の鯛めし

「今まで何件かやってきましたね。あまり公にはなっていないのもあります。ただ、正直まだ成果が出ていない。なかなか投資した後に、ついてあげきれていなかったりもして…。どちらかといえば、再生投資は良い形にできているのではないかと思います。鯛めし丸水(がんすい)ですね。元々は宇和島の老舗でしたが、惜しまれつつもたたまれる中でご一緒させていただいたんです。」

「今後は創るという意味でもこのように、事業の継承や再生は積極的に取り組んでいきたいと考えています。みかん関連の自社ブランド10(TEN)も、みかん農家さんと連携して様々なプロジェクトをやってみたいと思っていますよ。」

オリジナルのみかん商品ブランド「TEN 10」

そう話す村上さんはとても楽しそう。そして、自らが名付けもした伊織事業への愛着も全身から伝わってくる。事業や経営再生は見方を変えれば新しい価値づくりへの挑戦。新規にゼロから立ち上げよりも困難が少なくないけれど、そこに目線を向けている同社は今後も次の世代につなぐ事業を仕掛ける。地方創生のリーディングカンパニーを目指して。

愛着とともに今日も伊織を率いる村上さん

地域でライフスタイル事業やプロダクトを手掛ける人やプロジェクトは数あれど、エイトワン、伊織のように事業として開発から運営まで自らが本腰を入れ、リスクを取り、失敗をもいとわずにチャレンジし続けている事業会社は多くはないのではないでしょうか。
昨今、地域ブランディングやプロデュースが脚光を浴びています。その中で数少ない、本当の意味でのプレイヤー、ビジョナリーカンパニーの一つとして見えます。これから、多くのビジネスで地域を長期的に育て盛り上げ、リードしたい人に是非触れてもらいたい事業、サービス、経営者を持つ会社です。

取材・文・撮影: 編集部
写真提供: 株式会社エイトワン

●村上 雄二(むらかみ ゆうじ)

愛媛県新居浜市出身。大学を卒業後、地元愛媛での就職を経て、東京でさらに学びたいと東京の都市銀行に転職、リーマンショック後に同級生の大籔氏(現エイトワン代表)と松山市道後温泉でホテル事業を皮切りに、エイトワンを創業しともに率いる。同社取締役兼、同社最大のグループ会社今治タオルを取り扱うタオル専門店「伊織」代表。