島根県地域おこし協力隊への参加希望者が近年増えていることはご存じでしょうか?現在、県独自のサポート体制として「一般社団法人しまね協力隊ネットワーク」を設立し、地域おこし協力隊に特化した独自の研修やオンライン化の取り組み、交流会促進などにより、隊員の皆さんが安心して働ける環境づくりを進めています。

「一般社団法人しまね協力隊ネットワーク」の取り組みについてはこちら
島根県の地域おこし協力隊が面白い!「自分の軸を大事に地域とつながる」、人と地域をつなげる一般社団法人しまね協力隊ネットワークの活動とは!? | Nativ.media | 地方移住・関係人口創出のプラットフォーム

島根県では各地域で活躍する地域おこし協力隊員が多い中、さらに特徴的な地域があります。それは島根県本土から離れた隠岐諸島です。ここではより細かなサポートができるよう2021年度に「隠岐地域おこし協力隊サポートコニュニティ」が設立され、60名以上の隊員に対してきめ細かなサポートを行っています。今回、この「隠岐地域おこし協力隊サポートコニュニティ」について紹介しますので、今後どこかの地域に関わりたいと考えている方はぜひご参考ください。

隠岐地域おこし協力隊サポートコニュニティ

これまで島根県の職員や地域おこし協力隊OB・OGが中心に取り組んできた隠岐4島(海士町、西ノ島町、隠岐の島町、知夫里島)でのサポートを2021年4月に県から独立させてできたのが、「隠岐地域おこし協力隊サポートコニュニティ」です。業務は、地域おこし協力隊として参加されている方の相談業務がメインですが、年間を通じての研修業務なども行っています。

地域おこし協力隊研修

7月 初任者研修 隊員就任当初の心得、困り事への対応、島を超えた交流、など
10月 そろばん研修 次年度予算計上に向けた計画策定、予算要求への助言、など
2月 起業研修 → 出口研修(起業に向けた基礎知識、心構えなど) → 様々な可能性を探る機会

相談対応・個別サポート

ひとりで出来ない活動や起業にあたってのサポートなど
例:商品開発、販売ルート構築、申請書類作

地域おこし協力隊は最大3年間の任期のため、2年目以降で起業という選択肢を考える方が多いです。最初の1年は楽しく過ごせたものの慣れてきた2年目に悩む人は多いので、話を聞いたりスタッフの経験を伝えたりして個別での相談を都度受けています。

地域おこし協力隊OB・OGが身近な相談員としてもサポート 「隠岐地域おこし協力隊サポートコニュニティ」スタッフ紹介

隠岐地域おこし協力隊サポートコニュニティでは各島ごとに担当スタッフが付き、地域おこし協力隊経験のあるOB・OGが自身の経験をもとにしっかりコミュニケーションをとって、隊員が不安にならないようサポートをしています。様々な経歴を持つスタッフについてここではご紹介します。

【隠岐郡海士町担当 プロフィール】

島根 輝美
出身:大阪府
移住前の地域:兵庫県から海士町へ地域おこし協力隊として移住

(島根さんコメント)
●地域おこし協力隊のサポートを始めた経緯

地域おこし協力隊サポートの活動は県が主導で行っていた研修から独立した団体を設立するよう要請を受けて、必要と感じていたので始めました。

●地域おこし協力隊参加のきっかけと隊員時代の活動について

私個人は、地域おこし協力隊になろうと思って志願した訳ではありません。自分がやりたいことがまずあって、その活動を実現していくために地域おこし協力隊の制度を使った、という感じです。島内外問わず、地域に関わる人の心身の健康をサポートするセラピストでありつつ、島の資源を使って香りの商品を商品化し、さらに人が集う場所を作っていくということを活動としていて、独立後の現在も引き続き展開しています。

●隊員時代の経験が、現在のサポートの仕事にどのように活きているか

人との関わり方、行政との関わり方など、良いことも悪いことも含め、経験値としてお話することができますし、現隊員さんたちの相談や愚痴も含めて幅広く受け止めることができると思っています。

●これまでのキャリアと現在取り組む隊員サポート以外の仕事について

移住前は会社勤めで一般事務をしながら、約10年近くセラピストとしての学びを重ねて来ました。それまでは、ホテル勤務、保育士、S H O P店員などなど。現在は全く異業種の仕事はしていませんが、セラピストとして講師業に幅が広がっています。

【西ノ島町担当 プロフィール】

小笠原 怜士
出身:秋田県
移住前の地域:東京都から地域おこし協力隊として西ノ島町へ移住

(小笠原さんコメント)
●地域おこし協力隊のサポートを始めた経緯

隠岐支庁がまだ地域おこし協力隊の研修を実施していた時代の研修&交流会で、隠岐支庁の研修担当者や今のメンバーと知り合いました。その後、地域おこし協力隊OB・OGの一人として研修の手伝いなどをさせてもらう中で、今後は任意団体として研修事業を継続してもらえないかとお声がけ頂いたことがきっかけです。

●地域おこし協力隊参加のきっかけと隊員時代の活動について

一次産業に携わる仕事がしたいと思い、勉強のつもりで地域おこし協力隊に参加しました。西ノ島町では水産振興支援員として就任したので、下記のような活動取り組んでいました。

・水産加工品の製造、流通、販売に係る取組の企画、運営
・水産物を使った新商品開発
・水産物、水産加工品の販売促進

●隊員時代の経験が、現在のサポートの仕事にどのように活きているか

地域おこし協力隊の制度や行政の仕組みは分かりにくいところも多いと思います。そのあたりは経験者として、新しく地域おこし協力隊として参加される方へのアドバイスなどに生かせています。

●これまでのキャリアと現在取り組む隊員サポート以外の仕事について

大学卒業後は、ベンチャー企業での中小企業コンサルを経験しました。その後、島根県西ノ島町へ地域おこし協力隊として就任し、任期満了後の2018年に株式会社ONE TERASUを創業しています。仕事内容としては、移住支援事業、取材・ライティング事業、採用ブランディング事業などを手掛けています。

株式会社ONE TERASU
https://www.oneterasu.co.jp/

【隠岐の島町スタッフ プロフィール】

土中 杏美(どなか あみ)
出身:シンガポール出身
移住前の地域:東京都から地域おこし協力隊として隠岐の島へ移住

(土中さんコメント)
●地域おこし協力隊のサポートを始めた経緯

現役隊員の頃、自分自身も行政との認識のギャップを感じて悩んだことがあり、先輩隊員や島前の友人(現メンバー等)との繋がりに助けられました。また、他の隊員から相談を受けることも多々あり、時には涙を止められないほど辛い想いをしている隊員もいたので、現状を変えなければいけないと感じていました。ひとりで移住してきた隊員にとっては、縦横の垣根のない繋がりが大切だと考えていますが、積極的に繋がり構築ができないタイプの方もいるので、そういった機会を作れれば…と思っていたこと、行政職員や受け入れ団体の意識変革も必要だと感じていたことなどが、オキサポ立ち上げ時の島根県さんの想いと一致したので、参加することにしました。

●地域おこし協力隊参加のきっかけと隊員時代の活動について

隠岐の島町へ移住するにあたり、「仕事と家がない」という問題があった中で、協力隊の募集を知り、「自分のしたい暮らし」に合致したので応募しました。ミッションは、隠岐の島町の布施地区(最も過疎高齢化が進んでいる地域)の活性化です。

・特産品を東京でPRするイベントの企画、あるいは参加
・関係人口創出のための写真家招聘
・暮らし体験ツアーの企画・運営
・SNSでの日常の暮らしの魅力発信

などを行っていました。

●隊員時代の経験が、現在のサポートの仕事にどのように活きているか

「地域の声と行政の声を、小さなところまで聞こう」という姿勢で臨んでいたので、間に立たされる葛藤や矛盾をどう解消すればいいのか?地域とのコミュニケーションの取り方と行政とのコミュニケーションの取り方をどのようにすればいいのか?など、基本的なところを伝える力はつきました。また、入隊当初から卒業後を意識しつつ3年間をデザインしてきたので、自分の力で理想の未来を創造していくために、どのような心構えでどのようなことを考え行動すればいいのか、アドバイスが出来ています。

●これまでのキャリアと現在取り組む隊員サポート以外の仕事について

東京にいた2012年~2016年ごろまでは事務職の仕事をしていました。その後、隠岐の島町で地域おこし協力隊として活動しながら、2018年ごろからはフリーランスとして簡易宿所の運営やヨガ・アーユルヴェーダ講師、カウンセラーの仕事に取り組んでいます。

【知夫里島担当 プロフィール】

余島 睦美
出身:大阪
移住前の地域:兵庫県から地域おこし協力隊として知夫里島へ移住

(余島さんコメント)
●地域おこし協力隊のサポートを始めた経緯

小笠原さんと同様に隠岐支庁がまだ地域おこし協力隊の研修を実施していた時代の研修&交流会で隠岐支庁の研修担当者や今のメンバーと知り合いました。その後も同様で隠岐支庁主体での協力隊研修がなくなるという事で、任意団体として研修事業を継続してもらえないかとお声がけ頂いたことがきっかけです。

●地域おこし協力隊参加のきっかけと隊員時代の活動について

地域おこし協力隊という制度の事は全く知らず、知夫里島にただ旅行に来た時にとても気に入り、ちょうどその頃転職も考えていた時期だったので、そのまま3ヶ月後に移住しました。(地元の人に地域おこし協力隊制度を使うのが一番早く移住できると聞いたので。)任期中は観光PR・体験観光の企画・商品開発などのミッションでした。

●隊員時代の経験が、現在のサポートの仕事にどのように活きているか

地域おこし協力隊制度についての認識不足で日々の業務につまづきを感じた経験が研修の内容を作る際に役に立っていると思います。あとは慣れない移住生活でのメンタル面での浮き沈みも共感できるので、現役隊員との対話やコミュニケーションに役立っていると感じています。

●これまでのキャリアと現在取り組む隊員サポート以外の仕事について

移住前は普通に大阪でOLをしていました。直近の移住前職歴は7年ほどアクセサリーメーカーにてアクセサリーの企画・デザインを経て、同社直営の雑貨店を5店舗立ち上げ・雑貨バイヤー・エリアマネージャーをしていました。現在は知夫里島の港近くでシルクスクリーンの体験工房をしたり(2022.3月でお店を譲るor閉店予定。現在調整中…)、コロナ渦をきっかけにオンラインでの仕事を増やしています。(普通にインディードとかで仕事見つけてます。)こまごま色んな仕事をしている多業スタイルです。

人同士の距離が近く、楽しく過ごせて気軽な相談ができる隠岐4島の魅力

コロナ前に開催した鍋パーティー

各地域ごとに取り組みは異なりますが、人同士の距離の近さが隠岐諸島の魅力でもあります。時には、買い物をしている最中や移動している時でも、会った時にはコミュニケーションを取りながら相談を受けています。また、相談窓口での公式LINEやメールでの相談などもできるようになっていますし、現在はコロナの影響で止まっていますが、コロナ前までは鍋パーティーやBBQなどで横のつながりもつくっています。今後は状況次第で復活させたいと思っています。

隠岐諸島の良さは、小さなコミュニティなので気軽にみんなに相談できる雰囲気があります。海に囲まれた環境なのでご飯も美味しい。島を歩いたり、釣りをしたり、ちょっとしたできことが遊びの感覚になる場所だと思います。興味のある方はぜひ隠岐諸島の地域おこし協力隊に参加してみてください。

■参考サイト
●移住ポータルサイトくらしまねっと
https://www.kurashimanet.jp/

●しまね関係人口マッチング・交流サイト「しまっち!」
https://shi-match.jp/